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「片付けるのだって急がなくていいだろう?まだ、その、日が浅いのだし……」
ローニスが急逝してしまってからまだ1週間…まだ、でもあっという間に過ぎた1週間。
「うん。そうね…」
「母さん達が一度家に帰ってきてゆっくりしたらどうかって…少し、体を休めないとって…」
「本当にしんどく無いし、反対に軽いくらいよ?それに、ここは私に残された物だから。」
ローニスはガルダ家の跡取りで商店も全て受け継ぐはずだった…けれどもこうなった以上はローニスの従兄弟がその跡を引き受けてくれる事が先日決まったばかり。ただこの家や持ち物は結婚祝いで頂いていた物だし、形見だしって事でそのまま住んでも、売って生活の足しにするのでも私の好きにしていいと言われている。
「そうだ!!カイン!頼みたい事があったのよ!」
「え?何?僕に出来る事?」
「難しく無いわ。まあ、少し疲れたからお茶でも飲みながら話しましょ?」
やっと重い腰を上げて、カインを自宅二階に案内する。
「やっぱり…何なの?これ?」
二階の状態を見て、カインの渋い変な顔。それもそうだろうとは思う。二階は主寝室と子供達のための寝室が幾つか。それらの部屋に、本来一階にあったダイニングテーブルセットやら、ローチェスト、台所にあった食器棚から調理器具まで……それらの部屋という部屋に詰められていた。
「大水でも出る予報、あったっけ?」
ただ今この地方は絶賛乾季中、大雨どころかにわか雨の予報があったら大喜びされるくらいだ。
「うん、無いわね。」
「なのに、どうして家具を二階に上げちゃったのさ?これじゃあ姉さんが困るだろ?」
「ん?そんなに不便でも無いのよ?調理器具は小さい物なら下に運べるし、リビングにカーペットを敷いてあるから座るのには問題ないしね。」
「いや……いやいやいや…問題あるでしょ?こんな事してたら父さんも母さんも姉さんを家に連れ戻そうとするよ、きっと。」
最愛の夫君を失って精神が疲れてしまったと思われる、きっと。
「だって、大水が出たら大変じゃない?せっかくの大切な家具が水浸しになっちゃうもの。」
「だから、今は乾季だってば…」
下からお湯の入ったケトルを持って上がってきたリンカを捕まえるカイン。
「分かった、もう何を聞いても驚かないから、何をしたいのか教えてよ、姉さん。」
いそいそと美味しそうなお茶を入れて、カインの前に自分もチョコンと座るリンカ。
「私ね、少し遠くに行こうと思って…」
また、何やら分からない事をニッコリと微笑みながら話し始める。
ローニスが急逝してしまってからまだ1週間…まだ、でもあっという間に過ぎた1週間。
「うん。そうね…」
「母さん達が一度家に帰ってきてゆっくりしたらどうかって…少し、体を休めないとって…」
「本当にしんどく無いし、反対に軽いくらいよ?それに、ここは私に残された物だから。」
ローニスはガルダ家の跡取りで商店も全て受け継ぐはずだった…けれどもこうなった以上はローニスの従兄弟がその跡を引き受けてくれる事が先日決まったばかり。ただこの家や持ち物は結婚祝いで頂いていた物だし、形見だしって事でそのまま住んでも、売って生活の足しにするのでも私の好きにしていいと言われている。
「そうだ!!カイン!頼みたい事があったのよ!」
「え?何?僕に出来る事?」
「難しく無いわ。まあ、少し疲れたからお茶でも飲みながら話しましょ?」
やっと重い腰を上げて、カインを自宅二階に案内する。
「やっぱり…何なの?これ?」
二階の状態を見て、カインの渋い変な顔。それもそうだろうとは思う。二階は主寝室と子供達のための寝室が幾つか。それらの部屋に、本来一階にあったダイニングテーブルセットやら、ローチェスト、台所にあった食器棚から調理器具まで……それらの部屋という部屋に詰められていた。
「大水でも出る予報、あったっけ?」
ただ今この地方は絶賛乾季中、大雨どころかにわか雨の予報があったら大喜びされるくらいだ。
「うん、無いわね。」
「なのに、どうして家具を二階に上げちゃったのさ?これじゃあ姉さんが困るだろ?」
「ん?そんなに不便でも無いのよ?調理器具は小さい物なら下に運べるし、リビングにカーペットを敷いてあるから座るのには問題ないしね。」
「いや……いやいやいや…問題あるでしょ?こんな事してたら父さんも母さんも姉さんを家に連れ戻そうとするよ、きっと。」
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「だって、大水が出たら大変じゃない?せっかくの大切な家具が水浸しになっちゃうもの。」
「だから、今は乾季だってば…」
下からお湯の入ったケトルを持って上がってきたリンカを捕まえるカイン。
「分かった、もう何を聞いても驚かないから、何をしたいのか教えてよ、姉さん。」
いそいそと美味しそうなお茶を入れて、カインの前に自分もチョコンと座るリンカ。
「私ね、少し遠くに行こうと思って…」
また、何やら分からない事をニッコリと微笑みながら話し始める。
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