Complex

亨珈

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First Contact 海へいこう!

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 さりげなくもあからさまにもごちゃまぜにすると相当数の視線を集めていたその三人組に円華が近付いていくと、周囲からはぼそぼそとブーイングの嵐。

 (あーあ、嫌な感じ。自分らが声掛けられなかったからって、妬むなっての)

 新菜と翔子はそれらの女たちにガンを飛ばした。
 円華はというと、にこにこと三人と会話が弾んでいるようだ。二人の方を示してはまた三人に笑いかけている。

「なんだか意気投合してるみたいッスねぇ」

 早く近付きたくて焦れた翔子が呟いた時、円華が二人を手招きした。
 顔を見合わせてからぽてぽてと近寄っていくと、「こっちが新菜~」と円華が肩を叩き、 「んでこっちが翔子」と二人を紹介した。
 新菜は反射的に軽く頭を下げ、翔子は「よろしくぅ~」と可愛らしく首を傾げた。

「よろしくな! オレが満でこっちがウォルターで、後ろのが浩司」

 愛想良く紹介すると、さらりとウォルターが付け足した。

「あ、俺こう見えても日常会話は日本語でOKだから、安心してね。マドカとニーナとショーコ、もう覚えたよ」

 そつのないウォルターの半歩後ろでは、顔だけは三人娘の方を向けている浩司が明後日の方向を見ていた。

「最初にズバリ聞いちゃうけど、三人とも特定の彼女とかいんの?」

 翔子が三人を見回して尋ねた。それは円華もまだしていなかった質問らしく、興味津々でにじり寄って来た。

「いんや。勿論フリーだよ。じゃなきゃ男三人で夏休みにこないでしょー」

 満がけらけらと快活に笑った。

「それもそっかあ」

 翔子もつられて笑った。

「で、何歳? 私は十六で二人は十七なんだけどぉ……」

「いくつに見える?」

「当ててみて」

 ウォルターと満はくすりと笑った。まるで飲み屋で交わされる最初の会話のようである。
 この時浩司がこっそりとフェードアウトしようとしているのに気付き、目線は変えずに後ろ手にウォルターは浩司の腕を掴んだ。
 浩司はチッと舌打ち。

「そぉね~。十八、九ってところかな?」

「まさか年下ってことはないもんねぇ」

 こういう場合は若干上の年齢に言うのがマナーである。翔子と円華は笑いながら応えた。

「約一名、嫌がってるよぉだけどー?」

(あたしだって本音はここから逃げ出したいっつーのに、我慢して愛想笑いしてんだぞ)

 今まで黙ってただ微笑んでいた新菜が、浩司を掴んでいるウォルターの手を見遣って口を挟んだ。

「いやいや、嫌がってるわけじゃないんだよ。な?」

 ウォルターはぐいっと更に腕を引くと、自分より前に浩司を立たせた。
 強引なやり口に文句を言いたい浩司だったが、目の前の女子三人にじっと見詰められて狼狽し、真っ赤になって口篭った。

「や、その……」

 至近距離だと整った顔立ちがよく判る。翔子の大きな瞳は期待にきらきらと煌いていた。

「イヤじゃなくて、恥ずかしい? とか??」

「……そんなトコ」

 本当は面倒くさいだけなのだが、説明するのも面倒なのか浩司はあっさり肯定した。
 言葉数は少なかったが、しっとりとした声質に女子三人ははっと耳を奪われた。耳元で囁かれたらくらりとするかもしれない。
 俯いた表情も赤面した自分を恥ずかしく思っているのがありありで、なんとなくその心境に同感できる新菜は、それ以上追及するのはやめにした。

「こうやって知り合いになれたんだし、ご一緒してもいいかな?」

 下から覗き込むように、翔子が確認した。薄いTシャツ越しにも胸の谷間が強調されているのがわかり、浩司の視線が逃げるように彷徨った。

「別に……構わねぇけど」

 ぽつりと応えるのを待っていたかのように満が音頭を取る。

「ってなわけで何して遊ぶ~? ゴムボート持って来ようか。あ、それから君らの荷物何処ー? 良かったらシートくっつけちゃおうよ」

「だね、じゃあ荷物取って来る! 翔子、行こっ」

 円華が即答して翔子を促し、あっという間に二人は人込みの向こうへ消えて行った。

「あ、あたしも」

 出遅れた新菜が付いていこうとしたが「あんたはいーの!」という円華の声に阻まれ、更に逡巡している隙に二人の姿は見えなくなってしまっていた。

 男三人の中にいれば否応無しにしゃべらなきゃならないだろうというのが円華の魂胆だったが、勿論それに感づかない新菜ではなく。ただ、今更後を追うのも変な感じなので、諦めて男性陣の方を振り向いた。
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