99 / 190
Fourth Contact きみが好き
6
しおりを挟む
「あーもうっ、るっせぇな!! テメーはぁっ」
上目遣いに保を睨んでから、円華は手の平を上にして、
「向かって左から、浩司くん、満くん、ウォルター!!」
と投げ槍に紹介した。
半歩後ろでは、唯と夏美がまじまじと男連中を見詰めている。
(へぇ……この間の浩司くんねぇ。間近で見るとなかなかじゃん。こういうカオしてる時の方が、あん時より断然いいしぃ。
に、しても翔子はぁ……抱き付きたい気持ちは解るけど、校内でやるなって!! 周りの目が気にならんのか、あいつは……)
「おれ、青葉保っつの、よろしく」
保はニヤッと不敵な笑みを浮かべ、腕を組みながら舐め回すように念入りに満を観察している。
(おれんが足なげーし、ルックスもスタイルもいいじゃん)
悪意と敵意の篭った視線を受けつつも「よろしく」とぎこちなく満は返した。
浩司の方は、保の言葉にかなりの含みがあることを嗅ぎ取っている。
(こいつ……気に入らねぇ)
ぐっと翔子の腕を握って体を離すと、浩司はわざと満の肩に左手を遣りその上に自分の顎を載せた。
「俺もよろしくな。あおばクン」
(しかも、匡さんと同じ名前ってのが、ぜってー気に入らねぇぞ)
挑発の意を込めて、切れ長の目が細まる。
「こちら、こそ」
保も斜め四十五度から上目遣いで睨み返す。
ウォルターは、火花の飛ばし合いが殊のほか面白いらしく、腕を組んでのほほんと眺めていた。浩司と夜遊びしていると似たようなケースが偶にある為、慣れっこになっているらしい。
「でぇ、七元の誕生日にパンドラに来たっつー〈トレーニングウェアの彼〉って、こん中のどいつかだろ?」
三人を見回しながら問いかけた保の背後に回り、円華は三人に見えないように体の陰で尻をぎゅうっと抓りあげた。口に出して「要らん事ゆーな!!」と言う訳にはいかないのだ。
「パンドラぁ?」
浩司は怪訝そうな顔をし、
「ああ……オレじゃん。でも何で知ってんの?」
少し照れながらも、ケロリと満が白状した。
ウォルターは、ほぉ~と一人頷いている。
「へっえー、お前かあ~」
わざとらしくフムフムと頷くと、保は隣にいた新菜の肩をぐいと抱き寄せた。「ぎゃっ!!」と蛙を潰した様な悲鳴が上がる。
「こいつ、おれの女だから。憶えときな」
保が片方の口の端を上げる。
「は……!?」
満は束の間言葉を失った。
(おれの女!? ってまさか……。けど新菜ちゃん一っ言もんな事言ってなかったし、もし本当なら、男性不信なんて大嘘じゃんか。そんなのおかしいだろっ)
呆然としている新菜を見ながら考えた挙句、満は真剣な表情で尋ねた。
「新菜ちゃん……ほんとに彼氏?」
新菜たちが初めて見るきりりと引き締まった表情は、やや緊張していた。
いつも笑顔の人間にこんな顔をさせてしまうとは、と円華は焦っていた。
「冗談に決まってんしょっ!!」
ようやく自分を取り戻した新菜は、思い切り保の足を踏み付け、同時に円華が鞄でその後頭部を殴った。
仕方なく保は手を離し、
「……の予定」
と付け足した。
「予定は未定だかんね」
にっこりと笑って保を見上げ、更に円華が付け足した。後頭部を擦りながら「いてぇだろーが」と抗議してから、保は再度満に話し掛ける。
「あんたも七元の事好きなワケ? だったらやめといた方がいいぜぇ。こいつは手強ぇーし、こいつらが世間でどう呼ばれてっか知らんワケじゃねーだろ?」
前髪をかき上げながら、眼光は鋭い。自分は名字で呼んでいるのに満が〈新菜ちゃん〉と呼んだのが気に入らなかったようだ。
上目遣いに保を睨んでから、円華は手の平を上にして、
「向かって左から、浩司くん、満くん、ウォルター!!」
と投げ槍に紹介した。
半歩後ろでは、唯と夏美がまじまじと男連中を見詰めている。
(へぇ……この間の浩司くんねぇ。間近で見るとなかなかじゃん。こういうカオしてる時の方が、あん時より断然いいしぃ。
に、しても翔子はぁ……抱き付きたい気持ちは解るけど、校内でやるなって!! 周りの目が気にならんのか、あいつは……)
「おれ、青葉保っつの、よろしく」
保はニヤッと不敵な笑みを浮かべ、腕を組みながら舐め回すように念入りに満を観察している。
(おれんが足なげーし、ルックスもスタイルもいいじゃん)
悪意と敵意の篭った視線を受けつつも「よろしく」とぎこちなく満は返した。
浩司の方は、保の言葉にかなりの含みがあることを嗅ぎ取っている。
(こいつ……気に入らねぇ)
ぐっと翔子の腕を握って体を離すと、浩司はわざと満の肩に左手を遣りその上に自分の顎を載せた。
「俺もよろしくな。あおばクン」
(しかも、匡さんと同じ名前ってのが、ぜってー気に入らねぇぞ)
挑発の意を込めて、切れ長の目が細まる。
「こちら、こそ」
保も斜め四十五度から上目遣いで睨み返す。
ウォルターは、火花の飛ばし合いが殊のほか面白いらしく、腕を組んでのほほんと眺めていた。浩司と夜遊びしていると似たようなケースが偶にある為、慣れっこになっているらしい。
「でぇ、七元の誕生日にパンドラに来たっつー〈トレーニングウェアの彼〉って、こん中のどいつかだろ?」
三人を見回しながら問いかけた保の背後に回り、円華は三人に見えないように体の陰で尻をぎゅうっと抓りあげた。口に出して「要らん事ゆーな!!」と言う訳にはいかないのだ。
「パンドラぁ?」
浩司は怪訝そうな顔をし、
「ああ……オレじゃん。でも何で知ってんの?」
少し照れながらも、ケロリと満が白状した。
ウォルターは、ほぉ~と一人頷いている。
「へっえー、お前かあ~」
わざとらしくフムフムと頷くと、保は隣にいた新菜の肩をぐいと抱き寄せた。「ぎゃっ!!」と蛙を潰した様な悲鳴が上がる。
「こいつ、おれの女だから。憶えときな」
保が片方の口の端を上げる。
「は……!?」
満は束の間言葉を失った。
(おれの女!? ってまさか……。けど新菜ちゃん一っ言もんな事言ってなかったし、もし本当なら、男性不信なんて大嘘じゃんか。そんなのおかしいだろっ)
呆然としている新菜を見ながら考えた挙句、満は真剣な表情で尋ねた。
「新菜ちゃん……ほんとに彼氏?」
新菜たちが初めて見るきりりと引き締まった表情は、やや緊張していた。
いつも笑顔の人間にこんな顔をさせてしまうとは、と円華は焦っていた。
「冗談に決まってんしょっ!!」
ようやく自分を取り戻した新菜は、思い切り保の足を踏み付け、同時に円華が鞄でその後頭部を殴った。
仕方なく保は手を離し、
「……の予定」
と付け足した。
「予定は未定だかんね」
にっこりと笑って保を見上げ、更に円華が付け足した。後頭部を擦りながら「いてぇだろーが」と抗議してから、保は再度満に話し掛ける。
「あんたも七元の事好きなワケ? だったらやめといた方がいいぜぇ。こいつは手強ぇーし、こいつらが世間でどう呼ばれてっか知らんワケじゃねーだろ?」
前髪をかき上げながら、眼光は鋭い。自分は名字で呼んでいるのに満が〈新菜ちゃん〉と呼んだのが気に入らなかったようだ。
0
お気に入りに追加
9
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる