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「熱は?」

「お医師はまだ?」

「早う!旦那様にもお知らせしないか!」

「あぁ……しっかりとして下さいませ!まだまだ貴方様に死なれては困ります!」

「水を!早く水を持って来なさい!」

「あぁあ……こんなことなら、早めに職場を変わっていれば…!」

「おい!今そんな事を言っている場合じゃないだろう!早く動け!」



 煩い………

 やたらと煩くて寝ていられない。

 今日は何か催し物でもあった?旧家ならではのもう要らないんじゃない、ていうほど人がよく集まる催しがある。

「ん~~~~~」

 こっちは疲れてるのよ、のアピールで少し唸って見てみるものの、ちっとも周囲は静かにならない。


「もう!煩いったらー!何時だと思ってるのよ!」

 人が寝ている時間帯に人の家で騒ぐなんて良識も作法も何もあったもんじゃない。

 ガバッと一気に布団を跳ね飛ばして起き上がった。

「……………」

「……………」

「……………」

 一瞬の間……顔を見合わせた全員が間違いなくみんな言葉を失った。

「………ここ、どこ…?」

 私はそう言うのが精一杯だ。

「きゃぁぁぁぁ!」

「おじょ、おじょ、お嬢様!」

「ル、ル、ル、ルー………」

「………………」

 阿鼻叫喚とはこのことだろうか。
 
 ここはどこかと聞きたいのはこっちなのに、ここにいる人達は誰一人として耳を貸そうとはせずに、まるで化物を見るみたいに慌てふためいて、あろうことかそのまま部屋から逃げ出して行った者さえいる。

「ちょ、ちょっと!あの!ここは、どこですか!?」

 これは収まりがつかない事態。思いっきり声を張り上げて慌てふためく人達を止めた。

「お、お嬢様…?」

「あの、お加減は?」

「加減?身体の具合ね?悪くはないわ。もっと寝ていたかったのにここ、騒々しいのだもの。」

「お医師を、お医師を呼んで参ります!」

 一人のお手伝いさん風情の若い子が走っていく。

「こ、ここは、カルンシス公爵家に御座います。お嬢様…覚えておいでですか?」

「カルン…なんですって?私が何を覚えているって?」

 年配のお手伝いさん(知らない顔なんだけど)から言われた言葉が理解できない。

 そんな横文字の名前?知らないし、覚えているかって言えばそりゃ記憶はある。さっきまで庭で草むしりを…………

 ガバッ!!!!

 ここまで来て、物凄い速さでベッドから降りた。

 自分の家の布団は敷布団でベッドじゃなかった。純和風の家で天蓋付きのベッドなんか無い。床も板の間と畳、洋間に敷いてある絨毯だってこんなに毛足が長く無い。
無意識にも、ここはどこだとさっきから自分自身が何度も言ってて……

 バン……………

 洋風の洒落た窓にへばりつき外を見て愕然とした。

「ここ……日本じゃ無い…………」








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