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59 久方の逢瀬
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数日強行で城へと急ぐ。捕虜は生きて居れば良しとして縛られたまま城へ着くと、ガイに引きずられ地下に消えて行った。
バート、ソウはシエラの元へ赤い石を持って行く。
「貴方達これをどこで?」
シエラの声がこれまでに無く低くなる。
「ガンダスラー領の結界境界付近の村の男が持っていた物です。村人かと思ってましたが、違った様ですね。」
「バート、帰ったばかりで悪いけど暗部をもう一人連れて人払い後、フル装備で鍛錬場へ。ソウ貴方は自室へ帰っておいて。」
"ソウ"には自室は無い。遠征以外の時には許可を取って庭番小屋で休ませてもらっていた。侍女達が心配しているという事で時折"サウラ"の部屋に顔を出していたが、いつも長居はしていない。今回は部屋で待機?
「あの、部屋で待機ですか?」
「違うわ任務は一時お休み。休憩よ。気が張り詰めてるでしょう?息抜きしていらっしゃいな。それに湯あみもしてきなさいな。貴方、何か匂うわよ?」
掛けられた薬品臭がまだ残ってる様だ。スンスン嗅ぎながら了解する。
「フル装備、ですか?」
バートが怪訝そうに聞く。
「ええ、一様フルでね。準備でき次第行くわよ。」
話す内容は決して穏やかでは無いが、シエラの笑みは華やかなものだった。
「フゥ。」
入浴後の一時、スザンナの入れてくれたお茶を飲み久しぶりに何もやる事はない自室?で寛ぐ。
やはり薬品臭は酷かった様だ。ソウの姿にも慣れ驚きもしないばかりか、テンションを異様に上げる様になったスザンナが見事に眉を顰めた。
有無を言わさず浴室へ連行され抗議の声虚しく衣類を剥がされる。ソウの姿であっても我関せず、あれよこれよという間に泡風呂にされ、香料を入れられてガッシガッシと磨かれて行く。
ボロボロになっていた衣類の替わりに、女性用の着替えが用意されていた。
サウラに戻るのは何日ぶりか?
ソファーに座り休暇と言われても何をしようか考えてしまう。
あの赤い石はなんだったんだろう?考えようとしても疲れは誤魔化せないらしく、深く考える前に眠りに落ちた。
フワリ、身体が浮く。フワフワと体は揺れるが不安なく落ち着いていられるのは何故だろう?
疲れはしっかり出ている様で、身体が移動していると分かっているのに目が開かない。
「久しぶりに会ったと思ったら、何故其方は寝台で休まない?あそこでは冷えるだろう?」
ガバッ
聞いたことのある、低い声。目を開けるよりも先にこの頃鍛えられてきた身体も反応する。目を開ければ、寝台に寝かされる途中のサウラはルーシウスと目が合う。
間近でエメラルドグリーンの瞳を見れば更に大きくサウラの黒瞳が開かれる。こんなに間近でルーシウスを見たのはあの日以来だ。
少し身構えてしまうが、ルーシウスに苦しそうな所が一つもなくて逆にホッとしてしまう。
ルーシウスを見た瞬間、あの恐ろしい光景がまた目の前に広がって、自分自身がルーシウスを苦しめる存在だと責められるのでは無いかととても怖かったのだ。
タンチラードからの帰路もルーシウスを極力見ない様に会わない様に努めてきたのもその為。幻であったとしても、もう2度と苦しめたくは無いと思ったから。
「久しいな、サウラ。髪がまだ湿っている。スザンナがしっかり乾かさなかったのか?」
王族付きの侍女に抜擢されたのだ。その仕事に関しては信用に足るものであったはずなのだが?訝しげにサウラの髪を弄びながら、ルーシウスは風魔法を使う。
「私が、このままで良いと言ったのです…魔法を使ってはいけない!」
ただ髪を乾かそうと少しの魔力を使った所で、鬼気迫るサウラに両手で腕を掴まれ押し止められる。
顔色を変えたサウラを見てルーシウスは嬉しそうに笑いかけた。
「やはりあの時サウラは何か見たのか?シエラに聞いてもはぐらかされるばかりで話が進まん。」
全く不服と、眉を寄せる。
何を見たかと言われても、サウラは答える言葉を持っていない。益々サウラの表情が険しいものになりそうな気配を察して、ルーシウスは両腕にサウラを抱え込み、ゴロンと寝台の上に寝転んだ。
ルーシウスの香り?と石鹸の香り。
入浴した後だからだろうか?ルーシウスの身体もポカポカしていて暖かい。
寝転んだまま、頭をポンポンと撫でられ続けて居ればあの時の恐怖も少しは落ち着いてきた。髪を弄びながらルーシウスは続ける。
「すまんな。サウラを困らせるためにここに来たんじゃない。避けられていたことは分かっていたしな。実はシエラからもしつこく尋ねるなと念を押された位だ。
だが、お前が嫌がってても俺が会いたかったんだ。だから、許せ。頼むから泣いてくれるなよ?」
ああ、自分は嫌じゃなかったんだ。
ルーシウスに会うのは嫌じゃない。逆に大丈夫そうな姿を見て安心する。
「話をしたいのだが聞いてはいけない事はあるか?」
結界石の間の事以外は、サウラが答えたくない事などない。
「結界を張り直す時のこと以外なら…」
サウラの周りで起こった事ほぼ全てが報告に上がっているのだが、サウラの気持ちを聞きながらだとどうしてこんなにも心が躍るのか?
魔法石で男に変化した時の感想だけはそれは珍妙な心境であったのだけれど、サウラがそのまま寝入って仕舞うまでルーシウスは文字通りサウラの側を離れなかった。
バート、ソウはシエラの元へ赤い石を持って行く。
「貴方達これをどこで?」
シエラの声がこれまでに無く低くなる。
「ガンダスラー領の結界境界付近の村の男が持っていた物です。村人かと思ってましたが、違った様ですね。」
「バート、帰ったばかりで悪いけど暗部をもう一人連れて人払い後、フル装備で鍛錬場へ。ソウ貴方は自室へ帰っておいて。」
"ソウ"には自室は無い。遠征以外の時には許可を取って庭番小屋で休ませてもらっていた。侍女達が心配しているという事で時折"サウラ"の部屋に顔を出していたが、いつも長居はしていない。今回は部屋で待機?
「あの、部屋で待機ですか?」
「違うわ任務は一時お休み。休憩よ。気が張り詰めてるでしょう?息抜きしていらっしゃいな。それに湯あみもしてきなさいな。貴方、何か匂うわよ?」
掛けられた薬品臭がまだ残ってる様だ。スンスン嗅ぎながら了解する。
「フル装備、ですか?」
バートが怪訝そうに聞く。
「ええ、一様フルでね。準備でき次第行くわよ。」
話す内容は決して穏やかでは無いが、シエラの笑みは華やかなものだった。
「フゥ。」
入浴後の一時、スザンナの入れてくれたお茶を飲み久しぶりに何もやる事はない自室?で寛ぐ。
やはり薬品臭は酷かった様だ。ソウの姿にも慣れ驚きもしないばかりか、テンションを異様に上げる様になったスザンナが見事に眉を顰めた。
有無を言わさず浴室へ連行され抗議の声虚しく衣類を剥がされる。ソウの姿であっても我関せず、あれよこれよという間に泡風呂にされ、香料を入れられてガッシガッシと磨かれて行く。
ボロボロになっていた衣類の替わりに、女性用の着替えが用意されていた。
サウラに戻るのは何日ぶりか?
ソファーに座り休暇と言われても何をしようか考えてしまう。
あの赤い石はなんだったんだろう?考えようとしても疲れは誤魔化せないらしく、深く考える前に眠りに落ちた。
フワリ、身体が浮く。フワフワと体は揺れるが不安なく落ち着いていられるのは何故だろう?
疲れはしっかり出ている様で、身体が移動していると分かっているのに目が開かない。
「久しぶりに会ったと思ったら、何故其方は寝台で休まない?あそこでは冷えるだろう?」
ガバッ
聞いたことのある、低い声。目を開けるよりも先にこの頃鍛えられてきた身体も反応する。目を開ければ、寝台に寝かされる途中のサウラはルーシウスと目が合う。
間近でエメラルドグリーンの瞳を見れば更に大きくサウラの黒瞳が開かれる。こんなに間近でルーシウスを見たのはあの日以来だ。
少し身構えてしまうが、ルーシウスに苦しそうな所が一つもなくて逆にホッとしてしまう。
ルーシウスを見た瞬間、あの恐ろしい光景がまた目の前に広がって、自分自身がルーシウスを苦しめる存在だと責められるのでは無いかととても怖かったのだ。
タンチラードからの帰路もルーシウスを極力見ない様に会わない様に努めてきたのもその為。幻であったとしても、もう2度と苦しめたくは無いと思ったから。
「久しいな、サウラ。髪がまだ湿っている。スザンナがしっかり乾かさなかったのか?」
王族付きの侍女に抜擢されたのだ。その仕事に関しては信用に足るものであったはずなのだが?訝しげにサウラの髪を弄びながら、ルーシウスは風魔法を使う。
「私が、このままで良いと言ったのです…魔法を使ってはいけない!」
ただ髪を乾かそうと少しの魔力を使った所で、鬼気迫るサウラに両手で腕を掴まれ押し止められる。
顔色を変えたサウラを見てルーシウスは嬉しそうに笑いかけた。
「やはりあの時サウラは何か見たのか?シエラに聞いてもはぐらかされるばかりで話が進まん。」
全く不服と、眉を寄せる。
何を見たかと言われても、サウラは答える言葉を持っていない。益々サウラの表情が険しいものになりそうな気配を察して、ルーシウスは両腕にサウラを抱え込み、ゴロンと寝台の上に寝転んだ。
ルーシウスの香り?と石鹸の香り。
入浴した後だからだろうか?ルーシウスの身体もポカポカしていて暖かい。
寝転んだまま、頭をポンポンと撫でられ続けて居ればあの時の恐怖も少しは落ち着いてきた。髪を弄びながらルーシウスは続ける。
「すまんな。サウラを困らせるためにここに来たんじゃない。避けられていたことは分かっていたしな。実はシエラからもしつこく尋ねるなと念を押された位だ。
だが、お前が嫌がってても俺が会いたかったんだ。だから、許せ。頼むから泣いてくれるなよ?」
ああ、自分は嫌じゃなかったんだ。
ルーシウスに会うのは嫌じゃない。逆に大丈夫そうな姿を見て安心する。
「話をしたいのだが聞いてはいけない事はあるか?」
結界石の間の事以外は、サウラが答えたくない事などない。
「結界を張り直す時のこと以外なら…」
サウラの周りで起こった事ほぼ全てが報告に上がっているのだが、サウラの気持ちを聞きながらだとどうしてこんなにも心が躍るのか?
魔法石で男に変化した時の感想だけはそれは珍妙な心境であったのだけれど、サウラがそのまま寝入って仕舞うまでルーシウスは文字通りサウラの側を離れなかった。
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