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18 手厚い看護
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気力が沸かない…こんな若くして廃人か、俺?こっち来てからずっとベッドの住人になってる。この部屋はダブルベッドだから、夜は翔が一緒に寝る。初めは気力が無いながらも、体を固くして思い切り拒否した。だからこっちではあんなにべったりしていた翔はベッドの端に眠るようになった。
やる気は無くたって腹は減るし、生きてるし生きる為に必要なことは色々とあるわけで…辛うじてトイレは自分で行けるけど、食事やら入浴やらと自分の身の回りの事に関しては無頓着になっていた。それを翔が全てカバーしている。食事を運び、入浴を促す。
「ほら、晴…今日のは美味しそうだよ?さ、座ろう?動きたくなかったらそのままで良いから。」
翔が俺を抱えて膝の上に乗せる。自分で食べようとしない俺の口まで、一口サイズにした食事を運んでくれる。嫌な顔しないで飽きもせず、黙々と食べる俺を嬉しそうに見ながら。
入浴の時は浴室まで俺を連れて行く。俺が動かない時は抱え上げて。でもそれ以上は俺がやらせない。変わらずベタベタして来るけど。絶対に裸は見せないようにしている。
こっちに来てから翔ともちゃんと話をしていない。何日経ったか?元の世界にどうして帰らないのか?体と心が別の所に居るみたいに現実味がないんだ。
「晴……」
そっと優しく名前を呼んで髪や頭を撫でる。優しく抱きしめて来る事もあるけど、それ位は許せるようになった。ここに居る翔はそれ以上はしてこないし、俺の気を逆なでるような事もしてこない…翔を殴りまくった事で友人を傷つける事なんてもう嫌だって心から思ったから…俺もこれ以上は拒絶しない。
「晴、どこか散歩に行こう?こっちに来てから外に出ていないだろう?」
今日も部屋のベランダに椅子を出して俺を抱えて座っている。ここからだと城の庭園が少し望めて綺麗な花が見えるんだ。翔の手はいつまでも見向きもしない俺を撫でてる。
「お前…こんな事してて楽しいの?」
翔を見てない俺が翔に聞く。自分でも、なんで声をかけたのかビックリしてる。
「ん?凄く楽しい……なんたって、晴を独り占めできるからな…」
優しくキュウッと抱きしめられて、寒く無いように肩の掛け物もかけ直してくれる。
「……あんな、事したのに……?」
あれ以来、自分から話しかけもしなかったのに不思議と今日は言葉が出た。
「晴……触っても良い…?」
触る…と聞いて、ビクッと反応する俺の身体…
「初めはちゃんと聞くべきだった……見てたけど、あんな事…するつもりじゃ無くて…」
抱きしめていた翔の腕に力が入る…余り、強い力は好きじゃない…あの時の恐怖や絶望感なんか全部思い出すから…
「でも…この、腕だった…」
「……分かってる…………ごめんな………」
翔の声の方が泣きそうだ……あの時の憎たらしいまでの態度はどこいった?これじゃあ、どっちが悪い事したのか分からなくなるな。
フッ……余りの情けなさに、俺の方が笑いがこみ上げてきた…
「情けねぇなぁ……お前も、俺も……」
「晴は……情けなくなんかない…お前は、ただただ…綺麗なだけだった……どんな時も、俺には眩しかった……本当に…悪かった……」
撫でてる翔の腕が震えてる……?こんなに謝るなんてあれは本意じゃなかったってことか?本気じゃ無くても、男抱けんの?それとも本気だったらあんなに酷い事すんの?
まだ、俺の頭は混乱してる……
やる気は無くたって腹は減るし、生きてるし生きる為に必要なことは色々とあるわけで…辛うじてトイレは自分で行けるけど、食事やら入浴やらと自分の身の回りの事に関しては無頓着になっていた。それを翔が全てカバーしている。食事を運び、入浴を促す。
「ほら、晴…今日のは美味しそうだよ?さ、座ろう?動きたくなかったらそのままで良いから。」
翔が俺を抱えて膝の上に乗せる。自分で食べようとしない俺の口まで、一口サイズにした食事を運んでくれる。嫌な顔しないで飽きもせず、黙々と食べる俺を嬉しそうに見ながら。
入浴の時は浴室まで俺を連れて行く。俺が動かない時は抱え上げて。でもそれ以上は俺がやらせない。変わらずベタベタして来るけど。絶対に裸は見せないようにしている。
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「晴……」
そっと優しく名前を呼んで髪や頭を撫でる。優しく抱きしめて来る事もあるけど、それ位は許せるようになった。ここに居る翔はそれ以上はしてこないし、俺の気を逆なでるような事もしてこない…翔を殴りまくった事で友人を傷つける事なんてもう嫌だって心から思ったから…俺もこれ以上は拒絶しない。
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「お前…こんな事してて楽しいの?」
翔を見てない俺が翔に聞く。自分でも、なんで声をかけたのかビックリしてる。
「ん?凄く楽しい……なんたって、晴を独り占めできるからな…」
優しくキュウッと抱きしめられて、寒く無いように肩の掛け物もかけ直してくれる。
「……あんな、事したのに……?」
あれ以来、自分から話しかけもしなかったのに不思議と今日は言葉が出た。
「晴……触っても良い…?」
触る…と聞いて、ビクッと反応する俺の身体…
「初めはちゃんと聞くべきだった……見てたけど、あんな事…するつもりじゃ無くて…」
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「でも…この、腕だった…」
「……分かってる…………ごめんな………」
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フッ……余りの情けなさに、俺の方が笑いがこみ上げてきた…
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撫でてる翔の腕が震えてる……?こんなに謝るなんてあれは本意じゃなかったってことか?本気じゃ無くても、男抱けんの?それとも本気だったらあんなに酷い事すんの?
まだ、俺の頭は混乱してる……
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