Complex

亨珈

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Second Contact 王様ゲーム

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 新菜と円華は廻り階段を上がりきった。

「どっちが浩司くんの部屋だと思う?」

 新菜が左右の扉を示した。

「入ってみりゃ判るって」

 円華はちょっぴり首を傾げながらも、不在と判っているので堂々と右側のドアに手を掛けた。

「姉貴の部屋かも」

 呟きながら、新菜も円華の後ろから室内に足を踏み入れた。

 見回してみると、ベージュ系で整えられた部屋だった。ベッドも色が統一してあり、部屋の中央に敷いてある円形のラグの上にガラステーブル。
 ウッドとスチールの棚の一番下にはミニコンポが鎮座し、その上の段にはテレビといくつかのオブジェが置かれている。一番上の段には雑誌やカタログが並んでおり、その隅にフォトスタンドがひっそりと立ててあった。

「あれ」

 円華がそのフォトスタンドに目を留め、手に取った。

「写真?」

 新菜が肩越しに覗き込むと、そこには数名の男女がバイクと一緒に写っていた。中央にはバイクに跨っている匡と、そのリアシートに横座りしている紫の姿があった。

「〈KILLER〉か……」

「つー事は、姉貴の部屋だな」

 呟いた新菜の声に急に居心地が悪くなり、円華はフォトスタンドを元の位置に慎重に戻すと「あっちの部屋いこ」と新菜を促した。部屋を出て後ろ手にドアを閉める。

「服とか雑誌が転がりまくっててきったねー部屋だったりして」

 新菜の方を向いてシシシと笑いながら、また円華がドアを開けた。

 だが、二人の印象は「さっぱりしすぎの部屋」だった。
 部屋の中には勉強机とベッドとスリムなマガジンラックがあるのみ。ウォルターが来た時にはテーブルが出してあったのだが、普段は仕舞っているらしく部屋の中央はがらんと空いている。色はモノトーンで抑えてあり、簡潔に纏まっていた。
 紫にしろ浩司にしろタンスの類は見当たらず、部屋にあるクロゼットに全てしまっているのだろう。流石にそこまで開けてみるつもりにはなれなかった。

「へえ~男の部屋って、きったねーイメージしかねぇのに」

 一歩一歩足を踏み入れながら、キョロキョロ見回して新菜が言った。
 そして勉強机の上にくしゃくしゃになった紙片を見つけ、手に取り広げた。

「ありゃ」

 新菜の声に円華もその手元に目を落とす。

「失礼なやっちゃな。翔子のナンバーんなトコに放り投げて。ま、捨ててないだけましかぁ」

「どーする? これ」

 問いながら新菜は改めて室内を見回した。

 貸して、と円華が手に取りドアの方に近付いていく。壁に掛けてある電話機の傍らにコルクボードがあるのだった。

 それにピンでしっかりと留めると、ボードに貼ってある写真の中の一枚に目が留まった。

 ボブカットの女子を真ん中に両側で二人の男子がその女の肩を抱いてVサインをしている。女子は少し緊張気味のような照れたような表情で微笑んでおり、男二人は和やかに笑っている。どうやら学園内で撮影されたものらしく、三人共星野原学園のブレザーを着ていた。

「こっち、浩司くんだねぇ」

と、新菜は右側の男子を指差した。

「初めて見た。嬉しそうな顔……こんな風に笑うんだ……」

 まだ出会ったばかりだけど、自分らの前では出たことのない表情を見て見惚れてしまう。

「この女のこと好きなんかな?」

「だろーな。ま、こっちの男が好きってんなら、大分問題ありだって」

 左側の男を指して、円華は苦笑した。

 当たらずとも遠からずの言葉だったが、勿論二人にそんなことが解る筈もない。浩司が好きなのは、二人共、なのである。それ故に彼女を作れずに居るのだと…まだ三人は知らずにいる。

「コレのことは翔子にゃ伏せとくか……面倒なことになりそうだし」

 突然真顔になり、円華が言った。

 少し不思議そうにしながらも「円華がそういうんなら」と新菜は頷いた。

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