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Third Contact すれ違いの純情
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そうして皆でぶらぶらと歩きながら夜店を冷やかし、たこ焼きを買ったり綿飴を食べたりして、誰かが興味のある屋台で足を留めるので、それなりに時間が経っていった。
「あー、あれ綺麗!! あれ欲しいっ」
ヨーヨー釣りのテントで新菜が立ち止まり、透明な風船に紫と白と赤で模様が入っている物を指差して言った。
「まあまあ、お祭りみっちゃんに任せなさい」
満が甚平の袖を肩まで捲り上げると、しゃがんでおじさんに金を払った。
じいっと水面を見つめて、輪ゴムの位置を確認する。
(おっ、結構いい位置。あんま沈んでねーし……これならこっちのと一緒に掬えるな)
紙縒りの部分が浸からないように慎重に鈎針の部分を入れて、輪ゴムを二つ引っ掛けると一気に引き上げた。
「うっしゃ!! 成功ーっ」
「わぁお!! 満くんプロだね~っ」
翔子がキャアキャアと歓声を上げて手に持った綿飴を振り回しそうになり、浩司に腕を取り押さえられた。
「おっちゃん、もらってくぜ」
満がヨーヨーを二つ手に持ってにやりと笑うと、
「こりゃやられたなぁ。あんちゃん、彼女の頼みじゃけんって張り切りすぎじゃあ」
六十過ぎと見られる年配の店主は、がっはっはと豪快に笑った。
「そりゃまあこーゆー時くらいは、カッコつけさせてもらわなきゃ」
満は太腿に手を置いてすっくと立ち上がると、はい、と新菜の欲しがっていた方を差し出した。
「ありがと」
少し照れながら新菜が受け取ると、満はもう一つの黄色地の水風船は自分の左手にはめながら「どういたしまして」と微笑んだ。
「満、満、俺の分はー?」
ウォルターがニコニコ笑いながら自分を指差して言ったが、その顔目掛けてぱこんとヨーヨーが飛んで来る。
「自分で御取りなさいっ」
戻ってきたヨーヨーを受け止めて冷たくあしらわれ、
「ひ……ひどいわぁ…ニーナだけ贔屓するのね」
ウォルターは袖を噛みながら、よよよと泣く振りをした。一体何処で覚えるんだかと皆で大爆笑していると、不意に後ろから声が上がった。
「あー、やっぱりぃ、ウォルター先輩だぁ」
すぐ近くで女子の声がし、笑いを収めてそちらを見ると私服姿の小柄な女の子が五人群れていた。
「すんごい目立ってますよぉ」
「こんなトコで会えるなんてラッキー!!」と皆でキャアキャア騒いでいる。
新菜、円華、翔子の三人はびっくりして黙り込んでいるし、浩司はあからさまに面白くなさそうな表情になっている。こういう集団を最も苦手としているのがありありと判った。
「あー、あれ綺麗!! あれ欲しいっ」
ヨーヨー釣りのテントで新菜が立ち止まり、透明な風船に紫と白と赤で模様が入っている物を指差して言った。
「まあまあ、お祭りみっちゃんに任せなさい」
満が甚平の袖を肩まで捲り上げると、しゃがんでおじさんに金を払った。
じいっと水面を見つめて、輪ゴムの位置を確認する。
(おっ、結構いい位置。あんま沈んでねーし……これならこっちのと一緒に掬えるな)
紙縒りの部分が浸からないように慎重に鈎針の部分を入れて、輪ゴムを二つ引っ掛けると一気に引き上げた。
「うっしゃ!! 成功ーっ」
「わぁお!! 満くんプロだね~っ」
翔子がキャアキャアと歓声を上げて手に持った綿飴を振り回しそうになり、浩司に腕を取り押さえられた。
「おっちゃん、もらってくぜ」
満がヨーヨーを二つ手に持ってにやりと笑うと、
「こりゃやられたなぁ。あんちゃん、彼女の頼みじゃけんって張り切りすぎじゃあ」
六十過ぎと見られる年配の店主は、がっはっはと豪快に笑った。
「そりゃまあこーゆー時くらいは、カッコつけさせてもらわなきゃ」
満は太腿に手を置いてすっくと立ち上がると、はい、と新菜の欲しがっていた方を差し出した。
「ありがと」
少し照れながら新菜が受け取ると、満はもう一つの黄色地の水風船は自分の左手にはめながら「どういたしまして」と微笑んだ。
「満、満、俺の分はー?」
ウォルターがニコニコ笑いながら自分を指差して言ったが、その顔目掛けてぱこんとヨーヨーが飛んで来る。
「自分で御取りなさいっ」
戻ってきたヨーヨーを受け止めて冷たくあしらわれ、
「ひ……ひどいわぁ…ニーナだけ贔屓するのね」
ウォルターは袖を噛みながら、よよよと泣く振りをした。一体何処で覚えるんだかと皆で大爆笑していると、不意に後ろから声が上がった。
「あー、やっぱりぃ、ウォルター先輩だぁ」
すぐ近くで女子の声がし、笑いを収めてそちらを見ると私服姿の小柄な女の子が五人群れていた。
「すんごい目立ってますよぉ」
「こんなトコで会えるなんてラッキー!!」と皆でキャアキャア騒いでいる。
新菜、円華、翔子の三人はびっくりして黙り込んでいるし、浩司はあからさまに面白くなさそうな表情になっている。こういう集団を最も苦手としているのがありありと判った。
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