［完結］ひきこもり執事のオンオフスイッチ！あ、今それ押さないでくださいね！

61 シェインの姿は？2

　フラフラと揺蕩っている時、森であった入り口付近に、人、が倒れているのを発見した。

　人ならば、雪深い日にも森で活動していたのを見た事がある。この場に留まらず、動いて安全な所まで移動もできる。

　事切れた後、雪の中に半ば埋まってしまっていたこの者の姿を細部まで模してなんとか人となったシェイン。森を出て、人里を求め彷徨う内に彼らの方がシェインを見つけてくれた。


　この姿の者に縁ある者達の様で、必死にシェインと同じ姿の者を探していた様だった。

　が、当然シェインは彼らの事を知る由もなく、名をシェインという事以外、彼らの質問にも応えることなど出来なかった。

　村に連れ帰った人々は、遭難の恐怖と寒さの中で心を患ってしまったと甚く心配し、シェインという名で彼を受け入れて看病しつつ、人として生きて行く術を子供に教える様にシェインにも教えてくれたのである。

　シェインはすでに家族はおらず、職を得るために執事養成学校に通う予定であったため、読み書きできる様になるとそのまま執事養成学校に入学して職を得る事となり、今に至る。


「まぁ、その、シェインと同じ姿の方は？」

「食糧難にもなった森ですから、獣の糧となるか、大地に帰って草木の糧となったと思います…」

「まぁ。」

　彼が居てくれなかったら、シェインは今は此処に居ないだろう。犠牲となったのは心苦しいが、森ではその犠牲も無駄にはならない。


「人知れず、可哀想に……」

「フランカ様、今は新たな森の一部となって私達の眷属と共にいる事が出来ますよ。」

　ニコリ、とフランカにシェインは笑いかける。

「ふふ。では寂しくはないかしら？貴方のお仲間が沢山周りに居てくださるんですもの……私にも精霊が見えたら良かったのに…そうしたらもっと森や自然が輝いて見えたでしょうね。」　

「彼らは何処にでも居ますよ？草木や動物、眩しく感じる日の光の中に、冷たい水や、気持ちの良い風の中に…」

「そう考えると素敵ね。先日のピクニックで小鳥が食べに来た実がなっている木があったでしょう？小鳥や小さな動物が見たくて、我が家の庭に植えさせたのです。」

　実は自然を探索するのが殊更好きなフランカ。貴族令嬢という肩書で一人で散策になど行けるわけもなく、大地の神殿参りの時をそれはそれは楽しみにしていたのだ。


「精霊が見たいと言うのなら目の前のシェインがその通りの精霊だろう？」

　目を閉じて聞いていたガラット王子が静かに告げた。


「そうですわね、殿下。先程はとても神秘的で幻想的で、益々自然が好きになりましたわ。」

　本当の姿を少しだか、見せる事にシェインの躊躇もあったのだが、ありがたい事にフランカは恐れよりも憧れと好意を表してくれる。


「殿下、婚約関係は解消されますけれど、幼馴染みの一人として、また離宮に遊びに行かせてくださいませね。シェインともっとお話したいんですの。」


　綿毛の様なフワリとした綺麗な笑顔で微笑まれても好きにしろ、との素っ気無い態度の旦那様だが、フランカ様の訪問宣言を拒否も否定もされなかった。