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First Contact 海へいこう!
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「新菜ぁ、体焼かないの?」
背中にもオイルを塗ってもらった円華が、シートにうつ伏せのまま尋ねた。
「ん。焼かない」
パラソルで陰になっているところでジュースを飲んでいた新菜は、ストローから口を離しもせず返答する。
「でも焼いとかないと、後で『海行ったー』ってゆー実感ないですよぉ」
円華と並んで背中を焼いている翔子が意見したが、新菜はうんざりという表情でペットボトルをテーブル代わりのクーラーボックスに置いた。
「いいの、あたしは。肌はボロボロむけるし、シミは出来るし……」
「ばばあの台詞かよ」
円華の突っ込みに、新菜はサングラスをずらして鋭い一瞥をくれた。そんなのは無視して円華は立ち上がると、
「さ・て・と。そろそろ水に入らなきゃ何しに海に来たのかわっかんないしー」
と手足をぶらぶらさせた。
「逆ナンしにだろ」
サングラスを元に戻すと、新菜は溜め息をついた。
「とおーぜんっ。それが第一目的だもん」
円華はウインクして翔子のお尻をぺちぺちと叩いた。
「ほら、一気に焼くな。水ぶくれできっぞ」
「はぁーい」
翔子はだるそうに立ち上がると「新菜さんも行こ?」と小首を傾げて誘った。
「先行くねぇ~」
裸足になった円華は「あちち」と言いながら、焼けた砂浜を爪先立ちで駆けて行ってしまった。
「翔子も早く冷やしといで。あたしは後で行くから」
すっかりくつろいだ様子の新菜は、サングラスを外しながら「シッシッ」と手で払う仕草をする。
太腿まで水に浸かった円華が翔子を呼んでいる。
「行った行った」
新菜に言われ、翔子は元気良く返事をすると海に向かって駆け出した。
合流した二人を眺めながら、新菜はもう一度サングラスを掛け、ジュースを手に取る。
まだ動く気のない新菜がぼんやりと眺めている先で、二人は首まで水に浸かりながら何やら話していたかと思うと、ダッシュでシートに戻ってきた。
「新菜っ! 行くよっ」
はねてふくらはぎに付いた砂を両手で撫で取りながら、円華は勢い込んでいる。
「何処へ?」
ようやく咥えたストローから口を離しもせず新菜は淡々と合いの手を入れた。
「いたのよっ!」
円華はタオルで簡単に水気を取ると、薄手のパーカーを羽織った。
「誰が? まあちょっと落ち着きなって」
「落ち着いてる場合じゃないですぅ。めちゃめちゃナイスガイいるのに」
Tシャツを被りながら、翔子も興奮気味だ。
「んもう、新菜っ早く行こうって。他の女に取られちゃう! 」
ビーチサンダルを履いた円華は地団駄を踏みそうなくらいに焦っている。強引に新菜の手首を引いて立たせると、件の男が見える位置まで連れて行かれた。
「ほらあそこっ」
「痛いって……もう」
ぼやきながらも指差す方向に目を遣ったが、日も昇ってきた夏休みのビーチのこと。人が多すぎて誰を指しているのかさっぱり判らない。
「何処?」と首を傾げると「あんたって人はー!」と本当に円華は地団太を踏んだ。
「何で判んないのっ。あんなにあの三人組目立ってるってのにっ。ほら、特にあの外人さんとかっ」
「あーあー、はいはい」
外人さん、と言われてようやく判別できたらしく、新菜は頷いた。
「ねっねっ、ナイスでしょ。三人共ナイスガイなんて滅多にいないし、このチャンス逃す手はないですよぉ新菜さん」
勿論のことしっかり付いてきている翔子は、瞳をキラキラさせている。
「まあねぇ。けど、あたしは男なんかどうでもいいしぃ」
そのまま持ってきてしまったジュースを飲みながら意見しても、
「何言ってんの! 目の前にナンパしてくれとばかりにいるってぇのに」
円華は横でむきになって説得にかかっている。
「だあって、興味ねーもん」
「私はあんたのために……」
ぷいっと横を向いてしまった新菜には、何を言っても無駄のようだ。
「んもう。ここでうだうだ言っててもしゃーないのよ。じゃあ取り敢えず行って来るっ」
一歩踏み出した円華に翔子が声を掛けた。
「円華さん、英語大丈夫なんですか?」
「んなわけねーじゃん。でも他の二人は日本人だし、こんなとこ遊びに来てるんならきっと日本語話せるっしょ」
ひらひらと後ろ手に手を振りながら、円華は颯爽と三人組に近づいて行った。
背中にもオイルを塗ってもらった円華が、シートにうつ伏せのまま尋ねた。
「ん。焼かない」
パラソルで陰になっているところでジュースを飲んでいた新菜は、ストローから口を離しもせず返答する。
「でも焼いとかないと、後で『海行ったー』ってゆー実感ないですよぉ」
円華と並んで背中を焼いている翔子が意見したが、新菜はうんざりという表情でペットボトルをテーブル代わりのクーラーボックスに置いた。
「いいの、あたしは。肌はボロボロむけるし、シミは出来るし……」
「ばばあの台詞かよ」
円華の突っ込みに、新菜はサングラスをずらして鋭い一瞥をくれた。そんなのは無視して円華は立ち上がると、
「さ・て・と。そろそろ水に入らなきゃ何しに海に来たのかわっかんないしー」
と手足をぶらぶらさせた。
「逆ナンしにだろ」
サングラスを元に戻すと、新菜は溜め息をついた。
「とおーぜんっ。それが第一目的だもん」
円華はウインクして翔子のお尻をぺちぺちと叩いた。
「ほら、一気に焼くな。水ぶくれできっぞ」
「はぁーい」
翔子はだるそうに立ち上がると「新菜さんも行こ?」と小首を傾げて誘った。
「先行くねぇ~」
裸足になった円華は「あちち」と言いながら、焼けた砂浜を爪先立ちで駆けて行ってしまった。
「翔子も早く冷やしといで。あたしは後で行くから」
すっかりくつろいだ様子の新菜は、サングラスを外しながら「シッシッ」と手で払う仕草をする。
太腿まで水に浸かった円華が翔子を呼んでいる。
「行った行った」
新菜に言われ、翔子は元気良く返事をすると海に向かって駆け出した。
合流した二人を眺めながら、新菜はもう一度サングラスを掛け、ジュースを手に取る。
まだ動く気のない新菜がぼんやりと眺めている先で、二人は首まで水に浸かりながら何やら話していたかと思うと、ダッシュでシートに戻ってきた。
「新菜っ! 行くよっ」
はねてふくらはぎに付いた砂を両手で撫で取りながら、円華は勢い込んでいる。
「何処へ?」
ようやく咥えたストローから口を離しもせず新菜は淡々と合いの手を入れた。
「いたのよっ!」
円華はタオルで簡単に水気を取ると、薄手のパーカーを羽織った。
「誰が? まあちょっと落ち着きなって」
「落ち着いてる場合じゃないですぅ。めちゃめちゃナイスガイいるのに」
Tシャツを被りながら、翔子も興奮気味だ。
「んもう、新菜っ早く行こうって。他の女に取られちゃう! 」
ビーチサンダルを履いた円華は地団駄を踏みそうなくらいに焦っている。強引に新菜の手首を引いて立たせると、件の男が見える位置まで連れて行かれた。
「ほらあそこっ」
「痛いって……もう」
ぼやきながらも指差す方向に目を遣ったが、日も昇ってきた夏休みのビーチのこと。人が多すぎて誰を指しているのかさっぱり判らない。
「何処?」と首を傾げると「あんたって人はー!」と本当に円華は地団太を踏んだ。
「何で判んないのっ。あんなにあの三人組目立ってるってのにっ。ほら、特にあの外人さんとかっ」
「あーあー、はいはい」
外人さん、と言われてようやく判別できたらしく、新菜は頷いた。
「ねっねっ、ナイスでしょ。三人共ナイスガイなんて滅多にいないし、このチャンス逃す手はないですよぉ新菜さん」
勿論のことしっかり付いてきている翔子は、瞳をキラキラさせている。
「まあねぇ。けど、あたしは男なんかどうでもいいしぃ」
そのまま持ってきてしまったジュースを飲みながら意見しても、
「何言ってんの! 目の前にナンパしてくれとばかりにいるってぇのに」
円華は横でむきになって説得にかかっている。
「だあって、興味ねーもん」
「私はあんたのために……」
ぷいっと横を向いてしまった新菜には、何を言っても無駄のようだ。
「んもう。ここでうだうだ言っててもしゃーないのよ。じゃあ取り敢えず行って来るっ」
一歩踏み出した円華に翔子が声を掛けた。
「円華さん、英語大丈夫なんですか?」
「んなわけねーじゃん。でも他の二人は日本人だし、こんなとこ遊びに来てるんならきっと日本語話せるっしょ」
ひらひらと後ろ手に手を振りながら、円華は颯爽と三人組に近づいて行った。
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