5 / 61
5 出たらそこには
しおりを挟む
あっという間?の夜は過ぎ、森から聞こえる音で異常な緊張と翔の行動から来る脱力とを繰り返しても夜明けを迎えることができた。幸いだったのは獣らしい野生動物が出てこなかったという事だろうか…
最初居た場所からかなり歩いて来たけど、やっぱりスマホは圏外で、夜が明けるのと同時に少しずつ薄くなって来た木々の間の道なき道をとりあえずズンズン進んでいく。
体力の消耗が心配だったが、運の良い事に弁当持ってたし、食事は取れた。ただほぼ寝てないって事で睡眠不足でボゥッとしてる。だからもう、翔の行動に突っ込みも入れたくはないんだ。
「お前、ブレないな……」
もう、何回言ってもダメだった。寄ってくるな、と……気を抜けば既に隣にいるし、腰をガッチリホールドされてる。お前、他にも注意すべき事は絶対に山の様にあるこの場所で、全神経それにしか向いていないのかって言うほど、隙を逃さない。
はっきり言って防ぐこっちの体力の方が勿体なくて、かなり前から抗議する事も諦めてしまってた。
明るくなって来たから、夜の緊張も取れて来てさっさと森を出ようっていう意欲に駆られる。
「晴…おはよう。」
身体を密着させながら、翔はそれだけなら爽やかな挨拶をして来た。
「おはようも…何も…」
俺ら一睡もしてないのね?そんで何で今更挨拶を?
「朝日の中で晴に言いたかったんだ。晴が居てくれて良い朝だね?」
「………それ、森を出てから言おうか……?」
ここを脱出出来なければ、いずれ遭難……助けも呼べず、最悪餓死………なのに良く言えるな……
「大丈夫。迷ったら俺が晴を抱いてここから出るよ…」
「…いえね、翔さん。既に迷っててですね?夜通し歩き回ってたよね?そろそろ本気でここから出たいんだけど…」
「疲れちゃった?」
「お前、アホなの?徹夜で歩いて疲れない奴いるのかよ?」
ここに来た当初よりも足元にも草が少なくなって歩きやすくなって来ていて、疲労が祟っていた身体にはかなり優しい。
「ん~こっちの方行ってみる?」
腰に手を置いたまま、翔は恋人をエスコートする様にリードしようとする。俺はもうどうにでもしてくれ、という心持ち…
「あっ!…」
木の切れ目から、緑の森以外が見えている様な気がする。自然と足早になって数メートル先の景色を見ようと先を急いだ。
「おぉ!!」
見えた先には森ではなくて、畑!それも荒れ果てた奴じゃなくて、綺麗に耕されていて新芽の列が整然と並んでるやつ…!
「人がいる!」
散々夜道を歩いて、人っ子一人も見なかった俺には人の生活臭が物凄く恋しかったみたいだ。良く考えたら大勢の人が生活している所にいたんだから人はいるよな…?
「森…抜けたね?」
当然の様に翔はピッタリと今度は後ろに張り付いて、抱きしめる形で寄り添って来た。
「おんや?新婚さんかな?」
人の声だぁ!!翔以外の声を聞くの何時間振りだよ?
「珍しいねぇ?こんな所で?」
「おはようございます。」
お、あの翔が和やかに人に挨拶しとる…!?
「新婚旅行できたんでしょう?ここには何にもないけどねぇ……」
声が聞こえた方にグリッと身体を回して目をやれば、見慣れない服装の中年の男女?二人とも白いブラウスに女性は茶のロングスカート、男性は茶のズボン。お揃いのコーディネイトでも近所では見かけない着方だ。
にこやかに声をかけてもらって嬉しいんですけどね?んん??今何と言ったの?
「あの?新婚さんとは?」
俺の笑顔は引きつっていたに違いない。何しろ疲れているんだ…心から出る喜びだったら別だが、愛想笑いにもう力は注げない…
「あらあら、照れちゃって…ふふふ。可愛い奥さんねぇ?こんなに格好の良い旦那様だったら照れちゃうのもわかるわぁ!」
少し頬を染めた女性が続けて言った言葉に、横っ面を叩かれた様な気がする……
あの、新婚って……旦那って、何……??
最初居た場所からかなり歩いて来たけど、やっぱりスマホは圏外で、夜が明けるのと同時に少しずつ薄くなって来た木々の間の道なき道をとりあえずズンズン進んでいく。
体力の消耗が心配だったが、運の良い事に弁当持ってたし、食事は取れた。ただほぼ寝てないって事で睡眠不足でボゥッとしてる。だからもう、翔の行動に突っ込みも入れたくはないんだ。
「お前、ブレないな……」
もう、何回言ってもダメだった。寄ってくるな、と……気を抜けば既に隣にいるし、腰をガッチリホールドされてる。お前、他にも注意すべき事は絶対に山の様にあるこの場所で、全神経それにしか向いていないのかって言うほど、隙を逃さない。
はっきり言って防ぐこっちの体力の方が勿体なくて、かなり前から抗議する事も諦めてしまってた。
明るくなって来たから、夜の緊張も取れて来てさっさと森を出ようっていう意欲に駆られる。
「晴…おはよう。」
身体を密着させながら、翔はそれだけなら爽やかな挨拶をして来た。
「おはようも…何も…」
俺ら一睡もしてないのね?そんで何で今更挨拶を?
「朝日の中で晴に言いたかったんだ。晴が居てくれて良い朝だね?」
「………それ、森を出てから言おうか……?」
ここを脱出出来なければ、いずれ遭難……助けも呼べず、最悪餓死………なのに良く言えるな……
「大丈夫。迷ったら俺が晴を抱いてここから出るよ…」
「…いえね、翔さん。既に迷っててですね?夜通し歩き回ってたよね?そろそろ本気でここから出たいんだけど…」
「疲れちゃった?」
「お前、アホなの?徹夜で歩いて疲れない奴いるのかよ?」
ここに来た当初よりも足元にも草が少なくなって歩きやすくなって来ていて、疲労が祟っていた身体にはかなり優しい。
「ん~こっちの方行ってみる?」
腰に手を置いたまま、翔は恋人をエスコートする様にリードしようとする。俺はもうどうにでもしてくれ、という心持ち…
「あっ!…」
木の切れ目から、緑の森以外が見えている様な気がする。自然と足早になって数メートル先の景色を見ようと先を急いだ。
「おぉ!!」
見えた先には森ではなくて、畑!それも荒れ果てた奴じゃなくて、綺麗に耕されていて新芽の列が整然と並んでるやつ…!
「人がいる!」
散々夜道を歩いて、人っ子一人も見なかった俺には人の生活臭が物凄く恋しかったみたいだ。良く考えたら大勢の人が生活している所にいたんだから人はいるよな…?
「森…抜けたね?」
当然の様に翔はピッタリと今度は後ろに張り付いて、抱きしめる形で寄り添って来た。
「おんや?新婚さんかな?」
人の声だぁ!!翔以外の声を聞くの何時間振りだよ?
「珍しいねぇ?こんな所で?」
「おはようございます。」
お、あの翔が和やかに人に挨拶しとる…!?
「新婚旅行できたんでしょう?ここには何にもないけどねぇ……」
声が聞こえた方にグリッと身体を回して目をやれば、見慣れない服装の中年の男女?二人とも白いブラウスに女性は茶のロングスカート、男性は茶のズボン。お揃いのコーディネイトでも近所では見かけない着方だ。
にこやかに声をかけてもらって嬉しいんですけどね?んん??今何と言ったの?
「あの?新婚さんとは?」
俺の笑顔は引きつっていたに違いない。何しろ疲れているんだ…心から出る喜びだったら別だが、愛想笑いにもう力は注げない…
「あらあら、照れちゃって…ふふふ。可愛い奥さんねぇ?こんなに格好の良い旦那様だったら照れちゃうのもわかるわぁ!」
少し頬を染めた女性が続けて言った言葉に、横っ面を叩かれた様な気がする……
あの、新婚って……旦那って、何……??
42
お気に入りに追加
562
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜
7ズ
BL
異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。
攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。
そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。
しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。
彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。
どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。
ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。
異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。
果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──?
ーーーーーーーーーーーー
狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛
雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される
Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木)
読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!!
黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。
死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。
闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。
そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。
BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)…
連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。
拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。
Noah
林檎を並べても、
ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。
二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。
ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。
彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる