Complex

亨珈

文字の大きさ
上 下
115 / 190
Fourth Contact きみが好き

22

しおりを挟む
「誰に向かってテメーはそーゆー口利いてんだぁ!? 何なら今此処で口の利き方教えたろーかぁっ」

 怒鳴り声に気付き、離れた所で立ち話していた新菜たちは一斉に顔を向けた。

「翔子!!」

 慌てて新菜が近寄り、翔子の腕を掴んだ。

「んなトコで騒ぎ起こしてんじゃねーよ」

 手を離させられたものの、翔子は納得がいかない。

「だって新菜さんっ、このアマ……っ」

 新菜はまだ腕を掴んだまま、睨みつけて反論を制する。

「痛いなぁ、もぉ……」

 繭は翔子の迫力に半べそになりながら、しわになった体操服を撫で、

「あんたなんか先輩に釣り合ってないんだからねっ!! 暴力女っ!! サイテーっ」

 と叫んで、ずっと提げたままだった弁当箱でポコンと翔子の胸を叩き、校舎に向かって駆け出してしまった。
 浩司はとっくに何処かへと消えてしまっているが、それが良かったのか悪かったのか何とも言えない。

(あんのアマ~~~……。この間は満くんに抱きついてたクセしてぇ、さらりと浩司くんに乗り換えやがってっ!!)

 ようやく新菜が手を離してくれたものの、翔子は憤懣やるかたなく拳を握り締めた。

「しょおこちゃんっ」

 いつの間にか傍に来ていた保が、翔子の頭をポンポン叩く。

「このおれ様が、アイスでも買ってやっから」

 何でもない事のように肩を抱いて「行こ」と促している。
 保は繭が去った方を睨み付けたままの翔子に気付かれないように新菜に向けてウインクしてみせると、ゆっくりとその場を後にした。
 新菜が吐息をつくと、

「まぁ、翔子の気持ち解んねぇわけじゃねーんだよなぁ」

 円華が横に並んで腕を組んだ。

「そりゃーね」

(好きな男との間を邪魔されちゃあねぇ。特にあの子、祭では満くんだったのに、突如手の平返したみたいに満くんには目もくれず、今度は浩司くんだもんな)

「あ……っと。どーしよ、翔子ちゃん大丈夫かなぁ。まさか、こんなトコに真柴が出て来るなんて……」

 満は翔子と保を見送りながらおろおろしている。

「気にする事ないって。翔子は立ち直りはえーし。お菓子を手にケロッとしてけぇって来るって」

「あいつぁー単細胞だから」

 夏美と唯が続けて言った。

「そっかなあ……そうだといんだけど……」

 はあっと溜め息をついて、満はふと腕時計を見て驚く。

「やべっ!! オレも着替えなきゃっ。ゴメン、ちょっと行ってくるなっ」

 午後の競技に出る予定の満は、すっ飛んで教室に向かって行ってしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

JC💋フェラ

山葵あいす
恋愛
森野 稚菜(もりの わかな)は、中学2年生になる14歳の女の子だ。家では姉夫婦が一緒に暮らしており、稚菜に甘い義兄の真雄(まさお)は、いつも彼女におねだりされるままお小遣いを渡していたのだが……

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

優しい微笑をください~上司の誤解をとく方法

栗原さとみ
恋愛
仕事のできる上司に、誤解され嫌われている私。どうやら会長の愛人でコネ入社だと思われているらしい…。その上浮気っぽいと思われているようで。上司はイケメンだし、仕事ぶりは素敵過ぎて、片想いを拗らせていくばかり。甘々オフィスラブ、王道のほっこり系恋愛話。

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

処理中です...