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突然の入舎
身内
しおりを挟む気がついたら、僕は類君の胸に顔を埋めていた。
何が起こったかは全く分からない。
けど、頭上には美しい顔を歪めて何かの痛みに耐えている類君が見えた。
あまりのことに、僕は頭が真っ白になった。
「え………類く……ん………?」
何故だろう、僕は今焦っている。冷や汗や涙が頬を伝う。そんな僕に、さらに追い討ちをかけるように、どこからか鉄の匂いがした。
思わず僕は類君の両手に手を回した。僕を庇ったであろうその腕に触れた。
生暖かい液体を触る感触がした。
嫌でもわかった……。
いきなり、僕の喉は潤いを失った。
口の中に風を送り込まれて、一気に乾かされたかのようだった。
「類君……っ!!」
僕は類君の顔をまともに見れなくなった。類君の胸に額を当てて声をあげて泣くばっかりだった。
それに気をとられたのか、燈哉君は後ろにいた僕たちの名前を叫んで駆けつけようとした。
「郁!類!」
それは一瞬の出来事だった。
きっと彼は計算していたのだろう。赤毛の男の子は燈哉君のその隙を見逃さなかった。
「よそ見は命取りになりますよ……。」
彼は燈哉君の死角をとっていた。
そして、笑いながら大技を決めようとしていた。
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