Complex

亨珈

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Second Contact 王様ゲーム

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 襟川町に入ってから、コンビニに立ち寄った。公衆電話のハローページを捲ってみると、幸いにも『軸谷』は一軒しかなかった。番地を確認して、店内に貼ってある地図で大体の場所を認識する。

「後は行ってみるだけだね」

 新菜は、入ったついでにとガムを購入した。喫煙者には欠かせないアイテムである。

「ゴーゴーですぅっ」

 満面の笑みで、翔子はチューイングキャンディを握り締めてガッツポーズ。

「暑いからアイスでも買ってく? 迷うにしてもんなに時間かかんないっしょ」

 円華が冷凍庫の中を引っ掻き回しながら言った。

「グッドアイデア! あたしこれ~」

「私はこれっ」

 二人共勿論大賛成し、注文通りの品を含めて六個買うと三人揃って店を出た。
 いきなり気温が上がり、一旦引いた汗が噴き出すのが判る。

「うーっ。アイス溶けちゃうかも……」

 円華は呟いて目を細める。眩しさについ俯き加減になってしまう三人の耳に「ドッドッドッ」と排気音が聞こえて来た。

 先刻自分たちが店に入るときにはなかったバイクだ。綺麗に手入れされていて、陽光の下白が基調のデザインがパッと映える。リアにイエロー、フロントとサイドにブラックとレッドでペイントが入っていた。

(ニイハンか……いいなぁ)

 つい目が行ってしまう新菜。維持費・購入費諸々のハードルで今は原付だが、いつかは欲しいと思っているのだ。

 そのバイクの乗り手はグレーのつなぎを着ていて、上半身脱いだ状態で袖を腰で一回結んでいる。上は黒のランニングシャツのみだった。
 フルフェイスのメットを被ったまま、顔が新菜の方を向いた。

 新菜の方からは逆光で見えないが、相手からは見えているのであろう。一瞬動作が止まったかと思うと、男はすっと三人を指差した。

「は?」

 喧嘩を売られているのかと新菜が思わず睨みかけた時、相手がスポッとヘルメットを脱ぎプルプルと首を振った。

「見ーっけ」

 汗に濡れた前髪をかき上げて、三人を見てニッと笑ったその顔は。

「こっ、浩司くんっっ」

 翔子に一番に叫ばれて、二人は声を掛けそびれた。

「どしたのぉ!?」

 駆け寄っていく背中は、すっかり暑さのことなど忘れたかのようだ。

「道判んねぇだろうと思って」

「そんなの探しながら行くのにぃ。でもありがとう!!  嬉しいっ」

 きゃあきゃあと興奮し、今にも抱きつきそうな勢いである。それを警戒したのか、

「んじゃー、ついて来いよっ」

と言ってさっさとヘルメットを被ってしまった。

 ドルルルルルッ。浩司のバイクはキュッと向きを変えると少しゆっくりと発進した。慌てて三人はエンジンを掛けて追い掛けたのだった。
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