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84 魔法石
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報告書と魔法石。これでこの赤い魔法石を目にするのは3度目だ。
以前は強制的に魔力を馬へ注入し馬を魔物化した。けれどこれが本当なら魔力など要らず魔物を作ることになる。
ただの草原の一部に円状に簡易結界を貼る。その中に送られてきた赤い魔法石を無造作に投げ入れれば後は待つだけだ。報告書通りだとこれに術の何たるかは必要ない。
ジッと見ていればボヤッと魔法石の輪郭が揺らぐ。赤い霧の様なものがフワッと地に沿って揺蕩って行く。
地から出た魔力は地に帰る、という事なのだろうか?
結界内で揺蕩う霧に触れていた草の一部が勢いを増す。
草の魔物化だ。成長の勢いだけが増した物で、凶暴化はしていない。
なるほど、これならばどこでも自然に魔物を増やす事が出来るはずだ。この魔法石を外に転がしておくだけで良いのだから。
赤い魔法石、シエラにとって良い思い出は無い。これ一つ取る為に、一体幾つの命が犠牲になっていることか…
今も尚昔見た光景がまだ目の前にある様で目を瞑る。
幾人もの屍の上でクルクルと回り形作られていた魔法石。自然の物でないことは今までにそこに何も無かったことで明らかだ。形が定まり赤く染まっていく。どの様な術か分からないが屍の中から抽出された魔力の塊と言うことだけは分かる。魔力持ちならば自身の体の一部でもある。何をどうしたってこの様なこと許容できるものではない。見ているだけの自分が不甲斐無く、力及ばず唇を噛んで耐えるしか無かった。
かつての自分は力無く何をする事も出来ず、ただ逃げ帰って来るだけだった。だから、作ったのだ。彼らに対抗できる様に、犠牲をこれ以上増やさない様に…
トランジェス…懐かしい…懐かしい名前をシエラはポツリと呟く。名を呼ぶだけで姿形も目で見る事ができたら良いのに。何度も思い描いては消えていく輪郭にそろそろ思い出も薄れていきそうで薄情な自分がおかしくなる。
許された命ある限り共に作り上げていけると思っていたのに定めとはなんとも抗い難いものだ。
「シエラ、それは?」
自分を呼ぶその声がトランジェスならどれだけ良いかと心によぎる思いそのものに失笑し、初代国王の面影が何とか残るルーシウスに向き直る。
「西部拠点から送られてきた魔法石よ。もう殆ど魔力は無いわね。時期に消滅するわ。」
「良いのか?証拠だろう?」
結界の中、ワサワサ揺れ育つ草をジッと見る。赤い魔法石は徐々に小さくなって行く。
「大丈夫。これで一つ謎が解けたもの。」
何故、魔物が増えたのか、何故魔力持ちが狙われるのか。
「ゴアラの手の者が持っていた事は事実。証言も得ているでしょう?」
「その様だな。」
ルーシウスの目線もきつい。ボッと魔物化した草達が燃えて消えて行く。
「泉の件で核心がわかれば良いんだけど…」
「サザーニャ殿は多くを語られなかったそうだからな。」
チラチラと雪の結晶の様な魔力がルーシウスの手からこぼれ落ちてはスウッと消える。
多くを語らなかったと言えど、今まで国外に出た事はない様な情報までサザーニャは流したのだ。それだけカザンシャル側も今回にかけているものは大きいと見える。
「わたしが育てて来た暗部は優秀でしょう?今後が楽しみよね。」
クスクス笑ってルーシウスの反応を見ているシエラに向かってルーシウスはキュッと眉を顰める。
「だからって、何もあれを入れる事は無かっただろうに。」
未だに不満は残っているのか、完全に吹っ切れる事の方が無理そうではあるが。
「でも、それも無理なのよ、ルーシュ。私も無理だった。黙って見ていられる様なものじゃ無いのよ。」
今度はシエラが困り顔。何も出来ず見ているだけなんて2度と御免だ。
「それに、そんなに嫌ならちゃんと嫌って我儘を言えば良かったでしょう?我慢強いのも問題だわね。」
我儘か…成人している年上男性、それも国王である自分が我儘?
「あらやだわ。2人きりの時だったら何でもありじゃ無いの?男は少し甘えん坊さんの方が可愛らしいわよ?誰も見ていないんだもの。私だって覗かないから大丈夫よ?」
甘えん坊さんの国王等想像できん。それに、祖母であり母であり姉である様なシエラに見られているなど言語道断、絶対に嫌だ。
「あら、ここ一番の素直さじゃない?ルーシュはやれば出来る子ね。」
楽しくて堪らないと言う様にシエラはコロコロと笑いが止まらない。
ルーシウスはものすっごい嫌そうな顔で顔を顰めている。
燃やされた草の後に魔法石はもう見えない。
「西側に魔物の出現が多いなら彼方もキエリヤ越えでしょうね。此方も集中的に探索を増やそうかしら?またまたこんなのが釣れるかもしれないし?」
「そうだな。」
嫌そうな顔のまま心ここに有らずのルーシウス。本当は自分も一緒に行きたいんだろうにこんな時まで本音を言わない頑固な愛し子である。
「大丈夫よ。サタヤ村の教育はそれは厳しいから。生きるか死ぬかの中にいたんだもの生き残る術にあの子は長けているわ。何なら近衛と同じ位の経験は積んでいると思うわよ?戦闘に向かない私だって村を出てここまで一人で来れたのよ?」
ポンッとルーシウスの肩を叩く。
「剣を抜いて戦うより、命懸けで魔力を出すより、出したい手を引く事の方が腹の底に来るとは知らなかったよ。」
月夜の明かりが照らす中、ルーシウスの本音が一つポロリと落ちる。それを笑い飛ばすでも無くシエラはただ幼子をあやす様に背を撫でるのだった。
以前は強制的に魔力を馬へ注入し馬を魔物化した。けれどこれが本当なら魔力など要らず魔物を作ることになる。
ただの草原の一部に円状に簡易結界を貼る。その中に送られてきた赤い魔法石を無造作に投げ入れれば後は待つだけだ。報告書通りだとこれに術の何たるかは必要ない。
ジッと見ていればボヤッと魔法石の輪郭が揺らぐ。赤い霧の様なものがフワッと地に沿って揺蕩って行く。
地から出た魔力は地に帰る、という事なのだろうか?
結界内で揺蕩う霧に触れていた草の一部が勢いを増す。
草の魔物化だ。成長の勢いだけが増した物で、凶暴化はしていない。
なるほど、これならばどこでも自然に魔物を増やす事が出来るはずだ。この魔法石を外に転がしておくだけで良いのだから。
赤い魔法石、シエラにとって良い思い出は無い。これ一つ取る為に、一体幾つの命が犠牲になっていることか…
今も尚昔見た光景がまだ目の前にある様で目を瞑る。
幾人もの屍の上でクルクルと回り形作られていた魔法石。自然の物でないことは今までにそこに何も無かったことで明らかだ。形が定まり赤く染まっていく。どの様な術か分からないが屍の中から抽出された魔力の塊と言うことだけは分かる。魔力持ちならば自身の体の一部でもある。何をどうしたってこの様なこと許容できるものではない。見ているだけの自分が不甲斐無く、力及ばず唇を噛んで耐えるしか無かった。
かつての自分は力無く何をする事も出来ず、ただ逃げ帰って来るだけだった。だから、作ったのだ。彼らに対抗できる様に、犠牲をこれ以上増やさない様に…
トランジェス…懐かしい…懐かしい名前をシエラはポツリと呟く。名を呼ぶだけで姿形も目で見る事ができたら良いのに。何度も思い描いては消えていく輪郭にそろそろ思い出も薄れていきそうで薄情な自分がおかしくなる。
許された命ある限り共に作り上げていけると思っていたのに定めとはなんとも抗い難いものだ。
「シエラ、それは?」
自分を呼ぶその声がトランジェスならどれだけ良いかと心によぎる思いそのものに失笑し、初代国王の面影が何とか残るルーシウスに向き直る。
「西部拠点から送られてきた魔法石よ。もう殆ど魔力は無いわね。時期に消滅するわ。」
「良いのか?証拠だろう?」
結界の中、ワサワサ揺れ育つ草をジッと見る。赤い魔法石は徐々に小さくなって行く。
「大丈夫。これで一つ謎が解けたもの。」
何故、魔物が増えたのか、何故魔力持ちが狙われるのか。
「ゴアラの手の者が持っていた事は事実。証言も得ているでしょう?」
「その様だな。」
ルーシウスの目線もきつい。ボッと魔物化した草達が燃えて消えて行く。
「泉の件で核心がわかれば良いんだけど…」
「サザーニャ殿は多くを語られなかったそうだからな。」
チラチラと雪の結晶の様な魔力がルーシウスの手からこぼれ落ちてはスウッと消える。
多くを語らなかったと言えど、今まで国外に出た事はない様な情報までサザーニャは流したのだ。それだけカザンシャル側も今回にかけているものは大きいと見える。
「わたしが育てて来た暗部は優秀でしょう?今後が楽しみよね。」
クスクス笑ってルーシウスの反応を見ているシエラに向かってルーシウスはキュッと眉を顰める。
「だからって、何もあれを入れる事は無かっただろうに。」
未だに不満は残っているのか、完全に吹っ切れる事の方が無理そうではあるが。
「でも、それも無理なのよ、ルーシュ。私も無理だった。黙って見ていられる様なものじゃ無いのよ。」
今度はシエラが困り顔。何も出来ず見ているだけなんて2度と御免だ。
「それに、そんなに嫌ならちゃんと嫌って我儘を言えば良かったでしょう?我慢強いのも問題だわね。」
我儘か…成人している年上男性、それも国王である自分が我儘?
「あらやだわ。2人きりの時だったら何でもありじゃ無いの?男は少し甘えん坊さんの方が可愛らしいわよ?誰も見ていないんだもの。私だって覗かないから大丈夫よ?」
甘えん坊さんの国王等想像できん。それに、祖母であり母であり姉である様なシエラに見られているなど言語道断、絶対に嫌だ。
「あら、ここ一番の素直さじゃない?ルーシュはやれば出来る子ね。」
楽しくて堪らないと言う様にシエラはコロコロと笑いが止まらない。
ルーシウスはものすっごい嫌そうな顔で顔を顰めている。
燃やされた草の後に魔法石はもう見えない。
「西側に魔物の出現が多いなら彼方もキエリヤ越えでしょうね。此方も集中的に探索を増やそうかしら?またまたこんなのが釣れるかもしれないし?」
「そうだな。」
嫌そうな顔のまま心ここに有らずのルーシウス。本当は自分も一緒に行きたいんだろうにこんな時まで本音を言わない頑固な愛し子である。
「大丈夫よ。サタヤ村の教育はそれは厳しいから。生きるか死ぬかの中にいたんだもの生き残る術にあの子は長けているわ。何なら近衛と同じ位の経験は積んでいると思うわよ?戦闘に向かない私だって村を出てここまで一人で来れたのよ?」
ポンッとルーシウスの肩を叩く。
「剣を抜いて戦うより、命懸けで魔力を出すより、出したい手を引く事の方が腹の底に来るとは知らなかったよ。」
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