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Fourth Contact きみが好き
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「んー――……」
(さて、円華ちゃんに会った時、どーゆー態度を取ればいいものやら……)
保はいつものようにポケットに両手を突っ込んで、屋上へと続く階段を上がっていた。
(さっきまで三年の優香子に捕まってたからなぁ。あのアマしつけぇし、なかなか解放してくんねーし。
それで大分時間食っちまったから、もう揃ってんだろーなぁ。うーん……に、してもまさか円華ちゃんがおれなんぞに告る筈なんてねーって思ってたし、いつも馬鹿やってたしな。
おれがどんくれー七元の事好きかって知ってんし。でもってその上ごっつい女いるって知ってんしぃ……。
今までの女は、おれに女が他にいるって事納得した上で付き合ってっからなぁ。だからつって、あのグループで七元以外たぁ、んなん承知でも付き合おうって気ぃさらさらねぇし……。
本気で言ってくれたんなら、本気で答えにゃ思ぉて、昨日ケータイ何度も鳴らしたってーのに、結局いつ掛けても繋がんねー。電源切ってたんだろーけど。
でも皆の前でギクシャクすんのも変だよなぁー……うーん……)
心の中でぶちぶち考えながら歩を進めていると、段々と五人の声が大きくなり、はっきりと言葉が聞き取れるほどになった。
「来月、星野原の後期、もち行くんでしょ?」
キャイキャイ嬉しそうなのは翔子の声。
「翔子は浩司くんっきゃ眼中にねーんだろ?」
呆れ声の唯。
「次は他校で騒ぎ起こしてんじゃねーぞ」
円華の声がし、保の胸がどきりと跳ねた。
「だって、私と浩司くんが楽しく話してたっつーのに、あのアマが来たせーで、浩司くんどっか行っちゃうしぃ……」
少し情けない声を出す翔子。
(ふつー通りでいんだよな、今まで通りで)
保の視界に五人が入った瞬間、
「そーだよな、翔子ちゃんが怒るのも仕方ねぇって」
といつも通りを装い、声を掛けた。
「保ぅ……あんたさっき、大野に捕まってたから、今日は来ねぇ思ってたつーのに、やっぱ来たワケ?」
腕を組んで円華は壁に凭れた。
「そっ。来たワケ」
保はにいっと笑って答えると、いつも通り新菜の隣に行く。
「青葉さんっ!! 青葉さんは私の気持ち解ってくれますよね!?」
翔子は傍に寄って行くと、保のブレザーの裾を掴んだ。必死な顔で同意を求め見上げる翔子に「解る解る」と保は微笑みかける。
「解る解る、じゃねーだろっ!? あの場で喧嘩なんかしたらっ。私らそーでのうてもえぇ目で見られてねえつーのに。
第一、 中坊なんか相手にして」
円華が保の前に来て怒鳴る。
「中坊だろーがOLだろーが、あーゆーぬるそうな馬鹿な女は、ちいと言っとく方がいいんだよ。よく言うだろうが、人の恋路を邪魔するヤツは牛に踏まれて死んじまえ、つって」
飄々と返す保に円華は大きな溜め息。
「馬鹿はテメーだよ。それを言うなら馬に蹴られてだろ」
「るっ、るっせぇーなっ!! どっちでも似たようなモンだろーがっ」
肩を落としている円華に、恥ずかしそうに保が反論。そのまま喧嘩腰の言葉の応酬が始まってしまい、横であのう、と声を掛けたがっている翔子に一向に気付く気配もない。
(円華ちゃんもいつもと態度かわんねぇし、おれはおれで七元に惚れてっし。
だったらこのまま冗談で済ませてた方がいいのかも知んねーなぁ。じゃねぇと、円華ちゃんに本気で返事してその後そのマブの七元にモーションかけるなんざぁ出来ねーし。
七元だってそれ知ったら気ぃ遣うだろうしな。
円華ちゃんにゃ悪ぃけど……けど円華ちゃんの事は嫌いじゃねーし、好きなことは好きだけど愛とか恋とかっつー好きじゃねーんだよな。
ホント、自分が好きんなって欲しい女にゃ好かれねぇよな……)
いつもの遣り取りに他の三人が辟易して来た頃、
「円華さんっ!! 青葉さんっ!!」
翔子が意を決して二人の間に割って入り、ようやく二人は矛を収めた。
だが、言い合いを止める為に声を掛けたわけではないらしく、翔子は二人を交互に見ながら、
「あのアマ、私と同級みたいなんだけど」
と告げた。
一拍置いて、残りの五人は「あ?」と首を傾げ「うっそだろーぉ?」「どー見たって中坊だってっ」「だってあのアマわたしよか背ぇ低いぜぇ」などと一斉に言いまくる。
「って本人が言ってたもん」
翔子は大きく頷き、自分のあの時の何ともいいようのない怒りに理解を得ようとぐるりと見回した。
(嘘ぉ……見るからに中坊じゃんっ。だと思ってあん時怒り抑えたってーのにぃ? 円華まで制して……。
ま、あんな、ちといじめたらすぐ泣き出しそうな女に言い上げても仕方ねーんだけどもぉ……)
新菜も複雑な表情で首を傾げて考えていた。
「だ、か、らっ。もしまた私と浩司くんの間に割って入るような事あって、喧嘩吹っ掛けるような発言した時は、止めないで下さいね」
翔子は拳を作って、キッパリと言い切った。
(さて、円華ちゃんに会った時、どーゆー態度を取ればいいものやら……)
保はいつものようにポケットに両手を突っ込んで、屋上へと続く階段を上がっていた。
(さっきまで三年の優香子に捕まってたからなぁ。あのアマしつけぇし、なかなか解放してくんねーし。
それで大分時間食っちまったから、もう揃ってんだろーなぁ。うーん……に、してもまさか円華ちゃんがおれなんぞに告る筈なんてねーって思ってたし、いつも馬鹿やってたしな。
おれがどんくれー七元の事好きかって知ってんし。でもってその上ごっつい女いるって知ってんしぃ……。
今までの女は、おれに女が他にいるって事納得した上で付き合ってっからなぁ。だからつって、あのグループで七元以外たぁ、んなん承知でも付き合おうって気ぃさらさらねぇし……。
本気で言ってくれたんなら、本気で答えにゃ思ぉて、昨日ケータイ何度も鳴らしたってーのに、結局いつ掛けても繋がんねー。電源切ってたんだろーけど。
でも皆の前でギクシャクすんのも変だよなぁー……うーん……)
心の中でぶちぶち考えながら歩を進めていると、段々と五人の声が大きくなり、はっきりと言葉が聞き取れるほどになった。
「来月、星野原の後期、もち行くんでしょ?」
キャイキャイ嬉しそうなのは翔子の声。
「翔子は浩司くんっきゃ眼中にねーんだろ?」
呆れ声の唯。
「次は他校で騒ぎ起こしてんじゃねーぞ」
円華の声がし、保の胸がどきりと跳ねた。
「だって、私と浩司くんが楽しく話してたっつーのに、あのアマが来たせーで、浩司くんどっか行っちゃうしぃ……」
少し情けない声を出す翔子。
(ふつー通りでいんだよな、今まで通りで)
保の視界に五人が入った瞬間、
「そーだよな、翔子ちゃんが怒るのも仕方ねぇって」
といつも通りを装い、声を掛けた。
「保ぅ……あんたさっき、大野に捕まってたから、今日は来ねぇ思ってたつーのに、やっぱ来たワケ?」
腕を組んで円華は壁に凭れた。
「そっ。来たワケ」
保はにいっと笑って答えると、いつも通り新菜の隣に行く。
「青葉さんっ!! 青葉さんは私の気持ち解ってくれますよね!?」
翔子は傍に寄って行くと、保のブレザーの裾を掴んだ。必死な顔で同意を求め見上げる翔子に「解る解る」と保は微笑みかける。
「解る解る、じゃねーだろっ!? あの場で喧嘩なんかしたらっ。私らそーでのうてもえぇ目で見られてねえつーのに。
第一、 中坊なんか相手にして」
円華が保の前に来て怒鳴る。
「中坊だろーがOLだろーが、あーゆーぬるそうな馬鹿な女は、ちいと言っとく方がいいんだよ。よく言うだろうが、人の恋路を邪魔するヤツは牛に踏まれて死んじまえ、つって」
飄々と返す保に円華は大きな溜め息。
「馬鹿はテメーだよ。それを言うなら馬に蹴られてだろ」
「るっ、るっせぇーなっ!! どっちでも似たようなモンだろーがっ」
肩を落としている円華に、恥ずかしそうに保が反論。そのまま喧嘩腰の言葉の応酬が始まってしまい、横であのう、と声を掛けたがっている翔子に一向に気付く気配もない。
(円華ちゃんもいつもと態度かわんねぇし、おれはおれで七元に惚れてっし。
だったらこのまま冗談で済ませてた方がいいのかも知んねーなぁ。じゃねぇと、円華ちゃんに本気で返事してその後そのマブの七元にモーションかけるなんざぁ出来ねーし。
七元だってそれ知ったら気ぃ遣うだろうしな。
円華ちゃんにゃ悪ぃけど……けど円華ちゃんの事は嫌いじゃねーし、好きなことは好きだけど愛とか恋とかっつー好きじゃねーんだよな。
ホント、自分が好きんなって欲しい女にゃ好かれねぇよな……)
いつもの遣り取りに他の三人が辟易して来た頃、
「円華さんっ!! 青葉さんっ!!」
翔子が意を決して二人の間に割って入り、ようやく二人は矛を収めた。
だが、言い合いを止める為に声を掛けたわけではないらしく、翔子は二人を交互に見ながら、
「あのアマ、私と同級みたいなんだけど」
と告げた。
一拍置いて、残りの五人は「あ?」と首を傾げ「うっそだろーぉ?」「どー見たって中坊だってっ」「だってあのアマわたしよか背ぇ低いぜぇ」などと一斉に言いまくる。
「って本人が言ってたもん」
翔子は大きく頷き、自分のあの時の何ともいいようのない怒りに理解を得ようとぐるりと見回した。
(嘘ぉ……見るからに中坊じゃんっ。だと思ってあん時怒り抑えたってーのにぃ? 円華まで制して……。
ま、あんな、ちといじめたらすぐ泣き出しそうな女に言い上げても仕方ねーんだけどもぉ……)
新菜も複雑な表情で首を傾げて考えていた。
「だ、か、らっ。もしまた私と浩司くんの間に割って入るような事あって、喧嘩吹っ掛けるような発言した時は、止めないで下さいね」
翔子は拳を作って、キッパリと言い切った。
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