Complex

亨珈

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Fourth Contact きみが好き

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 左側に満、右側にウォルターの腕を抱きかかえるようにして、新菜はズンズン足を進める。

「ほんとに良かったの?」

 少しだけ振り向いて仁王立ちになった保の悔しそうな顔を見て、申し訳なさそうに満は尋ねた。

「いーのっ」

 新菜はまだ怒っているようである。

「ふーん……ちょっとだけ、可哀相かも」

 立場が逆だったらと思うと、素直に喜べない満だったが、

「だけど、オレらと一緒に来てくれて嬉しい」

 ちょっぴり照れつつ、鼻の頭をぽりぽりと掻いた。

「ゴメンね、変なことになっちゃって……。満くん、勢いであんな事言っちゃったんでしょ」

 行きつけの【SKIP】というカラオケショップを目指しながら、新菜は謝った。

「勢いなんかじゃないって!!」

 満は慌てて訂正する。

「人前であんなこと言っちゃって悪かったんだけど……あれはオレの本音だから。
 新菜ちゃんのこと、好きなんだっ」

 新菜は返答に困り、赤くなって俯いた。

「答えが欲しいわけじゃないんだ。ただ、オレなりに考えて出した結論だから……。
 あの青葉ってヤツと比べると、まだ会って間もなくて、そんでこんな事言って信じらんねーかも知れないけど……。
 多分、初めて会った日から惹かれてた。だから、気持ちだけ伝えときたかった。このまんま連れだと思われんのは嫌だったんだ。
 男として、オレのこと見て欲しい」

 前方を見据え歩を進めるその声はしっかりとしていた。

 新菜は言葉の真剣さに圧倒され、しかし返す言葉が見つからなくて、もう一度ただギュッと満の腕を握り直すと「うん……」とだけ言った。

「ニーナぁ……役得なんだけど、俺ってお邪魔虫じゃない?」

 左腕を掴まれていたウォルターが、控え目に口を開いた。

「あ、ウォルターいたの?」

 初めて存在に気付いたのか、満がカアッと赤面し、弾みで新菜はパッと両手を離してしまった。握っていた本人も彼のことを忘れていたらしい。

「いましたよぉ~……ったく、二人の世界に入っちゃってんだもんなぁ」

 呆れたように言うと、ウォルターはススッと満の傍に寄って行き、耳元で囁いた。

「ちゃんと言えたじゃん」

 満はへへっと照れ笑いすると、

「よぉし!! 今日は歌いまくるぞーっ」

 と腕を振り上げて言った。



 その頃、少し後ろを歩く浩司は、女四人に囲まれてやや緊張していた。

(に、しても、あいつ……)

 頭の中にもう一度保の顔を思い浮かべる。

(なんっかどっかで見たような……制服じゃなくて……何処でだっけか? 夜か? 走りに出てるときかもな。
 だとしたら操がいた頃だから結構昔だし、古過ぎて思い出せんっっ!!
 しかも、たすくっつー名前が一番ムカつく!!!!)

 自分に直接は関係ないところで嫌われている保も災難だったが、一人不機嫌モードの浩司を見上げ、翔子は心細そうにしていた。

「浩司くぅん……」

(いくら青葉さんと言えど許せんっ!!
 青葉さんのせーで浩司くん怖い顔になっちゃってんじゃんかぁ……)

「私、何か悪いことしたぁ? 機嫌直して楽しもうよ……ねっ?」

 目一杯媚びながら、切なそうに見上げる翔子に絆されたのか、

「あ……ああ、悪ぃ。お前のせいじゃねーよ」

 浩司は学生鞄を持っていない方の手で、翔子の頭をポンポンと叩いた。

 そうして一行は【SKIP】に着き、八人で三時間カラオケを楽しみ、ついでに軽く昼食も取ったのだったが、その間浩司の表情が和らぐことはなかった。
 夏美と唯という新顔がいたせいもあるだろうが、原因の九割方が保のせいなのはまず間違いあるまいと思われた。
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