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55 奥の間で

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 部屋の中央、テーブルに沿う様に立たれているのはコラルト国の国王、その隣に寄り添う様に立たれて居るのが王妃だろう。

 
 シェインは初めてこの二人の顔を見たが、綺麗に整えられている金の髪に、やはり瞳は琥珀色。ガラット王子は王妃に面影がよく似ていた。

 二人の瞳は懐かしむ様に、感慨深げに、慈しむ様な色があった。シェインが森の小さな者達に向けるものとよく似ている。


 あぁ、人間の親もこの様に慈しむんだ。私が森の皆を愛する様に旦那様の事を…


「久しいな、コラルト王。息災か?」


 えぇぇぇぇぇ~~~~~~!!!


 い、今は感動の親子再会なのでは?王妃殿下は本当にお優しい目で旦那様を見つめておられますよ?

 旦那様のこの一言に、国王両陛下は腰を折って礼を取った。隣ではフランカ様まで……


 ひぇぇぇぇぇぇぇ……な、なんで?国王は王子よりも上の立場では?


「お久しぶりに御座います。暁の君…有り難くも恙無く日々を過ごしております。」


 あ…!………暁の君……レーン様の呼び名…
 そうか、この方達は知っておられるんだ。自分だけの秘密かと思ってたけれど…王子様の姿を借りて居るんですものね。


「そうか。」

「本日は、此方に伝えたいことがあると?」


 ドキドキ、ここに居ても良いのか分からず、シェインはただ身を縮ませて成り行きを見守るしか無い。


「我、ガラットはここに居るフランカとの婚約を正式に反故にする事を其方らに求める。」


 キャァァァァァァァァ……!?

 旦那様!!なんって事を?フランカ様は!フランカ様のお気持ちは?!プライドは?どうでも良いということですか?!

 つい、口から叫び出してしまいそうになったところをグッと堪えた。


「なんと、身分も容姿も十分すぎるほど揃って居る娘ですが、お気に召しませんでしたか?」


「人間である、これだけでも私には合わぬ…」

 スッと旦那様の目が細められた。フランカ様は既に旦那様の横から数歩下がって控えておられる。


「ガラット…他に思う方がいるのですか?」
 
 黙って聞いていらした王妃殿下が静かに問い掛ける。  


「シェイン、此方へ。」

 ほゎっ!な、ぜ今呼ばれました?嫌な汗が背筋を伝っておりますが……


「その者は?」


 国王様の顔にも怪訝そうな色が浮かんでいるし、それはそうですよね?私は完全な部外者ですから…しかし、主人に呼ばれれば従わない訳には行かず……

 一瞬躊躇はしましたが、覚悟を決めて旦那様の元に進み出て国王夫妻に深く礼を取った。


「私が共に生きたいと思った者は、この者だ。」

 私が礼の頭を上げる前に、心地良く通る低い声で旦那様ははっきりと宣言された。

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