Complex

亨珈

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Third Contact すれ違いの純情

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「何処から言えばいいのかな……えーと、今の女の子、実は元々オレらの連れのことが好きだったんだ」

「連れの男のことを? それでなんで……」

 ゆっくりと説明を始めようとする満にすぐにまた翔子が噛み付いたので、円華がそれを制した。
 道路脇の歩道で人通りの少ない場所に四人とも足を止め、話をじっくり聞こうと三人は耳を澄ませる。

「それで……だけどその連れには元々彼女が居てさ。
 ただ、彼女の方は真柴とは正反対のおとなしい女の子だから、真柴に色々言われたり妨害されたりして、一時期ほんとにやばい事になっちゃって……」

 さもありなん、と先程の繭の態度を思い出し、三人は納得する。

「結局はなんだかんだあっても絆が強まって、二人は壊れなかったんだけどな。
 それ見てようやく真柴も諦めが付いたんだろ……。
 で、今はその、あの通りオレにちょっかい出して来てるってワケ」

「なんではっきり言わないの!! 迷惑だって。それとも迷惑じゃないの?」

 問い詰めるように円華が言った。

「いや、その……可哀相だったからさ。
 次に好きな男見つかるまでの繋ぎにならなってやれるかと思って」

 満は視線を足元に落として弁解した。

 そう、その時点では問題はなかったのだ。
 満もフリーで好きな女の子も居なかった。そして夏休みに入り、会うこともなくなり、すっかりそのことを忘れていたのだった。
 美里に知られたらけちょんけちょんに言われそうである。

「気の済むようにさせてやろうかと思って……」

「けど、その間に、もし向こうが本気になったら?」

 今まで黙っていた新菜がぽつりと言った。

「そーだよ、あの子がマジんなっちゃったらどーすんの!? 満くんの責任だよ? そのまま付き合わなきゃならなくなるよ?」

 翔子が感情のままに叩き付けるように言った。

 何かに殴られたかのように顔を歪ませて満は項垂れている。
 それまでにはもっといい男が見つかるだろうと、飽きっぽい彼女のことだから大丈夫だろうと高をくくっていたところが、今のこの様である。言い返す言葉もない。 

 翔子は浩司が行ってしまった事に段々と腹が立ってきたらしく、不満を全部ぶつけてくる。

「で、結局なんで浩司くんがいないのぉ!!」

 つまり浩司のことだけが気掛かりの翔子は、先程と同じ質問を口にした。
 確かに今までの部分ではまだ完全な説明にはなっていない。

「あー……そ、か。そうだよな……。
 その連れの男にそんな事件があったの、その最中に軸谷は知らなかったんだ。
 で、後から事情だけ聞いて、納まるトコに納まったから納得はしたものの、ずっと気にしてたんだと思う。
 オレ、あいつとそんな話しないからホントのとこどうなのかはわからねぇけど。でもきっと、相当怒ってる。
 あいつ、元々嫌いだろ? 真柴みたいなタイプ、苦手を通り越して嫌いだと思う。
 ましてやツレにそんなちょっかい掛けた女、容赦するわけないっていうか……」

「女嫌い……だったっけ、そういや」

 はたと思い出し、翔子の気勢がそがれた。
 うん、と頷き満が続ける。

「そういう意味では、心配は要らないっつーか……それより別の心配しなくちゃヤバいっていうか。
 だからウォルターが追っ掛けた」

 そっか、とようやく合点が行き、女三人は息をついた。

「翔子ちゃんのことは、あいつにとってはかなり特別扱いなんだぜ? 今日だって別に嫌がりもせずに出てきたし」

 更に念を入れてフォローすると、

「特別……っ! 私が」

 翔子はその言葉をリピートしながらぽわんと空気を緩ませた。

「だから……そういうわけで、ホントごめんな。
 折角楽しんでもらおうと思って呼んだのに、こんなことになって迷惑掛けちゃって。
 も少し待ってください」

 殊勝な顔のまま、満は深々と頭を垂れた。
 そんなに必死になって謝られても困るというか、男にそこまでされて許すも許さないもなく、

「そういうことなら」

との新菜の言葉を折り合いどころとして、それぞれ口を閉じて人込みに目を遣った。
 ほっと息をついた満も、新菜を気にしながらも、早く二人が帰って来ないかと視線を彷徨わせる。
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