Complex

亨珈

文字の大きさ
上 下
16 / 190
First Contact 海へいこう!

15

しおりを挟む
 まだしばらく続きそうなキスシーンを眺めながら、ちらっと翔子が浩司を見上げてきた。

「いいなぁ。私らも~」

「するわけねぇだろ」

 切れの良い否定が入り、「ウォルターはありゃ特別だからな、特別女ったらし」と首を振りつつ深い方へと逃げるように後退していく。

「普通しねーだろ。初めて会った女の子と、しかも白昼堂々と公衆の面前で」

「そぉ言われるとそうなんだけど~。結構堅いんだね」

 指を咥えんばかりに羨ましそうに翔子が再度二人に目を戻した時、ようやく唇と唇が離れた。円華は完全に腰が砕けてしまい、水に浸かる前にウォルターに支えられた。

「駄目だよーマドカ、挨拶でそんなに脱力してたら」

 終始放心状態でぽかんと口を開けて見ていた新菜は、絶対にウォルターに向かって強がらないと心に誓った。

「だ、脱力なんて、してな……」

 言い訳しつつも膝に力が入らない様子の円華をウォルターは軽々と抱き上げると、

「しょうがない。俺、先に浜に上がっとくな」

 そのままザバザバと岸に向かって歩いて行ってしまった。

「ありゃー。さっすがウォルター、テクニックありすぎ」

 満はふはーっと大きく息を吐いた。

(てか、二人っきりにしとくのやばくね?)

 未だ放心状態継続中の新菜につと近寄り、翔子がその前でひらひらと手を振って見せた。

「おーい、新菜さーん。戻ってこーい」

 微動だにしないので、満と浩司に向けて「お手上げ」のポーズをしてみせる。

「ま、仕方ないか……。こう見えてキス未経験の方だし、目の前であんなディープなのされちゃあね」

「「キス未経験んん!?」」

 男二人が驚きの声を上げる。

「見えないっしょ~。一日で十七だっていうのに。男嫌いとはちょっと違うみたい。家庭の事情もちょっとはあるみたいだけど、私が思うに今まで付き合ってきた男がハズレばっかだったせいじゃないかな」

 髪を上げていたバレッタを一旦外すと、口に咥えてもう一度まとめ直してからぱちんと留める。

「それより、ウォルターと円華さん、こんなとこでまさか続きしたりしないよねえ?」

 冗談で言ったらしく、心配するだけ無駄か~とケタケタ笑う翔子を前に、満と浩司はお互いを見遣った後唇を歪めた。

 その仕草を見て、翔子の笑い声が先細り、止まる。

「有り得なくない……とかいうこと、ね」

 いつ我に返ったのか、隣では新菜が顔を引きつらせていた。

「はは……まぁ、あの人たちは放っといて……どうしようかな」

 満はちらりと浩司を見た。

(ウォルターが円華ちゃん連れてったってことは必然的に新菜ちゃんがオレの相手ってことだけど。口にしてないけど実は最初見たときから一番好みだったんだよなぁ)

 浩司は意味有りげな笑みを浮かべて視線を返すと、

「そうだなっ」

 いきなりバシャッと手で水を跳ね上げ、盛大に新菜に浴びせた。
 ぼーっと突っ立っていた新菜は、頭からぐっしょりと海水を被ってしまった。

「なにすんだっ」

 ガルルルと噛み付きそうな勢いで、新菜は浩司を睨みつけた。日頃姉に鍛えられている浩司は、勿論それくらいでひるむわけがない。

「ぼーっとしてるからだよっ。目ぇ覚めた?」

 にやにや笑いながら、第二弾を今度は翔子に向かって放つ。

「きゃんっ」

 手でガードしたものの、オレンジでマニキュアされた髪はぐっしょりと濡れてしまった。

「折角海に来てんだから泳ごうぜ」

「そうそ、頭っから海を満喫しなきゃ」

 悪乗りした満までもがバシャバシャとやり始めたものだから新菜と翔子はたまったものではない。まさに濡れ鼠の状態である。
 二人は濡れた前髪をかき上げると、互いに見合い、

「ここまで濡れたんならしゃーないか」

 ニッと笑うと満と浩司にお返しをした。

 ひとしきりそうやって遊んでいたのだが、結構体力を使うらしく女子二人がへばってしまった。一休みということで一旦浜へ引き上げることにしたのだけれど、

「俺、ちょっと沖の方まで泳いで来るわ」

と言って浩司は一人平泳ぎで行ってしまい、三人はそれを見送ってからパラソルの下へと向かったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結【R―18】様々な情事 短編集

秋刀魚妹子
恋愛
 本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。  タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。  好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。  基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。  同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。  ※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。  ※ 更新は不定期です。  それでは、楽しんで頂けたら幸いです。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

処理中です...