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異世界転生ー私は騎士になりますー

17 控室での一幕

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 デビュタントの開始までは一般招待客達はホールに案内され時間まで思い思いに過ごすが、デビュタントを迎える令息令嬢達は待機用小部屋に案内される。
 この部屋には私達以外に20人程の男女が待機していた。
 白以外の衣装を纏っているのはパートナーとして連れてこられた人達だろう。
 16歳で私達よりも年上だがデビュタントをしていないシェイルも白の衣装を身に着けているけれど、体格のいいシェイルは威圧感があって同い年にはとても見えないので凄く目立っている。というか私達二人とも凄いジロジロ見られている。
 あちらこちらで「ねえ」とか「あれが」とかボソボソ話しているのが聞こえてくるのでシェイルがイライラしていてハラハラする。

「言いたいことがあるならはっきり言えよ」

 とかボソッと呟いたので、鳩尾に軽く一撃見舞っておく。ちょっと痛い程度にしたので筋肉鎧を身に着けているシェイルには効果が無いのは承知の上だ。

「そういえば、お前の婚約者のウィンスター王子はどうした?」
「王族は別の部屋で待機しているのでここには来ませんよ」

 ボロが出ると困るので話があれば全て耳打ちするように言っておいたので、小さくポソポソと話しかけてくる。
 カーテンで区切られた向こう側のホールが騒がしくなってきたので、そろそろ始まるのだろう。

「後どれくらいだ? 喉が乾いたんだが」
「ちょっと黙って大人しくしていて下さいな。開始したらウィル達王族が最初で、爵位順に私達も入場ですから。侯爵家の私達は早めに声がかかる筈なのでそれまで待機です」

 もそもそ話していると、近くに人というかドレスや宝石などの装飾でゴチャっとした騒がしい気配がした。誰もが遠巻きにしてきたのにも関わらず積極的に近づいてくる人間などろくな者ではないという本能的な拒否反応が出て、油をさし損ねたロボットのような動作で首を巡らせてしまう。

 そこに立って居たのは、同じ白とは思えない程ゴテゴテとレースや宝石で飾り立てたご令嬢が立って居た。顔は美人なのに、宝石や花を飾りすぎて何となく印象がそっちに持っていかれている感じ。明日には頭に飾った大きな花のコサージュの事しか思い出せなさそうだ。
 パートナーにはダークグレィの衣装を着た気弱そうな男性を連れている。どことなく顔立ちが似ているので、兄弟か何かなのだろう。
 近くには暗い雰囲気のご令嬢も取り巻きっぽく立っている。白いドレスで、それなりに贅を尽くしていると分かるのに、彼女本人の纏う雰囲気のせいで灰色っぽく見えてしまう。パートナーらしき面立ちの似た男性が近くにいるが、他家のご令嬢にちょっかいをかけていてこちらに興味は無さそうだ。

「貴方がクロウツィア・ヴィラント様かしら」
「……そうですが」

 コサージュ女の発した割と不躾な第一声に、爵位も分からず無視をする訳にもいかないので、不承不承といった体で応える。

「わたくし、アティナ・カルムーラと申しますの。以後お見知りおきを。こちらはメルクリアス伯爵家のシェリー様ですわ」
「ごきげんよう。シェリー・メルクリアスと申します……」

 ウィルの元婚約者候補……!

 思った以上に早く接触されたので、思わず呆然としてしまった。
 レイチェルは勿論、正式に決まった婚約者である私にも何かしらアプローチを仕掛けてくるだろうとは思っていたが、早速来た。

「ごきげんよう、アティナ様、シェリー様。ご存知の通り私がクロウツィア・ヴィラントですわ。こちらは兄のシェイルです」
「先日ヴィラント家に迎えられましたシェイル・ヴィラントと申します」

 挨拶しろと軽く合図すると、シェイルが一歩踏み出して短いながらも挨拶した。よしよしえらいぞ。
 
「それで、何がご用でしたか? アティナ様」

 時間が無いので手短に頼むよ。という意思を込めて彼女を見ると、アティナ様は扇子を取り出すと眼だけで私の全身を確認するとふんと鼻で笑った。
 うわっ感じ悪い。
 でもそれよりも隣のシェイルの怒りゲージが上がった気配を感じてそっちの方が気になる。

「ウィンスター様の婚約者になれたなんて自惚れることが無いように忠告しに来たのですわ。彼は誰にも心を許したりなさらないもの。レイチェル様以外にはね」

 うーん。これはレイチェル様による印象操作とウィルのシスコンどちらの説が有力なのだろうか。
 いや、両方かな。
 シェイルが暴れそうなので、抑えつつ考える。
 ウィルはレイチェル様にかなり酷いことをされているにも拘わらず、強く諫めようとしていなかった時点で妹に弱いのは確定だ。
 報復にケーキを勝手に人にあげたりする程度にはお互いやりたい放題してもいるだろうけど。

「でも、心配いらないかしらね。エスコートもしてもらえず兄と出席するなんて、己惚れる要素なんか無いものね」

 うーわアティナ様ったら輝かしい笑顔を向けてくれちゃって。楽しく喧嘩売ってくれるのは良いけど、うちの猛犬が物理でいったらあんた死ぬよー。とか思って留飲を下げている時点で私も沸点が低めなんだよね。我慢できるうちにパーティー始まってくれないかな。
 とか思ていたら、ホールの方からウィルとレイチェル様の入場を知らせるファンファーレが鳴って、拍手が響いた直後に、私達の名も呼ばれた。今回のデビュタントには公爵家はいなかったようで、貴族では私達が最初だった。
 ちなみにうちとカルムーラ家は家格は同じでも資産や貢献度などでうちが勝っているのでヴィラント家の方が先に呼ばれたのだ。アティナ様がそのことに明らかにむっとしているのでちょっとすっきりした。

「御忠告、痛み入りますわ。それではごきげんよう」
「あっ」

 アティナ様が後ろからもっと言ってやりたかったのにといった風情の声をだしているが、シェイルを抑えるのも大変なんだから相手してられないのだ。







 
 
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