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37.番の香り4 *
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甘い唇に、ジワジワと侵食されていく様な互いの体温…吐息の全てまで溶け合ってしまえるのならきっとこの世の全てを差し出しても惜しくは無い………
「んっ……リリー?」
いつもと違う性急なキスを受けてグレイルは戸惑う。ここ数日リリーは落ち着きが無い。と言うより強引に自分を抑え込もうとしている様にしか見えない時がある。日中はいいのだ。各自割り当てられた仕事があるため王都に帰還する為に精を出す。が、夜半になるとどうにも押さえられない様なリリーにグレイルが襲われている。
「貴方らしく無い……発情期に間に合う様にしていたつもりなんですが……」
Ωが発情期以外に発情の兆候を示すのは発情を促す薬を盛られた時か相性が良いαと近距離で接してしまいそのαのフェロモンの香りを嗅いだ時又は自分の番となるものと出会った時…そして今このリリーの行動は果たしてこれのうちどれなのか…
「良いから!鎮めて!!」
王都に帰るにはまた先だ。Ωの売買ルートをならず者共の頭から聞き出さなくてはならないし、他の店についても一度調査するべきだろう。
「ん……っ」
こんな環境の中でグレイルはできればリリーに触れたくは無い。白の館にいるΩに崇拝されているリリーはグレイルの番ランカンにも慕われている。と言ってもランカンはリリーよりもかなり年上になる。自分の子供を持つよりも他のΩの事を自分の弟妹や子供の様に可愛がり勉強を教えている様な学者肌の珍しいΩだ。ランカンは常日頃からリリーを心配する者のうちの一人でもあった。ここは環境自体余り良いとは言えないところだ。ただでさえ花街と言うのでαも多い。
「リリー声を抑えて下さい……」
熱に浮かされれば理性は簡単に飛んでしまう…グレイルの片手はリリーの口を塞ぎ、片手は濡れてヒクついている後ろをさぐる。
「うぁ…んぅ…あぅ…」
どうしても刺激を求めてしまうリリーから上がる声は止まらない。
「すみません。後でお叱りは受けますから…」
グレイルはリリーの上着の袖を破り丸めて苦しくない程度にリリーの口に詰める。そして一気に部屋の奥、ベッドがある所まで抱き上げていく。後はひたすらにリリーが落ち着くまでリリーを煽り昂らせる。
「んぅ~ぅっ…!んん!」
身体が反応しているのに声を出せないもどかしさに首を振りながらリリーは悶える。絶えず与えられる刺激をさらに追い求める様に下肢ををくすぐり続ける長い銀髪に縋り付くように指を絡めながら……
「………………卿…………」
リリーの休む部屋の中に今までに聞いた中で一番低いノルーの声が響く。その手には破かれたリリーのシャツと丸めて投げ捨ててあったシャツの袖が握られていた。
「…すまない……」
両手を上げて面目無さそうに項垂れるのは対魔法第2騎士団団長だ…
「まさか…ランカン殿にもこの様な…?」
何があったのかなんて仕えている年数が長ければ長いほど容易に想像がつくというもの…騎士団団長クラスの者達にはリリーの発情を抑えるという、プライベートな任務まで課せられているのだからそれを熟知している側として滅多な事で声を上げないノルーではあるのだ。しかし、いかんせん…目の前で大切な主人がなぶられる様な目にあったとしたら…これまた黙ってはいられないのである。
「まさか!!」
「でしょうね?ご自分の大切な番ですものね?」
「すまない…緊急だったのだ。リリーをぞんざいに扱おうとなんて思ってもいない。しかし、声を出させるわけには……」
「ええ…十分理解しておりますよ。あなた方がリリーの為にしてくださっていると…」
でもリリーはどうなのだろう…?自分の気持ちをほとんど言わないリリーは?耐えかねて致し方なくこの方法をとっているリリーからしたら、欲は満たされるかもしれないけれど……心が………
すぅ、はぁぁぁぁぁぁぁ…………
一つ大きく深呼吸してノルーはグレイルに向き直る。
「現況を見据えておられるバンシルー卿に同意いたしますので、此度のことは不問に致しましょう。」
「そうしていだだけると助かる。事後処理が残っているからな。」
「ですね。早く済ませて王都に帰りましょう。」
薄暗い宿屋の部屋の寝台からは静かな主人の寝息が聞こえてくる。そっと布団をかけ直したノルーに習ってグレイルも静かに部屋を後にした。
「んっ……リリー?」
いつもと違う性急なキスを受けてグレイルは戸惑う。ここ数日リリーは落ち着きが無い。と言うより強引に自分を抑え込もうとしている様にしか見えない時がある。日中はいいのだ。各自割り当てられた仕事があるため王都に帰還する為に精を出す。が、夜半になるとどうにも押さえられない様なリリーにグレイルが襲われている。
「貴方らしく無い……発情期に間に合う様にしていたつもりなんですが……」
Ωが発情期以外に発情の兆候を示すのは発情を促す薬を盛られた時か相性が良いαと近距離で接してしまいそのαのフェロモンの香りを嗅いだ時又は自分の番となるものと出会った時…そして今このリリーの行動は果たしてこれのうちどれなのか…
「良いから!鎮めて!!」
王都に帰るにはまた先だ。Ωの売買ルートをならず者共の頭から聞き出さなくてはならないし、他の店についても一度調査するべきだろう。
「ん……っ」
こんな環境の中でグレイルはできればリリーに触れたくは無い。白の館にいるΩに崇拝されているリリーはグレイルの番ランカンにも慕われている。と言ってもランカンはリリーよりもかなり年上になる。自分の子供を持つよりも他のΩの事を自分の弟妹や子供の様に可愛がり勉強を教えている様な学者肌の珍しいΩだ。ランカンは常日頃からリリーを心配する者のうちの一人でもあった。ここは環境自体余り良いとは言えないところだ。ただでさえ花街と言うのでαも多い。
「リリー声を抑えて下さい……」
熱に浮かされれば理性は簡単に飛んでしまう…グレイルの片手はリリーの口を塞ぎ、片手は濡れてヒクついている後ろをさぐる。
「うぁ…んぅ…あぅ…」
どうしても刺激を求めてしまうリリーから上がる声は止まらない。
「すみません。後でお叱りは受けますから…」
グレイルはリリーの上着の袖を破り丸めて苦しくない程度にリリーの口に詰める。そして一気に部屋の奥、ベッドがある所まで抱き上げていく。後はひたすらにリリーが落ち着くまでリリーを煽り昂らせる。
「んぅ~ぅっ…!んん!」
身体が反応しているのに声を出せないもどかしさに首を振りながらリリーは悶える。絶えず与えられる刺激をさらに追い求める様に下肢ををくすぐり続ける長い銀髪に縋り付くように指を絡めながら……
「………………卿…………」
リリーの休む部屋の中に今までに聞いた中で一番低いノルーの声が響く。その手には破かれたリリーのシャツと丸めて投げ捨ててあったシャツの袖が握られていた。
「…すまない……」
両手を上げて面目無さそうに項垂れるのは対魔法第2騎士団団長だ…
「まさか…ランカン殿にもこの様な…?」
何があったのかなんて仕えている年数が長ければ長いほど容易に想像がつくというもの…騎士団団長クラスの者達にはリリーの発情を抑えるという、プライベートな任務まで課せられているのだからそれを熟知している側として滅多な事で声を上げないノルーではあるのだ。しかし、いかんせん…目の前で大切な主人がなぶられる様な目にあったとしたら…これまた黙ってはいられないのである。
「まさか!!」
「でしょうね?ご自分の大切な番ですものね?」
「すまない…緊急だったのだ。リリーをぞんざいに扱おうとなんて思ってもいない。しかし、声を出させるわけには……」
「ええ…十分理解しておりますよ。あなた方がリリーの為にしてくださっていると…」
でもリリーはどうなのだろう…?自分の気持ちをほとんど言わないリリーは?耐えかねて致し方なくこの方法をとっているリリーからしたら、欲は満たされるかもしれないけれど……心が………
すぅ、はぁぁぁぁぁぁぁ…………
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「そうしていだだけると助かる。事後処理が残っているからな。」
「ですね。早く済ませて王都に帰りましょう。」
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