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First Contact 海へいこう!
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しおりを挟む一方その頃、上依知町では。
「よし! 忘れ物は無しっと」
円華は鼻歌を歌いながら持参品の再チェックを済ませていた。
外ではそろそろ蝉の鳴き声が煩くなる頃だ。
「円華さぁん。用意できましたぁ?」
翔子がドアを開けてひょこりと顔を覗かせる。
「愛姉がまだかって」
その隣で新菜が口を開いた。
愛姉と呼ばれているのは、円華の三つ違いの姉である。名前は『愛華』と言い中学から付き合っていた一つ年上の彼氏と十八歳の時にバージンロードを歩いた。
そう聞くと流行のできちゃった婚と思われがちだが、子供は今のところなし。世間では暴走族と呼ばれる集団『舞姫』の元七代目総長で、三人娘は色々と世話になっているのだった。
今日は夫方の法事があるということで、出掛けついでに三人を海岸に落としていってくれることになっているのだ。
「円華、行きはいいけど帰りはどーすんのよ?」
腕を組んでいる新菜の首が不安げに傾いた。
「んなもん決まってんじゃんか。ナンパ男に送ってもらうか、最終手段はヒッチハイクよ」
当然とばかりに不敵な笑みで親指を立てる円華。
(きいたあたしが馬鹿だった…)
ナンパされるのが確定事項であるかのような態度に、新菜は思い切り脱力した。
無事にチェックを終えた荷物を下げてドタドタと二階から降りる円華を追いかけ、新菜と翔子も玄関前の車に乗り込んだ。既にエンジンがかかり、フルコーティングされた車内はエアコンできんきんに冷えている。
「愛姉ぇー、いこぉー」
「すみません」
ぺこりと頭を下げる新菜と翔子に、「いーってことよ」とルームミラー越しに愛華は答え、同時にチェンジをドライブに入れた。
円華より長いシャギーの入ったロングヘアを大人しめの茶色に染め、ぴたりと体に沿うようなスーツに身を包んでいる。助手席の円華と顔立ちが良く似ていた。
「原チャで行くとぉー疲れるだけだし~。第一ナイスガイげっとしたとき邪魔だしー」
ほくほく顔で持論を繰り広げる妹に、姉は溜め息をついた。
「円華は男好きなくせに理想めちゃめちゃ高いからなかなか男出来ないの。私に似て美人の癖に」
「おっとさりげなく自分が美人と断言する辺り。いやいや、男好きって十四歳で処女喪失したヤツに言われたかぁねーよ」
「あれ? そうだっけ」
「ったく惚けちゃって。誰だよ、『大学生のかっこいい人にナンパされてホテルいっちゃったぁ』って自慢してたのは。義兄さんにチクるよ」
当時の姉の口調を真似て言い、横目でちらりちらりと睨み合い。
「んなこといったっけ?」
「ったく……」
「そういうあんただって十五の時だったじゃん」
あくまで惚けるつもりの姉は、ウインカーを出しながら反撃。
「そーだっけ?」
こちらも惚けてちらりと舌を出した。
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