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Fourth Contact きみが好き
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「いや、俺は楽しくない」
せめてもの抵抗として、浩司はキッパリと言い切る。
「それよか、今日は何して遊ぼうか? カラオケでも行くー?」
満はもう頭の中を切り替えたらしく、話題を変えた。
「何でもいいよ。ま、制服だから、行けるトコは限られるだろうけど」
と、ウォルター。
「なら着替えてから来れば良かったのに……」
「なぁーにをぬかすっ。制服で行くことに意義があるのだよ」
まだ諦めきれずに指摘する浩司に、ウォルターは握り拳で力説した。
「へえへえ、目立つからってね」
満も溜め息をついた。
確かに、かなり注目を集めるであろうとは思う。いかに夏服で、上のシャツは同じ白とはいえ、ポケットには校章のエンブレムが入りスラックスはなんとマリンブルー。紺色の制服の中では浮く存在だろう。
(ホント、何でこんな色にしたんだろ……理事長が外国人だし、完全に自分の趣味の世界だよなー。
似合うヤツと似合わんヤツの差がひでぇし。まぁ、ウォルターの為にあるような制服だよな)
満はちらりとウォルターを見て、ふと思い付く。
(でも、もしかして学ランだったら……)
ぷくく、と独りでに笑いが漏れてしまう。
(に、似合わねーっっ!! 似合わなさ過ぎるっ!!)
「な、なんなんだよ、榎本……」
浩司が気味悪そうに言った。
「いや、学ランが中等部までで良かったよなぁ、ってさ」
「はあ!?」
笑いを堪えながら言う満に、ワケ判んねーヤツ、と浩司は眉を寄せた。
『次はぁー瑞穂町ぉー、瑞穂町ぉ~。お出口左側です……』
車内にアナウンスが流れ、三人は再度外の景色へと目を遣った。
ゆっくりと電車が減速し、駅のプラットホームへと入って行く。ドアが開いてホームに降り立つ三人と入れ替わりに、数名の梁塁の生徒が車両に乗り込んでいった。
「もしかして入れ違いだったらどーすんの?」
満は若干心配になった。
「大丈夫だって。多分今のが第一陣だよ。行きゃー会えるって」
ウォルターはのほほんと答えると、改札口を出た。
キーンコーンカーンコーン……。風に乗ってチャイムの音が聞こえて来る。
「ほぉら、今のが多分終了のチャイムだろ」
当然とばかりに言い、ウォルターはサッサと歩いて行く。
何処からこの自信は出てくるのか、その行動力には半ば呆れつつも、住宅街の向こうに見え隠れしている校舎に向かって、二人も歩き出した。
【県立梁塁高等学校正門】と書かれた青銅のプレートの前で、三人は足を止めた。
「どーする? 多分何処の学校も、部外者は立ち入り禁止だろ?」
浩司がウォルターに向けて訊いた。
勝手に敷地内に入ると、教師や用務員に追い出されてしまうだろう。
「まぁ、此処で出てくるの待つか、その辺のヤツとっ捕まえて呼んできて貰うか、だよなぁ」
満がポケットに両手を突っ込んで言った。
「けど、んなクソ暑いトコで、ただひたすら待ってんのは嫌だよなぁ」
眩しそうに目を細め、浩司は照りつける太陽を振り仰いだ。
「何処でもいいから涼しいトコ行きたいっ!!」
仔犬のようにキャンキャン抗議しているのは満で、二人とも要するにこの場所に長居はしたくないようだ。
「あー、もう、はいはい。判ったよぉ、呼んで来てもらえばいいんだろ」
ウォルターは煩そうに片耳に指を突っ込んで言うと、先刻から遠巻きに自分たちを見遣っている生徒の中から女生徒を選んでそちらに足を向けた。
「何でしょうか!?」
緊張して赤くなりながら、その子は背筋をしゃんと伸ばした。
「あのさ、ちょっと人を呼んで来て欲しいんだけど」
その子と連れに向けてにっこりと笑い掛ける。破壊力は抜群で、「は、はいぃっ!!」と裏返った二人の声が重なった。美形の外国人に頼まれているのだから、無理もあるまい。
「えーと、二年生でマドカとニーナ……あれ? 名字なんだっけ?」
ウォルターが振り返ると、満が少し大き目の声で補足する。
「七元と朝霧っ。それから一年の矢部翔子ね」
女の子たちは飛び上がらんばかりに驚き、
「あ、あの人たち、ですか……」
とおどおどした表情で顔を見合わせていたのだが、やがて決心したのか、
「分かりました、ちょっと待っててくださいねっ」
と校舎へと戻って行ってくれた。
虎穴にいらずんば、といった風情で、二人の背中には恐怖を克服しようとする健気な決意が見える。
「ふぅ……有名人って助かるねぇ」
振り向いて浩司と満に笑い掛けるウォルター。
だが、「そ……そぉかあ……?」と二人は唇の端を引き攣らせている。どうもこのまま行くと被害者が増えそうな気がしてならない。
後に残ったのは、今まで以上の好奇の目と、刻々と増えていく人だかりであった。
せめてもの抵抗として、浩司はキッパリと言い切る。
「それよか、今日は何して遊ぼうか? カラオケでも行くー?」
満はもう頭の中を切り替えたらしく、話題を変えた。
「何でもいいよ。ま、制服だから、行けるトコは限られるだろうけど」
と、ウォルター。
「なら着替えてから来れば良かったのに……」
「なぁーにをぬかすっ。制服で行くことに意義があるのだよ」
まだ諦めきれずに指摘する浩司に、ウォルターは握り拳で力説した。
「へえへえ、目立つからってね」
満も溜め息をついた。
確かに、かなり注目を集めるであろうとは思う。いかに夏服で、上のシャツは同じ白とはいえ、ポケットには校章のエンブレムが入りスラックスはなんとマリンブルー。紺色の制服の中では浮く存在だろう。
(ホント、何でこんな色にしたんだろ……理事長が外国人だし、完全に自分の趣味の世界だよなー。
似合うヤツと似合わんヤツの差がひでぇし。まぁ、ウォルターの為にあるような制服だよな)
満はちらりとウォルターを見て、ふと思い付く。
(でも、もしかして学ランだったら……)
ぷくく、と独りでに笑いが漏れてしまう。
(に、似合わねーっっ!! 似合わなさ過ぎるっ!!)
「な、なんなんだよ、榎本……」
浩司が気味悪そうに言った。
「いや、学ランが中等部までで良かったよなぁ、ってさ」
「はあ!?」
笑いを堪えながら言う満に、ワケ判んねーヤツ、と浩司は眉を寄せた。
『次はぁー瑞穂町ぉー、瑞穂町ぉ~。お出口左側です……』
車内にアナウンスが流れ、三人は再度外の景色へと目を遣った。
ゆっくりと電車が減速し、駅のプラットホームへと入って行く。ドアが開いてホームに降り立つ三人と入れ替わりに、数名の梁塁の生徒が車両に乗り込んでいった。
「もしかして入れ違いだったらどーすんの?」
満は若干心配になった。
「大丈夫だって。多分今のが第一陣だよ。行きゃー会えるって」
ウォルターはのほほんと答えると、改札口を出た。
キーンコーンカーンコーン……。風に乗ってチャイムの音が聞こえて来る。
「ほぉら、今のが多分終了のチャイムだろ」
当然とばかりに言い、ウォルターはサッサと歩いて行く。
何処からこの自信は出てくるのか、その行動力には半ば呆れつつも、住宅街の向こうに見え隠れしている校舎に向かって、二人も歩き出した。
【県立梁塁高等学校正門】と書かれた青銅のプレートの前で、三人は足を止めた。
「どーする? 多分何処の学校も、部外者は立ち入り禁止だろ?」
浩司がウォルターに向けて訊いた。
勝手に敷地内に入ると、教師や用務員に追い出されてしまうだろう。
「まぁ、此処で出てくるの待つか、その辺のヤツとっ捕まえて呼んできて貰うか、だよなぁ」
満がポケットに両手を突っ込んで言った。
「けど、んなクソ暑いトコで、ただひたすら待ってんのは嫌だよなぁ」
眩しそうに目を細め、浩司は照りつける太陽を振り仰いだ。
「何処でもいいから涼しいトコ行きたいっ!!」
仔犬のようにキャンキャン抗議しているのは満で、二人とも要するにこの場所に長居はしたくないようだ。
「あー、もう、はいはい。判ったよぉ、呼んで来てもらえばいいんだろ」
ウォルターは煩そうに片耳に指を突っ込んで言うと、先刻から遠巻きに自分たちを見遣っている生徒の中から女生徒を選んでそちらに足を向けた。
「何でしょうか!?」
緊張して赤くなりながら、その子は背筋をしゃんと伸ばした。
「あのさ、ちょっと人を呼んで来て欲しいんだけど」
その子と連れに向けてにっこりと笑い掛ける。破壊力は抜群で、「は、はいぃっ!!」と裏返った二人の声が重なった。美形の外国人に頼まれているのだから、無理もあるまい。
「えーと、二年生でマドカとニーナ……あれ? 名字なんだっけ?」
ウォルターが振り返ると、満が少し大き目の声で補足する。
「七元と朝霧っ。それから一年の矢部翔子ね」
女の子たちは飛び上がらんばかりに驚き、
「あ、あの人たち、ですか……」
とおどおどした表情で顔を見合わせていたのだが、やがて決心したのか、
「分かりました、ちょっと待っててくださいねっ」
と校舎へと戻って行ってくれた。
虎穴にいらずんば、といった風情で、二人の背中には恐怖を克服しようとする健気な決意が見える。
「ふぅ……有名人って助かるねぇ」
振り向いて浩司と満に笑い掛けるウォルター。
だが、「そ……そぉかあ……?」と二人は唇の端を引き攣らせている。どうもこのまま行くと被害者が増えそうな気がしてならない。
後に残ったのは、今まで以上の好奇の目と、刻々と増えていく人だかりであった。
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