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21.潜入捜査2
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「では、リリーこの件は我ら第2で編成を組みます。」
花街にヤリスと共に潜入しているのはグレイルの部下である。合同任務でもない限り他の騎士団に助けを求める事はない。まずは自己の隊で編成を組むのだ。グレイル率いる対魔法第2騎士団は今季入団したアーキンを含む新米騎士3名を抱える事となっている。
「うん、私も出る…」
「……良いんですか?新人ももちろんの事連れて行きますよ?」
新人と言えども戦闘経験のある者達ばかりだ。他団員との意気を合わせる為に実戦での経験が何よりのものとグレイルは考えている。なので新人達を積極的に連れ立って任務に赴くのだ。
「構わんよ?いつもの事だろ?」
書類に落とされた紫金色の瞳に揺らぎはない。読み進めて行くうちに少し長めの瞳と同じ紫金色の髪が頬にかかり光を受けて深い色味の艶を出す。Ωなのに弱い所も無く凛とした趣はΩというよりも人の上に立つ者のそれを彷彿とさせるものだ。
「ええ私は行きますし、ノルーも居るでしょう。ならばいつもと変わりませんね?」
「そうだ。変わらない。」
スッと視線を上げてグレイルの濃紺の瞳を捉えた紫金色の色の中には揺らぎはなかった。
「リリー、御命令に従います。」
ΩであってΩではない。αの騎士達をも捻り上げて平伏させることができるのがリリーなのだ。ここにいる騎士達でまだ誰もこのΩから勝ちを得たことが無い。
αが守るべきΩに従っている。なんとも普通のαの面々からしたら理解できない事かも知れないが、実際リリーは強い。桁外れた魔力量から繰り出される魔法は、得て不得手など無いに等しいし毒も薬もその身体には効かない。そればかりかリリーが自在にαを手球に取れるとしたら?こんなにも稀有な存在は他にいないのだから…
「気を引き締めろ!!ここは見習い訓練所ではない!!」
筋骨逞しい騎士達が怒号と汗を飛ばしながら剣を合わせ体当たりし魔力を爆発させ合う。流石に百戦錬磨とも言われる騎士団本部の騎士達の訓練は気迫も技量も魔力量も皆それぞれ桁外れな者が多い。いつもの訓練時間が本気の戦闘に発展している様な緊張感と命の危機さえも感じる。ここでは新騎士と言えどまだ一新兵と同等だ。騎士団団員の本気の連携の前には至る所で新騎士達が転がされている。
「ぐぅっ…」
「てぇ…!」
「どうしたどうした!?お前らあそこを抜けて来たんだろ?やってる事は変わらないぞ?本気を出し切っていない者はとっとと出しな!!」
転がっている新騎士達を煽るが如く先輩騎士は手を抜かない。
「おら!どうした!!お前らに命を預けるんだ!いざって時にその様じゃ預けられるもんも預けられねぇぞ!!」
朝から日が落ちるまで、時には日が落ちてから闇夜の中で昼夜を問わず訓練は続く。そして通常の訓練と合わせてあの地獄のΩフェロモンを浴びる事にもなる。心底クタクタになっている所にΩのフェロモンに相対するには心底閉口する。しかしこれは他の先輩騎士達も同じ事なのだ。まだ上手くΩのフェロモンを遮断できない新騎士達はなんとか自制を保つ事はできても身体の反応まではまだ抑えられないでいる。しかし先輩騎士は慣れたものでΩのフェロンを浴びた所で何の変化を見せる事はなかった。それどころかそのままの状態で戦闘訓練までこなしている始末だ。
「嘘だろう…?」
ただでさえ集中していないとフェロモンに飲み込まれて行ってしまうのに更に真剣や魔法の応酬がまだこれから待っている……
「嘘なものか。時にはΩを庇いつつ応戦しなければならないんだ。まだ新入りに任せられる仕事では無いが自らのα性を抑えられる事が重要になってくる。俺達みたいな強靭な騎士に守ってもらえると思ったらΩだって安心するだろう?」
ある時こう語ってくれた先輩騎士がいる。どうしても番が欲しいのだそうで、その出会いの為に日々業務をこなしているのだそう。自分の番を守れる事は何よりの喜びだろうと今から胸を躍らせている。
「わからんでも無いよなぁ…何しろ、これからは現場でΩに接触するしなぁ…」
いつものΩフェロモン遮断訓練が終わったところで、グッタリしつつマルスは言う…
毎日の訓練に僅かな希望。αの騎士達は自分のΩを夢見て日々尽力している様なものだった。
これから第2騎士団が向かう北領はセロント領という。王都より北にあたり気温もそれなりに低い所だ。作物があまり育たない地域だからだろうか昔からこの地方は娼館が多いのも有名なのだ。近年、Ωの娼婦(夫)が多くいると評判が上がり国中の好色家に注目されている地域でもある。
その娼館の名前はラークの館と言う。美形揃いのΩを全面に押し出し客足を掴んでいるが、実際にΩの娼婦(夫)の届けではない。そして近年Ωフェロモンに似せた媚薬も開発されると言う偉業によりこのΩの存在にも疑問が出始めていた。本物を笠に着て違法に運営しているところなど水面化に腐るほどあるのだが、しかし本物のΩが届出なく搾取され続けている可能性があるのならばそれは防がなくてはならないのだ。
花街にヤリスと共に潜入しているのはグレイルの部下である。合同任務でもない限り他の騎士団に助けを求める事はない。まずは自己の隊で編成を組むのだ。グレイル率いる対魔法第2騎士団は今季入団したアーキンを含む新米騎士3名を抱える事となっている。
「うん、私も出る…」
「……良いんですか?新人ももちろんの事連れて行きますよ?」
新人と言えども戦闘経験のある者達ばかりだ。他団員との意気を合わせる為に実戦での経験が何よりのものとグレイルは考えている。なので新人達を積極的に連れ立って任務に赴くのだ。
「構わんよ?いつもの事だろ?」
書類に落とされた紫金色の瞳に揺らぎはない。読み進めて行くうちに少し長めの瞳と同じ紫金色の髪が頬にかかり光を受けて深い色味の艶を出す。Ωなのに弱い所も無く凛とした趣はΩというよりも人の上に立つ者のそれを彷彿とさせるものだ。
「ええ私は行きますし、ノルーも居るでしょう。ならばいつもと変わりませんね?」
「そうだ。変わらない。」
スッと視線を上げてグレイルの濃紺の瞳を捉えた紫金色の色の中には揺らぎはなかった。
「リリー、御命令に従います。」
ΩであってΩではない。αの騎士達をも捻り上げて平伏させることができるのがリリーなのだ。ここにいる騎士達でまだ誰もこのΩから勝ちを得たことが無い。
αが守るべきΩに従っている。なんとも普通のαの面々からしたら理解できない事かも知れないが、実際リリーは強い。桁外れた魔力量から繰り出される魔法は、得て不得手など無いに等しいし毒も薬もその身体には効かない。そればかりかリリーが自在にαを手球に取れるとしたら?こんなにも稀有な存在は他にいないのだから…
「気を引き締めろ!!ここは見習い訓練所ではない!!」
筋骨逞しい騎士達が怒号と汗を飛ばしながら剣を合わせ体当たりし魔力を爆発させ合う。流石に百戦錬磨とも言われる騎士団本部の騎士達の訓練は気迫も技量も魔力量も皆それぞれ桁外れな者が多い。いつもの訓練時間が本気の戦闘に発展している様な緊張感と命の危機さえも感じる。ここでは新騎士と言えどまだ一新兵と同等だ。騎士団団員の本気の連携の前には至る所で新騎士達が転がされている。
「ぐぅっ…」
「てぇ…!」
「どうしたどうした!?お前らあそこを抜けて来たんだろ?やってる事は変わらないぞ?本気を出し切っていない者はとっとと出しな!!」
転がっている新騎士達を煽るが如く先輩騎士は手を抜かない。
「おら!どうした!!お前らに命を預けるんだ!いざって時にその様じゃ預けられるもんも預けられねぇぞ!!」
朝から日が落ちるまで、時には日が落ちてから闇夜の中で昼夜を問わず訓練は続く。そして通常の訓練と合わせてあの地獄のΩフェロモンを浴びる事にもなる。心底クタクタになっている所にΩのフェロモンに相対するには心底閉口する。しかしこれは他の先輩騎士達も同じ事なのだ。まだ上手くΩのフェロモンを遮断できない新騎士達はなんとか自制を保つ事はできても身体の反応まではまだ抑えられないでいる。しかし先輩騎士は慣れたものでΩのフェロンを浴びた所で何の変化を見せる事はなかった。それどころかそのままの状態で戦闘訓練までこなしている始末だ。
「嘘だろう…?」
ただでさえ集中していないとフェロモンに飲み込まれて行ってしまうのに更に真剣や魔法の応酬がまだこれから待っている……
「嘘なものか。時にはΩを庇いつつ応戦しなければならないんだ。まだ新入りに任せられる仕事では無いが自らのα性を抑えられる事が重要になってくる。俺達みたいな強靭な騎士に守ってもらえると思ったらΩだって安心するだろう?」
ある時こう語ってくれた先輩騎士がいる。どうしても番が欲しいのだそうで、その出会いの為に日々業務をこなしているのだそう。自分の番を守れる事は何よりの喜びだろうと今から胸を躍らせている。
「わからんでも無いよなぁ…何しろ、これからは現場でΩに接触するしなぁ…」
いつものΩフェロモン遮断訓練が終わったところで、グッタリしつつマルスは言う…
毎日の訓練に僅かな希望。αの騎士達は自分のΩを夢見て日々尽力している様なものだった。
これから第2騎士団が向かう北領はセロント領という。王都より北にあたり気温もそれなりに低い所だ。作物があまり育たない地域だからだろうか昔からこの地方は娼館が多いのも有名なのだ。近年、Ωの娼婦(夫)が多くいると評判が上がり国中の好色家に注目されている地域でもある。
その娼館の名前はラークの館と言う。美形揃いのΩを全面に押し出し客足を掴んでいるが、実際にΩの娼婦(夫)の届けではない。そして近年Ωフェロモンに似せた媚薬も開発されると言う偉業によりこのΩの存在にも疑問が出始めていた。本物を笠に着て違法に運営しているところなど水面化に腐るほどあるのだが、しかし本物のΩが届出なく搾取され続けている可能性があるのならばそれは防がなくてはならないのだ。
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