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First Contact 海へいこう!
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新菜と目が合ったウォルターが「ねえ」と体を寄せて来た。
思わず顔が強張るのに気付いて微笑み、それ以上接近するのを止める。
「もしかしてニーナも男が苦手なの?」
「はは……はい!?」
見抜かれてどぎまぎの新菜は少し後退りした。
「それともただシャイなだけ?」
特に追求する様子ではなかったが、他の話題も逃げ場も見当たらず、仕方なく新菜は胸の辺りで人差し指と親指を広げる仕草をした。
「……少し」
「あ、やっぱり」
得たりと頷くウォルター。
「じゃあさ、今日それ克服しちゃおうよ。俺らも協力するし」
爽やかに諭されて反論も出来ず、新菜は曖昧に微笑したのだが、それを承諾と取ったのかウォルターは話を進めていく。
「で、代わりといってはナンだけどぉー」
絶妙のタイミングで、満が浩司の背を押して話に加わった。
「こいつの女性不信も治してやってくんないかなってね」
げ、という表情の浩司は、今にも「余計なお世話」と叫びだしそうだった。
「はいはいはぁーいっっ!!」
突如翔子の声がして、どさりと荷物を三人の足元に放り出して精一杯右手を大きく挙げて満の前に立った。
「それ、私やります! やらせてくださいっ」
両手で満の手を握り締めて、大きな瞳をキラキラさせて頼み込んだ。
「おー、すげぇやる気満々。じゃあ翔子ちゃんに任せちゃおっかな」
「って、おい! 当事者は俺だぞ。何勝手に決めてんだよ!」
険しい顔で食って掛かる浩司に、満はふにゃんと甘えた表情を作ると、
「こうちゃん、怒っちゃや~」
としな垂れかかった。
「うわ、気持ちわるっ」
すかさず浩司が避けると、もう満は悪戯っ子の表情になってけたけたと笑っていた。
「榎本ォ……!」
拳を握り締める浩司の隣では、ウォルターがぷくくくっと笑いを噛み殺し、翔子は嬉しそうにそんな浩司を見つめ、新菜は呆気に取られて立ち尽くしている。
少し遅れて合流した円華に新菜が説明すると、さもありなんと頷き女性不信について当人以外でひとしきり盛り上がった後、
「あ、そうそう。でほんとのところ年は?」
とふと思い出して円華が尋ね直した。
「はーい、実はタメなんだよん」
「てことは高二?」
可愛く応えた満に確認し、新菜と翔子は頷き合った。
「つーわけで、オレらのシートあっちだからさ、いこいこ」
ぐいぐいと浩司の背中を押しながら満が歩き出し、女子三人も手荷物を下げてそれに続いた。
ウォルターはそっと浩司に歩み寄り、小声で話し掛けた。
「浩司、一日だけでもいいから、紫サンの連れらと一緒にいるときみたいに普通にしてろよ。どうやらいい感じみたいだし。可愛いじゃん、ショーコ」
ぶすっとしたまま浩司が呟く。
「ぶりっこじゃん」
「あれくらいなら可愛いもんだろ」
「それに胸でかい」
満も小声で指摘し、
「関係ねぇ」
と返されたのは気にしていない様子で、「オレらはどうする? ウォルター」と話を振った。
「マドカとニーナね」
ウォルターはしばし考えたが、
「マドカが積極的だし、成り行きに任せるかな」
「だな、了解」
二人は確認して頷いたのだった。
思わず顔が強張るのに気付いて微笑み、それ以上接近するのを止める。
「もしかしてニーナも男が苦手なの?」
「はは……はい!?」
見抜かれてどぎまぎの新菜は少し後退りした。
「それともただシャイなだけ?」
特に追求する様子ではなかったが、他の話題も逃げ場も見当たらず、仕方なく新菜は胸の辺りで人差し指と親指を広げる仕草をした。
「……少し」
「あ、やっぱり」
得たりと頷くウォルター。
「じゃあさ、今日それ克服しちゃおうよ。俺らも協力するし」
爽やかに諭されて反論も出来ず、新菜は曖昧に微笑したのだが、それを承諾と取ったのかウォルターは話を進めていく。
「で、代わりといってはナンだけどぉー」
絶妙のタイミングで、満が浩司の背を押して話に加わった。
「こいつの女性不信も治してやってくんないかなってね」
げ、という表情の浩司は、今にも「余計なお世話」と叫びだしそうだった。
「はいはいはぁーいっっ!!」
突如翔子の声がして、どさりと荷物を三人の足元に放り出して精一杯右手を大きく挙げて満の前に立った。
「それ、私やります! やらせてくださいっ」
両手で満の手を握り締めて、大きな瞳をキラキラさせて頼み込んだ。
「おー、すげぇやる気満々。じゃあ翔子ちゃんに任せちゃおっかな」
「って、おい! 当事者は俺だぞ。何勝手に決めてんだよ!」
険しい顔で食って掛かる浩司に、満はふにゃんと甘えた表情を作ると、
「こうちゃん、怒っちゃや~」
としな垂れかかった。
「うわ、気持ちわるっ」
すかさず浩司が避けると、もう満は悪戯っ子の表情になってけたけたと笑っていた。
「榎本ォ……!」
拳を握り締める浩司の隣では、ウォルターがぷくくくっと笑いを噛み殺し、翔子は嬉しそうにそんな浩司を見つめ、新菜は呆気に取られて立ち尽くしている。
少し遅れて合流した円華に新菜が説明すると、さもありなんと頷き女性不信について当人以外でひとしきり盛り上がった後、
「あ、そうそう。でほんとのところ年は?」
とふと思い出して円華が尋ね直した。
「はーい、実はタメなんだよん」
「てことは高二?」
可愛く応えた満に確認し、新菜と翔子は頷き合った。
「つーわけで、オレらのシートあっちだからさ、いこいこ」
ぐいぐいと浩司の背中を押しながら満が歩き出し、女子三人も手荷物を下げてそれに続いた。
ウォルターはそっと浩司に歩み寄り、小声で話し掛けた。
「浩司、一日だけでもいいから、紫サンの連れらと一緒にいるときみたいに普通にしてろよ。どうやらいい感じみたいだし。可愛いじゃん、ショーコ」
ぶすっとしたまま浩司が呟く。
「ぶりっこじゃん」
「あれくらいなら可愛いもんだろ」
「それに胸でかい」
満も小声で指摘し、
「関係ねぇ」
と返されたのは気にしていない様子で、「オレらはどうする? ウォルター」と話を振った。
「マドカとニーナね」
ウォルターはしばし考えたが、
「マドカが積極的だし、成り行きに任せるかな」
「だな、了解」
二人は確認して頷いたのだった。
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