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第28章:「hide-and-seek3」
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喜多嶋さんは同乗していたアーサーメンバーに車を任せ、俺のバンに移った。
俺が運転しながら、JJ、Z、喜多嶋さんの4人でビデオ会議。
「キョウ、GPSによるとミワは羽田方面に向かっています」
「圭さんは美和のペンダントにGPSが付いてること知ってるんですか?」
「どうでしょう?知らなくてもその辺は考慮に入れてるとは思いますが」
「そうですよね、圭さんだし」
羽田か・・・国内か、国外か。
俺は昌さんに電話をした。
「昌さん、圭さんって今、休暇中ですか?」
「いや、3日程出張だけど?言ってなかった?」
「全然聞いてなくて―――どこに出張って言ってました?」
ま、あてにはならないけど。
「ジェイクと会うって言ってたけど何処で会うかはわかんないな」
「ジェイク?」
「ジェイクのこと聞いてないんだ?へぇ、なんで親父、杏にジェイクのこと話してないんだろ?」
それ以上、俺は昌さんに聞かなかった。
アーサーの誰かに聞けばわかることだから。
電話を切った後、俺は隣に座る喜多嶋さんに言った。
「ジェイクって誰ですか?」
「ジェイクは・・・香港系マフィアのトップですよ。圭さん、ジェイクと一緒なんですか?」
「かも、しれないですね」
「ジェイクの居場所を調べるには?」
「アーサー諜報部に調べさせましょう」
「Z、小型ジェット一台至急研究所に用意してもらえますか。家に張り付いてるZ部隊は解散でお願いします」
「了解」
とりあえず、GPSで美和が向かってる方向を確認しないと身動きが取れない。
俺は研究室の一室を借りて、戦闘モードに整える。
拳銃やナイフ、アーサーと常時連絡が取れる無線のイヤホンも左耳に装着。
その他、研究チームが開発した使えそうなモノを全て身に付け準備完了。
「杏くん、小型ジェットはいつでもOKですよ」
喜多嶋さんの声がイヤホンから流れる。
「ありがとうございます」
「操縦はZ隊員に任せてください」
「いや、自分でやるんで大丈夫です」
「いいえ、操縦は任せて、その間に戦略を練ってください。いつ新しい情報が入ってくるかわからないですし」
そこにJJが入ってきた。
「キョウ、ミワを乗せたジェットがいま羽田を発ちました。方角とアーサー諜報部からの情報を総合すると、恐らく行き先は北マリアナ諸島近くの孤島」
「ってことは、サイパンからヘリかボートで島に向かうってことかな・・・Z、サイパンにヘリを待機させておいてもらえますか?」
「no problem」
「あと、その島の所有者は?その島の地図、建物や地下部分の構成、わかりますか?」
「それはジェイク所有の島です。ボクはこのフィールドのエキスパートですよ?いくらジェイクの島でも、ミワが匿われてる場所までちゃんとキョウを誘導しますから安心してください」
「ありがとう、JJ」
そして俺は研究所から飛び立った。
サイパンまでは約3時間。
定員数名程のこの小型ジェット内で、JJ、Zそして喜多嶋さんからの情報を元に作戦を練る。
「Z、ジェイクのことを詳しく教えてくれませんか。それと、彼の周囲にいる人間も」
「ジェイクは現在50歳。イタリアと香港のハーフ。かなり腕が立つと聞いてるけど、彼が動くことはほとんどない。彼の護衛たちがいるからね。常に彼と行動を共にしているのは10人。だけど彼の友人や幹部、家族が同行していたら、もちろん護衛の数は増える」
「圭さんは?少なくとも2人の外国人がいま、圭さんに付いてますよね。俺はあの2人を今まで見たことがないけど」
「あの2人はジェイクの護衛だと思うよ。ケイは今回、自分の組織からは誰も動かしてないんじゃないかな・・・キョウに妙な動きを悟られないようにっていうのもあるだろうし、ジェイクの組織の奴らの方がだんぜん戦闘能力が高いから」
まぁ、今回のテーマが「俺が圭さんを超えてるかどうか」のテストであるならば尚更、近藤組や近藤コーポレーション関連の人間を動かす必要はない。
特に組や会社の人間と既に関係を構築してる俺にとっては、彼らをこのプロジェクトに使うことは、俺に有利に働くだけだ。
きっと、ジェイクのことを今まで俺に話さなかったのは、このプロジェクトのためなんだろう。
それだけ計画的ってこと。
「お遊び」
そう喜多嶋さんは言ったけれど、もし肉体的な激しいぶつかり合いになった場合、決定的な勝負がつくまで・・・つまり圭さんはどちらかが致命的になる寸前まで本気でくるはず。
俺としては・・・念のために武装はしてきてるけど、極力闘いたくない。
俺は本気で圭さんに向かうし、絶対に美和は取り返すし、これは俺が早かれ遅かれ超えなくちゃいけない壁だってことは重々承知。
だけど、こんな「お遊び」の為に誰も傷つけたくないから、できれば頭脳戦で・・・美和を奪還したい。
―――って言ってるのは俺の理性。
俺の感情は―――
今思い返しても、美和が俺を差し置いて圭さんの車に飛び移ったとか、腸煮え繰り返る。
この行き場のない苛立ちと怒りで、見境なく暴れてしまいそうだ。
マジでどうにかしないと・・・絶対にヤバい。
「キョウ、やはりケイのジェットはサイパン方面に向かっています。これからジェイクの所有する島の地図、ジェイクの別荘および地下経路の地図を映しますので、全て記憶してください。ただし別荘と地下経路については特殊なレーザーで予測したものなので100%正確ではないです」
「了解」
ジェイクの島はサイパン島の北、100km程の場所にある。
大きさはサイパン島の1/3くらい。
あれ?
この島、滑走路があるじゃないか。
「JJ、Z、地図上に滑走路が見えるんだけど、ここに直接降りたらマズイんですか?サイパンより北だし、少し時間短縮できますよね?」
「恐らくミワを乗せたジェットは直接この島に降りると思う。でも念のため、2段階踏んだ方が安全だ」
「でも技術的にここに直接着陸することは可能ですか?」
「・・・可能だよ」
「じゃ、ここで降ろしてください。俺を降ろしたらすぐ離陸してサイパンで待機お願いします。美和を奪還したらすぐ知らせるので」
「くく・・・キョウがそう言うなら仕方ないな。おまけにキョウは運がいい」
「なんでですか?」
「そのジェットにはバイクが積んであるから島を自由に動き回れる」
到着まで残り時間約30分。
俺はブーツの紐を締め直し、深呼吸をして息を整えた。
このジェットにも窓がない。
だから眼下にどういう景色が見えるのか、今の俺には定かじゃない。
でも、明らかに下降して行ってるのを感じる。
「あと5分で到着だ」
「Zは圭さんの戦闘能力、知ってるんですか?」
「知ってるよ」
「俺、勝ち目ありますか?なくても行きますけどね、もちろん」
「キョウは今までで一番成長の早い生徒だったよ」
「くく。圭さんって若いころからアーサーにいたんですよね?それって一年くらいで追いつけるわけないって話じゃないですか。ははっ」
「ケイはZ部隊じゃないから、その辺は安心しろ」
「そうなんだ。ま、負けませんけどね。くくっ」
小型ジェットが少しバウンドして、着陸したことを俺に伝えた。
俺は後方部にあったバイクに跨り、エンジンをかける。
Zによれば、床部分がスライドして、そのまま外に出られるはず。
「今、ジェットは北側を向いてる。だから、ジェットからバイクで降りた方向そのままに、まっすぐ南に向かえ。ジャングルのような場所に入って行く感じで、道路は狭いけど舗装されているはずだ」
「了解」
そして床が自動で降りたと同時に、俺は走りだした。
天気はいい。
でもスコールの直後なのか、地面も木々も濡れている。
おかしいのは・・・
美和を乗せてきたはずのジェットが滑走路上にないこと。
「JJ、美和はホントにここにいるんですか?ジェットが見当たらないんですけど」
「GPS信号はミワがそこにいることを示しています。だけどマザーアース上では別荘からはみ出た場所で動きが見えるのでおそらく地下でしょう。ここからはGPSと超音波で感知した地下のシュミレーション3Dを合成して情報を伝えます」
「頼みます!」
このままあと5分ほど走れば、ジェイクの別荘が見えてくる。
でも問題はその建物じゃなくて、その巨大な地下室・・・いや、JJからの情報では、それは巨大地下迷路。
マザーアースの映像から木々の生え方を見れば、その迷路が約1km四方に渡ると予測できる。
そして、目の前にジェイクの別荘が見えてきた。
まるで白亜の城。
俺はバイクを脇に停めた。
ジェットでここまで来たんだから、俺がここにいることはわかってるはず。
ここからが勝負。
面白ことに、城の周りには人っ子一人見当たらない。
中に入れ、ってことか。
俺は――――
目の前にある小さな石のドアを押した。
俺が運転しながら、JJ、Z、喜多嶋さんの4人でビデオ会議。
「キョウ、GPSによるとミワは羽田方面に向かっています」
「圭さんは美和のペンダントにGPSが付いてること知ってるんですか?」
「どうでしょう?知らなくてもその辺は考慮に入れてるとは思いますが」
「そうですよね、圭さんだし」
羽田か・・・国内か、国外か。
俺は昌さんに電話をした。
「昌さん、圭さんって今、休暇中ですか?」
「いや、3日程出張だけど?言ってなかった?」
「全然聞いてなくて―――どこに出張って言ってました?」
ま、あてにはならないけど。
「ジェイクと会うって言ってたけど何処で会うかはわかんないな」
「ジェイク?」
「ジェイクのこと聞いてないんだ?へぇ、なんで親父、杏にジェイクのこと話してないんだろ?」
それ以上、俺は昌さんに聞かなかった。
アーサーの誰かに聞けばわかることだから。
電話を切った後、俺は隣に座る喜多嶋さんに言った。
「ジェイクって誰ですか?」
「ジェイクは・・・香港系マフィアのトップですよ。圭さん、ジェイクと一緒なんですか?」
「かも、しれないですね」
「ジェイクの居場所を調べるには?」
「アーサー諜報部に調べさせましょう」
「Z、小型ジェット一台至急研究所に用意してもらえますか。家に張り付いてるZ部隊は解散でお願いします」
「了解」
とりあえず、GPSで美和が向かってる方向を確認しないと身動きが取れない。
俺は研究室の一室を借りて、戦闘モードに整える。
拳銃やナイフ、アーサーと常時連絡が取れる無線のイヤホンも左耳に装着。
その他、研究チームが開発した使えそうなモノを全て身に付け準備完了。
「杏くん、小型ジェットはいつでもOKですよ」
喜多嶋さんの声がイヤホンから流れる。
「ありがとうございます」
「操縦はZ隊員に任せてください」
「いや、自分でやるんで大丈夫です」
「いいえ、操縦は任せて、その間に戦略を練ってください。いつ新しい情報が入ってくるかわからないですし」
そこにJJが入ってきた。
「キョウ、ミワを乗せたジェットがいま羽田を発ちました。方角とアーサー諜報部からの情報を総合すると、恐らく行き先は北マリアナ諸島近くの孤島」
「ってことは、サイパンからヘリかボートで島に向かうってことかな・・・Z、サイパンにヘリを待機させておいてもらえますか?」
「no problem」
「あと、その島の所有者は?その島の地図、建物や地下部分の構成、わかりますか?」
「それはジェイク所有の島です。ボクはこのフィールドのエキスパートですよ?いくらジェイクの島でも、ミワが匿われてる場所までちゃんとキョウを誘導しますから安心してください」
「ありがとう、JJ」
そして俺は研究所から飛び立った。
サイパンまでは約3時間。
定員数名程のこの小型ジェット内で、JJ、Zそして喜多嶋さんからの情報を元に作戦を練る。
「Z、ジェイクのことを詳しく教えてくれませんか。それと、彼の周囲にいる人間も」
「ジェイクは現在50歳。イタリアと香港のハーフ。かなり腕が立つと聞いてるけど、彼が動くことはほとんどない。彼の護衛たちがいるからね。常に彼と行動を共にしているのは10人。だけど彼の友人や幹部、家族が同行していたら、もちろん護衛の数は増える」
「圭さんは?少なくとも2人の外国人がいま、圭さんに付いてますよね。俺はあの2人を今まで見たことがないけど」
「あの2人はジェイクの護衛だと思うよ。ケイは今回、自分の組織からは誰も動かしてないんじゃないかな・・・キョウに妙な動きを悟られないようにっていうのもあるだろうし、ジェイクの組織の奴らの方がだんぜん戦闘能力が高いから」
まぁ、今回のテーマが「俺が圭さんを超えてるかどうか」のテストであるならば尚更、近藤組や近藤コーポレーション関連の人間を動かす必要はない。
特に組や会社の人間と既に関係を構築してる俺にとっては、彼らをこのプロジェクトに使うことは、俺に有利に働くだけだ。
きっと、ジェイクのことを今まで俺に話さなかったのは、このプロジェクトのためなんだろう。
それだけ計画的ってこと。
「お遊び」
そう喜多嶋さんは言ったけれど、もし肉体的な激しいぶつかり合いになった場合、決定的な勝負がつくまで・・・つまり圭さんはどちらかが致命的になる寸前まで本気でくるはず。
俺としては・・・念のために武装はしてきてるけど、極力闘いたくない。
俺は本気で圭さんに向かうし、絶対に美和は取り返すし、これは俺が早かれ遅かれ超えなくちゃいけない壁だってことは重々承知。
だけど、こんな「お遊び」の為に誰も傷つけたくないから、できれば頭脳戦で・・・美和を奪還したい。
―――って言ってるのは俺の理性。
俺の感情は―――
今思い返しても、美和が俺を差し置いて圭さんの車に飛び移ったとか、腸煮え繰り返る。
この行き場のない苛立ちと怒りで、見境なく暴れてしまいそうだ。
マジでどうにかしないと・・・絶対にヤバい。
「キョウ、やはりケイのジェットはサイパン方面に向かっています。これからジェイクの所有する島の地図、ジェイクの別荘および地下経路の地図を映しますので、全て記憶してください。ただし別荘と地下経路については特殊なレーザーで予測したものなので100%正確ではないです」
「了解」
ジェイクの島はサイパン島の北、100km程の場所にある。
大きさはサイパン島の1/3くらい。
あれ?
この島、滑走路があるじゃないか。
「JJ、Z、地図上に滑走路が見えるんだけど、ここに直接降りたらマズイんですか?サイパンより北だし、少し時間短縮できますよね?」
「恐らくミワを乗せたジェットは直接この島に降りると思う。でも念のため、2段階踏んだ方が安全だ」
「でも技術的にここに直接着陸することは可能ですか?」
「・・・可能だよ」
「じゃ、ここで降ろしてください。俺を降ろしたらすぐ離陸してサイパンで待機お願いします。美和を奪還したらすぐ知らせるので」
「くく・・・キョウがそう言うなら仕方ないな。おまけにキョウは運がいい」
「なんでですか?」
「そのジェットにはバイクが積んであるから島を自由に動き回れる」
到着まで残り時間約30分。
俺はブーツの紐を締め直し、深呼吸をして息を整えた。
このジェットにも窓がない。
だから眼下にどういう景色が見えるのか、今の俺には定かじゃない。
でも、明らかに下降して行ってるのを感じる。
「あと5分で到着だ」
「Zは圭さんの戦闘能力、知ってるんですか?」
「知ってるよ」
「俺、勝ち目ありますか?なくても行きますけどね、もちろん」
「キョウは今までで一番成長の早い生徒だったよ」
「くく。圭さんって若いころからアーサーにいたんですよね?それって一年くらいで追いつけるわけないって話じゃないですか。ははっ」
「ケイはZ部隊じゃないから、その辺は安心しろ」
「そうなんだ。ま、負けませんけどね。くくっ」
小型ジェットが少しバウンドして、着陸したことを俺に伝えた。
俺は後方部にあったバイクに跨り、エンジンをかける。
Zによれば、床部分がスライドして、そのまま外に出られるはず。
「今、ジェットは北側を向いてる。だから、ジェットからバイクで降りた方向そのままに、まっすぐ南に向かえ。ジャングルのような場所に入って行く感じで、道路は狭いけど舗装されているはずだ」
「了解」
そして床が自動で降りたと同時に、俺は走りだした。
天気はいい。
でもスコールの直後なのか、地面も木々も濡れている。
おかしいのは・・・
美和を乗せてきたはずのジェットが滑走路上にないこと。
「JJ、美和はホントにここにいるんですか?ジェットが見当たらないんですけど」
「GPS信号はミワがそこにいることを示しています。だけどマザーアース上では別荘からはみ出た場所で動きが見えるのでおそらく地下でしょう。ここからはGPSと超音波で感知した地下のシュミレーション3Dを合成して情報を伝えます」
「頼みます!」
このままあと5分ほど走れば、ジェイクの別荘が見えてくる。
でも問題はその建物じゃなくて、その巨大な地下室・・・いや、JJからの情報では、それは巨大地下迷路。
マザーアースの映像から木々の生え方を見れば、その迷路が約1km四方に渡ると予測できる。
そして、目の前にジェイクの別荘が見えてきた。
まるで白亜の城。
俺はバイクを脇に停めた。
ジェットでここまで来たんだから、俺がここにいることはわかってるはず。
ここからが勝負。
面白ことに、城の周りには人っ子一人見当たらない。
中に入れ、ってことか。
俺は――――
目の前にある小さな石のドアを押した。
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