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Fifth Contact 笑顔の行方
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「ぷぁ~、美味かったっ」
満はウーロン茶をゴクゴク飲んだ後、お腹をさすりながら片手で伸びをした。
「こーゆー時ってぇ、ウォルターの連れで良かったーって思うよなぁつくづく」
「大袈裟なんだよ、お前は」
ウーロン茶のグラスを置きながら、浩司が言う。
「でもさ、料理上手な奴ってそうそういるもんじゃねーし、オレ軸谷かウォルター、嫁にもらってもいい」
ぽわーんと幸せそうな表情の満に、
「俺はお前なんかいらん」
と冷たくあしらう浩司。
「でしょでしょお!! だって浩司くんのお嫁さんは私だって決まってんだもんっ」
その隣でうきうきと翔子が言い、
「決まってねぇよ」
と、これも冷たく流される。
「コウちゃんってば冷たい……」
満が両手の指を組んでうるうると浩司を上目遣いに見上げ、「ねーっ」と翔子に同意を求めて二人で頷き合っている。
そんな二人に知らん振りを決め込み、浩司は机上の食器を片付けている。タダで飲食させてもらったので、片付けくらいはするつもりらしい。
「あ、自分のはするよ」
と、新菜と円華が手を伸ばしかけたのを制し、
「一応お客さんなんだから座ってな」
と言いながら、理沙に借りたトレイに全て載せると調理室へと持って行ってしまった。
それをじーっと見ていた満は、
「ほーら、やっぱり奥さんにしたい奴だよなぁ」
とこぼした。
女三人、うんうんと頷き、
「ケツが軽いって言うかさぁー、あんま普通の男がしないような事すんねぇ」
と円華が腕を組んだ。
「わーるかったね、普通の男でっ」
「あー、満くんは可愛いから許す」
円華の即答に、新菜と翔子も先程の姿を思い出してクスクス笑いが復活した。
「ほんと、裏で会うまで全っ然気付かんかったし」
「マジ!? そんなに化けてた、オレ」
自分を指差して目を丸くする満。
「うん。今思えば、ウォルターと浩司くんは最初っから判ってて、二人して笑いを堪えてたみたいなんだけどぉ~。私らにはさぁーっぱり」
新菜に続けて翔子も告白し、顔の前で右手をひらひら振った。
「だってまさかヒロイン役やってるなんて思わんかったしぃ」
言い訳めいた言い方をしながら、新菜の目はまだ笑っている。
「うーむぅ……。それって、そこまでなりきっちゃってたオレを褒めてると取って喜ぶべきなのか、それとも未だ見分けてもらえていないオレを悲しむべきか、悩むところだよな」
半分本気で嘆息する満に、女三人は「勿論前者だって」と引き攣り笑いをした。
洗い物まで手伝ってきたのか、シャツの袖を下ろしながら戻って来た浩司の腕を、すぐに翔子が捕まえた。
「浩司くん、ウォルターが上がるまで、どっかで時間潰ししよ。何か面白いトコない?」
「面白いトコ、つってもなぁ」
うーんと考えながら、浩司は手首のボタンを留めている。
うろついているとまた繭に出会うかもしれないと、全員の頭を同じ考えがよぎったが、
「もっぺん体育館戻りゃあ、ライブやってる頃じゃねえの?」
「あっ!! それ行こっ」
円華が浩司を指した。
「円華、そーゆーの好きだもんなぁ」
新菜はポケットの中の煙草とライターを触りながら、頬杖を付いた。
(食後の一服してーなぁ……)
しかしながら勿論、よその学校内でそんなことは出来る筈もなく。いくら星野原が変わった学校だと言っても、喫煙は文句なしに出席停止処分である。在籍していないとはいえ、その連れと見なされれば男三人に迷惑が掛かるであろう事は必至だった。
「じゃ、決まりっ!!」
翔子が一番に席から立ち上がった。
満はウーロン茶をゴクゴク飲んだ後、お腹をさすりながら片手で伸びをした。
「こーゆー時ってぇ、ウォルターの連れで良かったーって思うよなぁつくづく」
「大袈裟なんだよ、お前は」
ウーロン茶のグラスを置きながら、浩司が言う。
「でもさ、料理上手な奴ってそうそういるもんじゃねーし、オレ軸谷かウォルター、嫁にもらってもいい」
ぽわーんと幸せそうな表情の満に、
「俺はお前なんかいらん」
と冷たくあしらう浩司。
「でしょでしょお!! だって浩司くんのお嫁さんは私だって決まってんだもんっ」
その隣でうきうきと翔子が言い、
「決まってねぇよ」
と、これも冷たく流される。
「コウちゃんってば冷たい……」
満が両手の指を組んでうるうると浩司を上目遣いに見上げ、「ねーっ」と翔子に同意を求めて二人で頷き合っている。
そんな二人に知らん振りを決め込み、浩司は机上の食器を片付けている。タダで飲食させてもらったので、片付けくらいはするつもりらしい。
「あ、自分のはするよ」
と、新菜と円華が手を伸ばしかけたのを制し、
「一応お客さんなんだから座ってな」
と言いながら、理沙に借りたトレイに全て載せると調理室へと持って行ってしまった。
それをじーっと見ていた満は、
「ほーら、やっぱり奥さんにしたい奴だよなぁ」
とこぼした。
女三人、うんうんと頷き、
「ケツが軽いって言うかさぁー、あんま普通の男がしないような事すんねぇ」
と円華が腕を組んだ。
「わーるかったね、普通の男でっ」
「あー、満くんは可愛いから許す」
円華の即答に、新菜と翔子も先程の姿を思い出してクスクス笑いが復活した。
「ほんと、裏で会うまで全っ然気付かんかったし」
「マジ!? そんなに化けてた、オレ」
自分を指差して目を丸くする満。
「うん。今思えば、ウォルターと浩司くんは最初っから判ってて、二人して笑いを堪えてたみたいなんだけどぉ~。私らにはさぁーっぱり」
新菜に続けて翔子も告白し、顔の前で右手をひらひら振った。
「だってまさかヒロイン役やってるなんて思わんかったしぃ」
言い訳めいた言い方をしながら、新菜の目はまだ笑っている。
「うーむぅ……。それって、そこまでなりきっちゃってたオレを褒めてると取って喜ぶべきなのか、それとも未だ見分けてもらえていないオレを悲しむべきか、悩むところだよな」
半分本気で嘆息する満に、女三人は「勿論前者だって」と引き攣り笑いをした。
洗い物まで手伝ってきたのか、シャツの袖を下ろしながら戻って来た浩司の腕を、すぐに翔子が捕まえた。
「浩司くん、ウォルターが上がるまで、どっかで時間潰ししよ。何か面白いトコない?」
「面白いトコ、つってもなぁ」
うーんと考えながら、浩司は手首のボタンを留めている。
うろついているとまた繭に出会うかもしれないと、全員の頭を同じ考えがよぎったが、
「もっぺん体育館戻りゃあ、ライブやってる頃じゃねえの?」
「あっ!! それ行こっ」
円華が浩司を指した。
「円華、そーゆーの好きだもんなぁ」
新菜はポケットの中の煙草とライターを触りながら、頬杖を付いた。
(食後の一服してーなぁ……)
しかしながら勿論、よその学校内でそんなことは出来る筈もなく。いくら星野原が変わった学校だと言っても、喫煙は文句なしに出席停止処分である。在籍していないとはいえ、その連れと見なされれば男三人に迷惑が掛かるであろう事は必至だった。
「じゃ、決まりっ!!」
翔子が一番に席から立ち上がった。
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