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Third Contact すれ違いの純情
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「あたしさあ、満くんといると安心すんだ。
保といるときは逆。保は一緒にいて退屈しないヤツ。けどさ、これが今ツレとしてだからそう思えんだけど、恋愛相手として見ちまったら……マジになっちまったら…って考えたら怖くって……」
円華はゆっくりと煙を吐くと、新菜と同じ灰皿で揉み消した。
「今までが今までだっただろ? 付き合った男全員が、あたしのこと飾りとしてしか見てくんなくって。
ぱっと見がいいから付き合ってみたけど、話も合わねぇし身持ちも硬くてなかなかヤラしてくんねーし、みたいなさ。
んで結局あたしとは正反対の可愛くて素直に言う通りになる女選んで、新しい女出来たからお前とは終わりなハイさよーなら、ってさ。んなの今更だけどさ……」
新菜は口にしないが、まさに同じようにして父親にも捨てられている。若い女が出来て、美緒と新菜は捨てられたのだ。円華はそれを知っているからこそ、ただ黙って聞いている。
「これ以上そう思われたくねぇっつーか……。
保にしても満くんにしても、あたしみてーな女と付き合ったりしたら、いつか必ず他の男と一緒になっちまう気がして……。
あの二人にそんな扱いされたら、あたしもう二度と男のこと信じられなくなる。
始めはどの男だって優しいんだ。けど、一ヶ月ももたないで変わっちまう。
そう考えて悩みまくってたら、このままの状態がいいんじゃねえかなって……」
その後を続けずに俯いてしまった新菜を見て、円華は溜め息をついた。
「新菜の気持ち凄く良く解る。今まで伊達に一番近くにいたワケじゃねえし。
けど、それじゃ逃げてんだよ。これ以上傷を深くしねー為に。
新菜だって解ってんだろ? 今までみてーなヤローとは違うって。
同じ穴の狢っていうかさ、確かに保はうちらと同類で、だから気軽に声も掛けてくるし付き合いも長い。このまま男と女の関係になったとしても、他の男みてーにせっかちに体求めたりするかな?
もう新菜の性格わかってて……それでも付き合ってくれって言ってるんじゃないの?
満くんはまだ判んねえけど……でも新菜が傍にいて安心できるって直感は無視するべきじゃないと思うし、もっと自分らしくしてたらいいんじゃねえの?
このままじゃどのみち一生男が信用できねーよ。
新菜が新菜らしくしてて、それで連絡なくなるんならそこまでの男だったって事だよ。
翔子なんか浩司くんの前じゃ、嫌われまいと可愛い女しちゃってっけど……浩司くんもうちらの素性知ってるんなら無駄な努力かもなぁ」
円華はニッと笑ったが、新菜はその言葉にどきりとした。
(円華の言うこと、当たってる……。
あたし、逃げてんだ。これ以上傷付きたくないから。
だけど、二人とも失いたくないんだもん。いつの間にか、そんな存在になっちゃってて……)
「返事は急がんでもいいんじゃん? ゆっくり考えて、それからでも。
新菜、あんま自分のこと話してくんねえから……嬉しかったよ」
そう言って微笑みかけながら、自分の方は新菜に隠し事がある為、胸が痛む。
「ゴメン。でも、言ったらスッキリしたっ」
新菜は両手を上げて、うーんと大きく伸びをし、また煙草を取り出して咥えると火を点けた。
話が一段落したので気分を変えようと、円華はCDデッキのスイッチを入れた。お気に入りのロックバンドの曲が流れ始め、それを聞きながら一本吸い終えると新菜が独り言のように口を開いた。
「ウォルターって女の子には誰でも優しいし、女の子誰でも好きだし、結構頑張んねえと競争率高そうだし」
「そーだろーなぁ」
他人事のように首を傾げる円華に、新菜は問う。
「あ? ウォルターのこと、気に入ってんだろ?」
ベッドから下りて、そのままベッドを背もたれにして円華の前に座る。
「ん。気に入ってるよ? ツレとして」
究極の面食いの円華があまりにもあっさりと答えるものだから、新菜は拍子抜けしてしまった。いくら見栄えが良くても、やはり外国人だと部類が違うのかもしれないと考え、もう一つの懸念を口にする。
「翔子にあの写真のこと言わなくていっかな」
テーブルに肩肘をつくと、円華が苦笑した。
「あいつに言ったら、浩司くんにしつこく訊きまくるか、あの女に直接会いに行って脅すのがオチだよ」
「それもそーだな……あいつならやりそう……」
ある意味自分たちよりタチの悪いところがあるのだ。猪突猛進というか、周りが見えなくなることが多々ある。そこがまた可愛くもあるのだけれど、相手の男から見たら、さてどうだろう。
「彼女、ってわけじゃねーよな?」
「だとしたら、姉貴が番号教えたりしねえだろうし。女三人も家に上げたりしねーだろ」
「あ、そっか」
浩司と翔子の遣り取りを見ていると、とても浩司が女嫌いとは思えない。最初に言われていてもすぐに忘れそうになってしまうのだが、今日の一件でふと思い出した。自分と同じように、きっと何か理由やきっかけがあるのだろう。
「案外あの二人上手く行くんじゃねーのぉ?
海の次の日だって、まさか探しに来てくれると思わんかったし……根がいいやつだよな。見せ掛けの優しさじゃなくって。
満くんが言ってた『特別扱い』って、ホントにそうなのかもな。それに一緒に寝たときに何かいいことあったみたいだし?」
くすりと笑いながら円華が言い、新菜は今までの二人の様子を思い返していた。
(そういや、初対面の時より随分丸くなったっつーか、トゲが抜けたっつーか。上手くいくといいな……)
そっと心の中で翔子の恋路を応援した。
保といるときは逆。保は一緒にいて退屈しないヤツ。けどさ、これが今ツレとしてだからそう思えんだけど、恋愛相手として見ちまったら……マジになっちまったら…って考えたら怖くって……」
円華はゆっくりと煙を吐くと、新菜と同じ灰皿で揉み消した。
「今までが今までだっただろ? 付き合った男全員が、あたしのこと飾りとしてしか見てくんなくって。
ぱっと見がいいから付き合ってみたけど、話も合わねぇし身持ちも硬くてなかなかヤラしてくんねーし、みたいなさ。
んで結局あたしとは正反対の可愛くて素直に言う通りになる女選んで、新しい女出来たからお前とは終わりなハイさよーなら、ってさ。んなの今更だけどさ……」
新菜は口にしないが、まさに同じようにして父親にも捨てられている。若い女が出来て、美緒と新菜は捨てられたのだ。円華はそれを知っているからこそ、ただ黙って聞いている。
「これ以上そう思われたくねぇっつーか……。
保にしても満くんにしても、あたしみてーな女と付き合ったりしたら、いつか必ず他の男と一緒になっちまう気がして……。
あの二人にそんな扱いされたら、あたしもう二度と男のこと信じられなくなる。
始めはどの男だって優しいんだ。けど、一ヶ月ももたないで変わっちまう。
そう考えて悩みまくってたら、このままの状態がいいんじゃねえかなって……」
その後を続けずに俯いてしまった新菜を見て、円華は溜め息をついた。
「新菜の気持ち凄く良く解る。今まで伊達に一番近くにいたワケじゃねえし。
けど、それじゃ逃げてんだよ。これ以上傷を深くしねー為に。
新菜だって解ってんだろ? 今までみてーなヤローとは違うって。
同じ穴の狢っていうかさ、確かに保はうちらと同類で、だから気軽に声も掛けてくるし付き合いも長い。このまま男と女の関係になったとしても、他の男みてーにせっかちに体求めたりするかな?
もう新菜の性格わかってて……それでも付き合ってくれって言ってるんじゃないの?
満くんはまだ判んねえけど……でも新菜が傍にいて安心できるって直感は無視するべきじゃないと思うし、もっと自分らしくしてたらいいんじゃねえの?
このままじゃどのみち一生男が信用できねーよ。
新菜が新菜らしくしてて、それで連絡なくなるんならそこまでの男だったって事だよ。
翔子なんか浩司くんの前じゃ、嫌われまいと可愛い女しちゃってっけど……浩司くんもうちらの素性知ってるんなら無駄な努力かもなぁ」
円華はニッと笑ったが、新菜はその言葉にどきりとした。
(円華の言うこと、当たってる……。
あたし、逃げてんだ。これ以上傷付きたくないから。
だけど、二人とも失いたくないんだもん。いつの間にか、そんな存在になっちゃってて……)
「返事は急がんでもいいんじゃん? ゆっくり考えて、それからでも。
新菜、あんま自分のこと話してくんねえから……嬉しかったよ」
そう言って微笑みかけながら、自分の方は新菜に隠し事がある為、胸が痛む。
「ゴメン。でも、言ったらスッキリしたっ」
新菜は両手を上げて、うーんと大きく伸びをし、また煙草を取り出して咥えると火を点けた。
話が一段落したので気分を変えようと、円華はCDデッキのスイッチを入れた。お気に入りのロックバンドの曲が流れ始め、それを聞きながら一本吸い終えると新菜が独り言のように口を開いた。
「ウォルターって女の子には誰でも優しいし、女の子誰でも好きだし、結構頑張んねえと競争率高そうだし」
「そーだろーなぁ」
他人事のように首を傾げる円華に、新菜は問う。
「あ? ウォルターのこと、気に入ってんだろ?」
ベッドから下りて、そのままベッドを背もたれにして円華の前に座る。
「ん。気に入ってるよ? ツレとして」
究極の面食いの円華があまりにもあっさりと答えるものだから、新菜は拍子抜けしてしまった。いくら見栄えが良くても、やはり外国人だと部類が違うのかもしれないと考え、もう一つの懸念を口にする。
「翔子にあの写真のこと言わなくていっかな」
テーブルに肩肘をつくと、円華が苦笑した。
「あいつに言ったら、浩司くんにしつこく訊きまくるか、あの女に直接会いに行って脅すのがオチだよ」
「それもそーだな……あいつならやりそう……」
ある意味自分たちよりタチの悪いところがあるのだ。猪突猛進というか、周りが見えなくなることが多々ある。そこがまた可愛くもあるのだけれど、相手の男から見たら、さてどうだろう。
「彼女、ってわけじゃねーよな?」
「だとしたら、姉貴が番号教えたりしねえだろうし。女三人も家に上げたりしねーだろ」
「あ、そっか」
浩司と翔子の遣り取りを見ていると、とても浩司が女嫌いとは思えない。最初に言われていてもすぐに忘れそうになってしまうのだが、今日の一件でふと思い出した。自分と同じように、きっと何か理由やきっかけがあるのだろう。
「案外あの二人上手く行くんじゃねーのぉ?
海の次の日だって、まさか探しに来てくれると思わんかったし……根がいいやつだよな。見せ掛けの優しさじゃなくって。
満くんが言ってた『特別扱い』って、ホントにそうなのかもな。それに一緒に寝たときに何かいいことあったみたいだし?」
くすりと笑いながら円華が言い、新菜は今までの二人の様子を思い返していた。
(そういや、初対面の時より随分丸くなったっつーか、トゲが抜けたっつーか。上手くいくといいな……)
そっと心の中で翔子の恋路を応援した。
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