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First Contact 海へいこう!
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「オレも~甘いもん特に好きだし。新菜ちゃんがクッキーとか作ってくれたら、ぜーったい食べるんだけど~」
流れに乗って、満が新菜の方を向いて満開の笑顔を作った。あまりの可愛さにくらりときた新菜だったが、
「あたしんちオーブンないから」
努めて冷静に返答する。
それを聞きつけた円華が首を伸ばして満にニッと笑いかけた。
「あー、新菜にゃ無理無理。ホットケーキ程度なら出来るだろうケド」
顔の前で手を振っている。新菜は気分を害したようだが、何も言わないところを見ると図星らしい。
「れ? そうなの? そんじゃオレ、新菜ちゃんが菓子作りたくなるくらい惚れてもらえる様に頑張んなきゃ」
さらりと言ってのける満に新菜は顔を向けることが出来ない。どんな表情で言っているのか気にはなるものの、憮然とした顔を無理に作って俯いていた。
浩司は食べ終えた氷のカップをつぶすと、シュッと満目掛けて投げつけた。
「てめ、キザっちいんだよ」
パンっと左手で受け取った満は、チチチと舌を打った。
「五番、キャッチャー榎本くんをお舐めでないよ」
それに向かって浩司は派手にべーっと舌を出した。
「ねー。それよか私おなか空いたぁ」
その隣でお腹をさすりながら翔子が情けない声を出した。今の今まで食べていたくせに、少し食べたから余計に腹具合が気になっているのかもしれない。
「そろそろ、んな時間かな」
ようやく新菜はちらりと満の顔を見た。
「ああ、そう言えば……」
満が自分の腕時計を確認した。時刻は正午を少し回ったところだ。
「お昼の時間だな。オレもちょっと腹減ったわ。どうする? 皆。一応サンドイッチとかおにぎりならあるけど」
「え!? まさか満くん作ったの?」
恐る恐る突っ込みを入れる新菜。実は女子三人食べ物の類は一切持ってきていない。
「そうそう、夜明け前に早起きしてさ~。なんてわけないって。母さんが張り切っちゃってさあ、持ってけって。で、足らなかったら焼きそばでも買ってこようと思うんだけど」
「じゃあそれ頂いちゃお。残して帰っちゃ悪いし」
ややほっとしたように頷く新菜。
「なら、お茶でも買ってくる」
円華が鞄から財布を取り出すのを満が制した。
「あ、お茶なら水筒に麦茶があるよ」
ウォルターが荷物の中から二リットルの水筒を取り出した。これだけあれば足りそうである。
「まるでドラ○もんの四次元ポケットだねぇ」
ほうっと翔子が溜め息をついた。
「だってこの荷物殆どが満くんのなんでしょ?」
「二人が持ってきそうになかったからしょうがなかったんだよ」
言いながら、何か思いついたらしくニッと笑った。
「そうだ、じゃこうしよう。弁当だけじゃ六人分足らないから、円華ちゃん悪いけどお茶の代わりに何か食いモン買ってきてくれる?」
ん、と円華が頷くのを待ってから、
「で、その間にシートを両方くっつけちゃって、皆で固まってご飯にしよう」
と説明した。
「あ、なるほど」
ウォルターが感心して頷いた。
「そうすりゃ皆で話しやすいし、バイキング形式で好きなもん取って食べたらいいワケだな」
「名案~」
パチパチと円華が拍手。
「じゃ、俺もマドカと一緒に買い出し行って来るな」
ウォルターが立ち上がり、「やったぁー」と飛び上がるように立った円華と二人、人込みの方へと歩いて行った。
流れに乗って、満が新菜の方を向いて満開の笑顔を作った。あまりの可愛さにくらりときた新菜だったが、
「あたしんちオーブンないから」
努めて冷静に返答する。
それを聞きつけた円華が首を伸ばして満にニッと笑いかけた。
「あー、新菜にゃ無理無理。ホットケーキ程度なら出来るだろうケド」
顔の前で手を振っている。新菜は気分を害したようだが、何も言わないところを見ると図星らしい。
「れ? そうなの? そんじゃオレ、新菜ちゃんが菓子作りたくなるくらい惚れてもらえる様に頑張んなきゃ」
さらりと言ってのける満に新菜は顔を向けることが出来ない。どんな表情で言っているのか気にはなるものの、憮然とした顔を無理に作って俯いていた。
浩司は食べ終えた氷のカップをつぶすと、シュッと満目掛けて投げつけた。
「てめ、キザっちいんだよ」
パンっと左手で受け取った満は、チチチと舌を打った。
「五番、キャッチャー榎本くんをお舐めでないよ」
それに向かって浩司は派手にべーっと舌を出した。
「ねー。それよか私おなか空いたぁ」
その隣でお腹をさすりながら翔子が情けない声を出した。今の今まで食べていたくせに、少し食べたから余計に腹具合が気になっているのかもしれない。
「そろそろ、んな時間かな」
ようやく新菜はちらりと満の顔を見た。
「ああ、そう言えば……」
満が自分の腕時計を確認した。時刻は正午を少し回ったところだ。
「お昼の時間だな。オレもちょっと腹減ったわ。どうする? 皆。一応サンドイッチとかおにぎりならあるけど」
「え!? まさか満くん作ったの?」
恐る恐る突っ込みを入れる新菜。実は女子三人食べ物の類は一切持ってきていない。
「そうそう、夜明け前に早起きしてさ~。なんてわけないって。母さんが張り切っちゃってさあ、持ってけって。で、足らなかったら焼きそばでも買ってこようと思うんだけど」
「じゃあそれ頂いちゃお。残して帰っちゃ悪いし」
ややほっとしたように頷く新菜。
「なら、お茶でも買ってくる」
円華が鞄から財布を取り出すのを満が制した。
「あ、お茶なら水筒に麦茶があるよ」
ウォルターが荷物の中から二リットルの水筒を取り出した。これだけあれば足りそうである。
「まるでドラ○もんの四次元ポケットだねぇ」
ほうっと翔子が溜め息をついた。
「だってこの荷物殆どが満くんのなんでしょ?」
「二人が持ってきそうになかったからしょうがなかったんだよ」
言いながら、何か思いついたらしくニッと笑った。
「そうだ、じゃこうしよう。弁当だけじゃ六人分足らないから、円華ちゃん悪いけどお茶の代わりに何か食いモン買ってきてくれる?」
ん、と円華が頷くのを待ってから、
「で、その間にシートを両方くっつけちゃって、皆で固まってご飯にしよう」
と説明した。
「あ、なるほど」
ウォルターが感心して頷いた。
「そうすりゃ皆で話しやすいし、バイキング形式で好きなもん取って食べたらいいワケだな」
「名案~」
パチパチと円華が拍手。
「じゃ、俺もマドカと一緒に買い出し行って来るな」
ウォルターが立ち上がり、「やったぁー」と飛び上がるように立った円華と二人、人込みの方へと歩いて行った。
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