108 / 190
Fourth Contact きみが好き
15
しおりを挟む
「マドカ、本当に飲酒で帰るの?」
結構酔いの回っている円華を心配そうに支えながら、ウォルターは門扉に手を遣り尋ねる。
点けっ放しにしておいた玄関灯が頭上から二人を照らしている。
「何? それって遠回しに泊まれっつってんの?」
ニッと笑い見上げてくる気丈な眼差し。
「って言ったらどうする?」
多少危なっかしいが、無理強いはしたくないので決定権は本人に委ねるつもりだった。が。
「ウォルター自身は、私にどーして欲しい?」
円華は笑みを消して、顔を覗き込んで来た。
「危ないから、運転は止めた方がいいかなと思うよ。まあ、傷心のマドカに俺がしてやれることって添い寝くらいだし?」
目を見つめたまま、ウォルターは少し屈み込んで唇を寄せた。
「お望みなら、その後如何様にも」
「ま、飲酒でパクられても馬鹿らしいから、ね」
ふうと息をついて、円華は前髪をかき上げた。
強がる女性は嫌いではない。ウォルターは「はいはい」と笑いながら鍵を開け、自室へと導いた。
「お風呂は?」
クローゼットからハンガーを出しながらウォルターが問うた。
「貸してもらえると嬉しーんだけどぉ」
泊まる予定はさらさらなかった円華は、家で済ませてこなかったのである。
「先、借りていい?」
「ん。何なら洗ってあげようか?」
麻のジャケットをハンガーに掛けると、ウォルターは部屋の隅のコートツリーに掛けた。
「その台詞、一体今まで何人の女に言った?」
くすりと笑って指差し、
「他人に見せれるプロポーションになったら、ね」
とウインクする。
ウォルターはさして残念そうでも無く「ちぇっ」と言うと「じゃあ待ってまーす」とベッドに腰掛けた。
(ウォルターって、冗談で言ってんのか、マジなんか判んねーよなぁ……)
円華は脱衣所で服を脱ぐと、籠からバスタオルを一枚拝借して浴室に入った。
(ウォルターのあーゆー冗談めかして言うトコって、保と似てんだよなぁ~)
男らしく精悍な保と、どちらかといえば綺麗な顔のウォルターを胸の中で思い浮かべながら、シャワーの温度を調節した。
円華がバスタオルを巻いて部屋に戻ってみると、ウォルターはランニングとイージーパンツに着替えてベッドの上で寝息を立てていた。
まだ少し湿っている髪をフェイスタオルでポンポン叩きながら、円華はベッドの端に腰掛ける。
動く様子のないウォルターの寝顔を見て、ふぅ~と息を吐き、そのまましばらく眺めていた。規則正しく胸が浅く上下し、着やせするタイプだなぁなんて思いながら水分を取っていたのだが、もういいかとそっと腰を上げる。
(何かパジャマ代わりのもの借りようっと)
勝手にクローゼットを漁り、ロングTシャツを引っ張り出して頭から被ると、裾を引っ張りショーツが見えないのを確認する。
(よしっ、と)
部屋の隅に自分の服を畳んで置いてから、またベッドに座って寝ているウォルターの肩を揺すった。
「ウォルター、ウォルターってば」
「んー?」
ウォルターは眠そうな声で生返事をし、ごにょごにょと何か呟いている。何だろうと思って円華が顔を寄せると、腕で頭を抱え込まれた。
「判った判った……足らないんだな」
夢現で誰かと勘違いしているのか、脇腹から手を這わせてTシャツの裾から大きな手が太腿を撫で上げてくる。
「ちょっ、ちょっと!! ちょっとちょっとちょっとーっ!!」
懸命に裾を手で押さえながら、円華は声を上げた。
「ん」とウォルターは顔を摺り寄せて円華の顔の位置を確認すると、唇を寄せて耳朶を軽く噛んだ。
「だ、誰と間違えてんだよっ」
抗議しながらも、そのまま耳の後ろへと這わされる舌の誘惑に引きづられそうになる。
(ウォルターのことは嫌じゃないけどぉ……けど、ちょっと待ってよぉ!! 誰かと間違えてなんてサイテーじゃん。
女の子はデリケートなんだからっ!!
それに取り敢えずシャワー浴びてからじゃないとっ)
どうやらその気になってしまったらしい。
そういえば随分ご無沙汰しているし、こういう風にさり気なく誘われるのは気分が良かった。今までは大抵ラブホに入った途端、という感じだったので。
円華はグイッとウォルターの顔を両手で押しのける。
「取り敢えずシャワー浴びて来てよっ」
言った途端、パチリと目が開き「はーい」とウォルターは返事をしてスタスタと浴室の方へ行ってしまった。
一瞬ぽかんとして見送った円華だったが、ふつふつと怒りがこみ上げてきた。
(あんにゃろーはぁ、狸かよぉ……騙しやがってぇ…… )
円華はベッドに座り直し、ギュッと拳を握る。
(言わなかったらあのまま雪崩れ込むつもりだったんだな~。そりゃあウォルターは自分でも『巧い方だと思う』つってたし、女の扱いも慣れてるんだろーけどぉ。
来るもの拒まず去るもの追わずっつーやつかぁ?
こーゆートコも保と似てんだもんな)
はふっと溜め息。保のことを思い出してしまうとスッと熱が冷めるように怒りもやる気も引いていってしまった。
(けど私が好きなんはぁ、あのいー加減でのーてんぱぁの男でぇ……)
結構酔いの回っている円華を心配そうに支えながら、ウォルターは門扉に手を遣り尋ねる。
点けっ放しにしておいた玄関灯が頭上から二人を照らしている。
「何? それって遠回しに泊まれっつってんの?」
ニッと笑い見上げてくる気丈な眼差し。
「って言ったらどうする?」
多少危なっかしいが、無理強いはしたくないので決定権は本人に委ねるつもりだった。が。
「ウォルター自身は、私にどーして欲しい?」
円華は笑みを消して、顔を覗き込んで来た。
「危ないから、運転は止めた方がいいかなと思うよ。まあ、傷心のマドカに俺がしてやれることって添い寝くらいだし?」
目を見つめたまま、ウォルターは少し屈み込んで唇を寄せた。
「お望みなら、その後如何様にも」
「ま、飲酒でパクられても馬鹿らしいから、ね」
ふうと息をついて、円華は前髪をかき上げた。
強がる女性は嫌いではない。ウォルターは「はいはい」と笑いながら鍵を開け、自室へと導いた。
「お風呂は?」
クローゼットからハンガーを出しながらウォルターが問うた。
「貸してもらえると嬉しーんだけどぉ」
泊まる予定はさらさらなかった円華は、家で済ませてこなかったのである。
「先、借りていい?」
「ん。何なら洗ってあげようか?」
麻のジャケットをハンガーに掛けると、ウォルターは部屋の隅のコートツリーに掛けた。
「その台詞、一体今まで何人の女に言った?」
くすりと笑って指差し、
「他人に見せれるプロポーションになったら、ね」
とウインクする。
ウォルターはさして残念そうでも無く「ちぇっ」と言うと「じゃあ待ってまーす」とベッドに腰掛けた。
(ウォルターって、冗談で言ってんのか、マジなんか判んねーよなぁ……)
円華は脱衣所で服を脱ぐと、籠からバスタオルを一枚拝借して浴室に入った。
(ウォルターのあーゆー冗談めかして言うトコって、保と似てんだよなぁ~)
男らしく精悍な保と、どちらかといえば綺麗な顔のウォルターを胸の中で思い浮かべながら、シャワーの温度を調節した。
円華がバスタオルを巻いて部屋に戻ってみると、ウォルターはランニングとイージーパンツに着替えてベッドの上で寝息を立てていた。
まだ少し湿っている髪をフェイスタオルでポンポン叩きながら、円華はベッドの端に腰掛ける。
動く様子のないウォルターの寝顔を見て、ふぅ~と息を吐き、そのまましばらく眺めていた。規則正しく胸が浅く上下し、着やせするタイプだなぁなんて思いながら水分を取っていたのだが、もういいかとそっと腰を上げる。
(何かパジャマ代わりのもの借りようっと)
勝手にクローゼットを漁り、ロングTシャツを引っ張り出して頭から被ると、裾を引っ張りショーツが見えないのを確認する。
(よしっ、と)
部屋の隅に自分の服を畳んで置いてから、またベッドに座って寝ているウォルターの肩を揺すった。
「ウォルター、ウォルターってば」
「んー?」
ウォルターは眠そうな声で生返事をし、ごにょごにょと何か呟いている。何だろうと思って円華が顔を寄せると、腕で頭を抱え込まれた。
「判った判った……足らないんだな」
夢現で誰かと勘違いしているのか、脇腹から手を這わせてTシャツの裾から大きな手が太腿を撫で上げてくる。
「ちょっ、ちょっと!! ちょっとちょっとちょっとーっ!!」
懸命に裾を手で押さえながら、円華は声を上げた。
「ん」とウォルターは顔を摺り寄せて円華の顔の位置を確認すると、唇を寄せて耳朶を軽く噛んだ。
「だ、誰と間違えてんだよっ」
抗議しながらも、そのまま耳の後ろへと這わされる舌の誘惑に引きづられそうになる。
(ウォルターのことは嫌じゃないけどぉ……けど、ちょっと待ってよぉ!! 誰かと間違えてなんてサイテーじゃん。
女の子はデリケートなんだからっ!!
それに取り敢えずシャワー浴びてからじゃないとっ)
どうやらその気になってしまったらしい。
そういえば随分ご無沙汰しているし、こういう風にさり気なく誘われるのは気分が良かった。今までは大抵ラブホに入った途端、という感じだったので。
円華はグイッとウォルターの顔を両手で押しのける。
「取り敢えずシャワー浴びて来てよっ」
言った途端、パチリと目が開き「はーい」とウォルターは返事をしてスタスタと浴室の方へ行ってしまった。
一瞬ぽかんとして見送った円華だったが、ふつふつと怒りがこみ上げてきた。
(あんにゃろーはぁ、狸かよぉ……騙しやがってぇ…… )
円華はベッドに座り直し、ギュッと拳を握る。
(言わなかったらあのまま雪崩れ込むつもりだったんだな~。そりゃあウォルターは自分でも『巧い方だと思う』つってたし、女の扱いも慣れてるんだろーけどぉ。
来るもの拒まず去るもの追わずっつーやつかぁ?
こーゆートコも保と似てんだもんな)
はふっと溜め息。保のことを思い出してしまうとスッと熱が冷めるように怒りもやる気も引いていってしまった。
(けど私が好きなんはぁ、あのいー加減でのーてんぱぁの男でぇ……)
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
私のバラ色ではない人生
野村にれ
恋愛
ララシャ・ロアンスラー公爵令嬢は、クロンデール王国の王太子殿下の婚約者だった。
だが、隣国であるピデム王国の第二王子に見初められて、婚約が解消になってしまった。
そして、後任にされたのが妹であるソアリス・ロアンスラーである。
ソアリスは王太子妃になりたくもなければ、王太子妃にも相応しくないと自負していた。
だが、ロアンスラー公爵家としても責任を取らなければならず、
既に高位貴族の令嬢たちは婚約者がいたり、結婚している。
ソアリスは不本意ながらも嫁ぐことになってしまう。
貴方へ愛を伝え続けてきましたが、もう限界です。
あおい
恋愛
貴方に愛を伝えてもほぼ無意味だと私は気づきました。婚約相手は学園に入ってから、ずっと沢山の女性と遊んでばかり。それに加えて、私に沢山の暴言を仰った。政略婚約は母を見て大変だと知っていたので、愛のある結婚をしようと努力したつもりでしたが、貴方には届きませんでしたね。もう、諦めますわ。
貴方の為に着飾る事も、髪を伸ばす事も、止めます。私も自由にしたいので貴方も好きにおやりになって。
…あの、今更謝るなんてどういうつもりなんです?
聖女は妹ではありません。本物の聖女は、私の方です
光子
恋愛
私の双子の妹の《エミル》は、聖女として産まれた。
特別な力を持ち、心優しく、いつも愛を囁く妹は、何の力も持たない、出来損ないの双子の姉である私にも優しかった。
「《ユウナ》お姉様、大好きです。ずっと、仲良しの姉妹でいましょうね」
傍から見れば、エミルは姉想いの可愛い妹で、『あんな素敵な妹がいて良かったわね』なんて、皆から声を掛けられた。
でも違う、私と同じ顔をした双子の妹は、私を好きと言いながら、執着に近い感情を向けて、私を独り占めしようと、全てを私に似せ、奪い、閉じ込めた。
冷たく突き放せば、妹はシクシクと泣き、聖女である妹を溺愛する両親、婚約者、町の人達に、酷い姉だと責められる。
私は妹が大嫌いだった。
でも、それでも家族だから、たった一人の、双子の片割れだからと、ずっと我慢してきた。
「ユウナお姉様、私、ユウナお姉様の婚約者を好きになってしまいました。《ルキ》様は、私の想いに応えて、ユウナお姉様よりも私を好きだと言ってくれました。だから、ユウナお姉様の婚約者を、私に下さいね。ユウナお姉様、大好きです」
――――ずっと我慢してたけど、もう限界。
好きって言えば何でも許される免罪符じゃないのよ?
今まで家族だからって、双子の片割れだからって我慢してたけど、もう無理。
丁度良いことに、両親から家を出て行けと追い出されたので、このまま家を出ることにします。
さようなら、もう二度と貴女達を家族だなんて思わない。
泣いて助けを求めて来ても、絶対に助けてあげない。
本物の聖女は私の方なのに、馬鹿な人達。
不定期更新。
この作品は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
氷の貴婦人
羊
恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。
呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。
感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。
毒の強めなお話で、大人向けテイストです。
人生負け組のスローライフ
雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした!
俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!!
ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。
じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。
ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。
――――――――――――――――――――――
第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました!
皆様の応援ありがとうございます!
――――――――――――――――――――――
【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜
湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」
30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。
一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。
「ねぇ。酔っちゃったの………
………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」
一夜のアバンチュールの筈だった。
運命とは時に残酷で甘い………
羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。
覗いて行きませんか?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
・R18の話には※をつけます。
・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。
・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。
ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません
野村にれ
恋愛
人としての限界に達していたヨルレアンは、
婚約者であるエルドール第二王子殿下に理不尽とも思える注意を受け、
話の流れから婚約を解消という話にまでなった。
ヨルレアンは自分の立場のために頑張っていたが、
絶対に婚約を解消しようと拳を上げる。
【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~
蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。
嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。
だから、仲の良い同期のままでいたい。
そう思っているのに。
今までと違う甘い視線で見つめられて、
“女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。
全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。
「勘違いじゃないから」
告白したい御曹司と
告白されたくない小ボケ女子
ラブバトル開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる