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35 再会 4
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「夜風にあたりたいとおっしゃられまして…旦那様の許可の元、こちらにお連れしたのです。」
若い騎士はクリスに近付きながらここにライザがいる理由を話す。
「お疲れ様です……」
「いえ、クリス殿はどうされました?」
「……少し、頭を冷やそうかと思って……」
「あぁ!酔い覚ましですか?良いですね、こんなに月が美しい晩はそれは酒が美味いでしょう?」
「クリスはそんなに飲まないわ…エドガー、しばらく席を外してもらっても良い?」
少し、俯き加減だったライザが顔を上げる。
「は?お二人だけでですか?……それは………」
「大丈夫…何も無いわ。私達、同郷なのよ。」
「あ、では、顔馴染みで?」
「ええ。積もる話もあるから…」
「…では、少しだけ距離をとります。お二人のお姿が見える所でですよ?」
「それで構わないわ。」
エドガーと呼ばれた若い騎士はライザの要望通りに数名の騎士と共に二人と距離を取った。
「……久しぶりね…?」
「………」
「まさか、この国で貴方に会うなんて思わなかったわ…」
ふっと軽く息を吐いたライザからは、何かを吹っ切った様な印象を受ける。
「………何か、聞く事はある?」
聞きたい事?それならば幾つでも……今まさにクリスの頭を巡っている。
どうして……………
「ちょっと!緊張するとダンマリになる癖、変わってないのね?ま、そんなに時間が経ったわけでも無いし、変わらないか…けど、レディを目の前にしてお世辞の一つも言えないんじゃ、貴族の端くれとは言えないんじゃなくて、クリス?」
「なんで………」
「なんで…?」
「……ここに、ライザがいるの?」
先程、サージ騎士団長から理由を聞いただろうが、クリスはそう問わずにはいられなかった。
「…これが私の仕事で、約束したから。」
「俺はそんな約束知らない…!」
「当たり前でしょ?クリスとした約束じゃ無いもの。何を言っているの?これは、私の仕事だって言ったじゃない…!」
「ライザはまだブランカにいるのだと思って…」
「私はここにいるわ…クリス。自分の意志でね。誰かにやらされているのでも無いの。自分で決めてここにいる。」
「………」
「で?貴方は?新しく雇った傭兵がまさかタロス団だとは思わなかったけど。その通りならクリス、貴方カーリーと一緒になったのでしょう?」
「………なってない……けど、タロス団には置いてもらってる……」
「ふ~~ん…あの子の事だから、これ幸いに畳み掛けると思ったのに…違うんだ………」
「なんだよ…?それ…」
「何でもないわ。クリスには関係ない事!さ、もう行くわ…あまり夜ふかしをしていると侍女達が煩いのよ。エドガー!」
「……父さんに…何を頼まれたんだよ!?」
若い騎士に呼びかけるライザにクリスは構わず問いかける。
「お嬢様。もうお済みですか?」
「……えぇ、もう良いわ。遅くなるとみんな煩いし、もう帰りましょう?」
「ライザ!!父さんに頼まれたものって何!?」
「あ、こいつ!!」
ライザに近付こうとするクリスをエドガー以外の騎士が止めに掛かった。
「お止めなさい。この人、今は傭兵なんてしているけれど、歴とした貴族の子息よ?スクラテール侯爵の孫にあたるわ。」
「な、侯爵閣下の?」
「!?」
気色ばんでいた騎士達が一斉に居住まいを正した。
スクラテール……勿論クリスは初めて聞く名前である。
若い騎士はクリスに近付きながらここにライザがいる理由を話す。
「お疲れ様です……」
「いえ、クリス殿はどうされました?」
「……少し、頭を冷やそうかと思って……」
「あぁ!酔い覚ましですか?良いですね、こんなに月が美しい晩はそれは酒が美味いでしょう?」
「クリスはそんなに飲まないわ…エドガー、しばらく席を外してもらっても良い?」
少し、俯き加減だったライザが顔を上げる。
「は?お二人だけでですか?……それは………」
「大丈夫…何も無いわ。私達、同郷なのよ。」
「あ、では、顔馴染みで?」
「ええ。積もる話もあるから…」
「…では、少しだけ距離をとります。お二人のお姿が見える所でですよ?」
「それで構わないわ。」
エドガーと呼ばれた若い騎士はライザの要望通りに数名の騎士と共に二人と距離を取った。
「……久しぶりね…?」
「………」
「まさか、この国で貴方に会うなんて思わなかったわ…」
ふっと軽く息を吐いたライザからは、何かを吹っ切った様な印象を受ける。
「………何か、聞く事はある?」
聞きたい事?それならば幾つでも……今まさにクリスの頭を巡っている。
どうして……………
「ちょっと!緊張するとダンマリになる癖、変わってないのね?ま、そんなに時間が経ったわけでも無いし、変わらないか…けど、レディを目の前にしてお世辞の一つも言えないんじゃ、貴族の端くれとは言えないんじゃなくて、クリス?」
「なんで………」
「なんで…?」
「……ここに、ライザがいるの?」
先程、サージ騎士団長から理由を聞いただろうが、クリスはそう問わずにはいられなかった。
「…これが私の仕事で、約束したから。」
「俺はそんな約束知らない…!」
「当たり前でしょ?クリスとした約束じゃ無いもの。何を言っているの?これは、私の仕事だって言ったじゃない…!」
「ライザはまだブランカにいるのだと思って…」
「私はここにいるわ…クリス。自分の意志でね。誰かにやらされているのでも無いの。自分で決めてここにいる。」
「………」
「で?貴方は?新しく雇った傭兵がまさかタロス団だとは思わなかったけど。その通りならクリス、貴方カーリーと一緒になったのでしょう?」
「………なってない……けど、タロス団には置いてもらってる……」
「ふ~~ん…あの子の事だから、これ幸いに畳み掛けると思ったのに…違うんだ………」
「なんだよ…?それ…」
「何でもないわ。クリスには関係ない事!さ、もう行くわ…あまり夜ふかしをしていると侍女達が煩いのよ。エドガー!」
「……父さんに…何を頼まれたんだよ!?」
若い騎士に呼びかけるライザにクリスは構わず問いかける。
「お嬢様。もうお済みですか?」
「……えぇ、もう良いわ。遅くなるとみんな煩いし、もう帰りましょう?」
「ライザ!!父さんに頼まれたものって何!?」
「あ、こいつ!!」
ライザに近付こうとするクリスをエドガー以外の騎士が止めに掛かった。
「お止めなさい。この人、今は傭兵なんてしているけれど、歴とした貴族の子息よ?スクラテール侯爵の孫にあたるわ。」
「な、侯爵閣下の?」
「!?」
気色ばんでいた騎士達が一斉に居住まいを正した。
スクラテール……勿論クリスは初めて聞く名前である。
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