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39 消えた王子
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傷をつけるな、と言われていたにも関わらず、レギル王子の縛られた腕も足も緩められる事もなくそのまま夜を迎えた。
「くっ…」
体勢を変えるだけでもわずらわしい拘束だったが、エルグが座らせてくれたお陰で何とか壁側で寄り掛かる…
精霊魔法を使う事も考えてはいるが、魔法封じのアイテムが何であってどれ位の効力があるのか分からないうちは気安く手が出せないのも事実で……
「どうするか………」
フゥ……とため息を吐いた時に唐突に声がかかった。
「何?王子は売られていきたいの?」
「は?……ラン?」
絶対にこんな所には居ないだろうと、居てくれるなと思っていた者の声がするものだから物凄く驚いた…音もなく牢の入り口が開いているし………何でもない様に、フードを取ったリレランが牢の中に入って来ている。
「な………何で…?」
何を言おうとしたのか、聞きたかったのかレギル王子自信分からなかった事だろう…ただ、今呆然と牢の中にいるリレランを見つめている。
「で?売られたいの?」
可愛らしく小首を傾げて尋ねる内容が、全く可愛くはない。
「……ラン…売られたいと思う人間はいないと思うが…?」
「ふうん?そうなの…?」
おかしいな?とでもいいたそうなリレラン。
「だって人間の王子はちっとも嫌そうじゃないよね?恐怖も絶望も無いじゃない?」
だから、もしかしたら、と売られたいのか?と聞いたそうな。
「売られた先で何をされるのか知っているのか?」
こんな所まで、ノコノコとやって来てしまうとは…捕まえてくださいと言っている様なものと同じじゃ無いか。どうやって入った?
「繁殖用でしょ?」
「…………は?」
「え?違う?売られた先で交尾してるよね?人間はこんなに数がいるのはああ言う所で繁殖してるからでしょ?」
然も当然、とばかりにリレランの口から物凄い事が飛び出している。
「見た……のか?」
もしかして、リレランもそんな所に行ったのか?多分まだ男と言うより、少年の域だと思っていたのだが……………多分、売られているどの商品よりもリレランより美しい者は居ないだろうと確信もあるのだが……
レギル王子は自分が思ってもいなかったほどのショックを受けている自分にびっくりしている。
「見た?見なくても気配で感じるし…違うのか?」
なんとも分からん!と眉をしかめてリレランはパチンと指を鳴らす。
パラパラ…途端にレギル王子を拘束していた縄が解けて落ちた。
「つぅ……」
長時間の拘束のためにレギル王子の身体のあちこちが痛む。
「なんで縛られるままに?王子だったら解けるでしょ?」
「レギル………レギルだよ。リレラン…」
痛む手足を摩りながら、未だに名前さえ呼ばないリレランにレギルは根気よく名前を伝える。
「……ふ…何でレギルは縄を解かない?」
しょうがないと言う体でやっとリレランはレギル王子の名前を呼ぶ…
フワァ…名前を呼ばれるだけでこんなに嬉しい事があるなんて……意図せず、レギル王子の顔から笑みが溢れでてくる……
「まさか、人間って雄でも子を産むの?だからレギルは売られようとしてる?」
は……?嬉しい反面、リレランの突拍子無い思考についていけない。
「待てラン。何で私が売られたいと思っていると思うんだ?」
「だってされるがままに縛られたままだし……」
リレランにはどうしても不思議でならないらしい。本当だったらとっとと拘束を解いて牢の外にでもいるもんだとでも思ったのだろう。
「ここに、魔力封じが使われているらしい。だから魔力は使えなかっただけだ。」
レギル王子の魔力自体は大きくは無いからアイテムの力を凌駕して打ち破るのには無理があった。
「じゃあ、助けを呼ばなかったのは売られて、繁殖したいからでは無いんだな?」
だから、どうしてそうなるのかリレランの頭の中がレギル王子にとっては不思議なのだが、リレランが言うには気配を追ってみたらレギル王子は捕まったまま出てこようともしないし、自ら出ようともしていない様子が不思議だったし、嫌だった…
マリーがレギル王子を生かしているのに、人の手で勝手に連れて行かれ誰か分からない者たちのところへ放り込まれようとしている。それも行こうとしている先は交尾ばかりをしている繁殖場だ。
リレランは、レギル王子はレギル王子の人生をしっかりと全うすればいいと思っていた。だから、側から離れて干渉しない様にレギル王子からは目を離そうとしていたのに、またもやレギル王子自らリレランの目の前に飛び込んできたと思ったら、あっという間に攫われて行く先が繁殖場とは、なかなかにこれは腹の中が落ち着かない……だから、リレランはここまで来た。レギル王子が何のつもりか知りたかったから…
「ラン……誤解しているみたいなのだが……私は売られたいわけでは無い…ここは、私の魔力では破れないと思って大人しくしていただけだ。そして、売られるのは非常に不本意だが、行く先は繁殖場ではないんだ……」
人身売買の行き着く所、大抵がその様な行為をするところだとはレギル王子も理解はしている。
が、自分にそんな需要があるとは思ってもみなかったが……
「くっ…」
体勢を変えるだけでもわずらわしい拘束だったが、エルグが座らせてくれたお陰で何とか壁側で寄り掛かる…
精霊魔法を使う事も考えてはいるが、魔法封じのアイテムが何であってどれ位の効力があるのか分からないうちは気安く手が出せないのも事実で……
「どうするか………」
フゥ……とため息を吐いた時に唐突に声がかかった。
「何?王子は売られていきたいの?」
「は?……ラン?」
絶対にこんな所には居ないだろうと、居てくれるなと思っていた者の声がするものだから物凄く驚いた…音もなく牢の入り口が開いているし………何でもない様に、フードを取ったリレランが牢の中に入って来ている。
「な………何で…?」
何を言おうとしたのか、聞きたかったのかレギル王子自信分からなかった事だろう…ただ、今呆然と牢の中にいるリレランを見つめている。
「で?売られたいの?」
可愛らしく小首を傾げて尋ねる内容が、全く可愛くはない。
「……ラン…売られたいと思う人間はいないと思うが…?」
「ふうん?そうなの…?」
おかしいな?とでもいいたそうなリレラン。
「だって人間の王子はちっとも嫌そうじゃないよね?恐怖も絶望も無いじゃない?」
だから、もしかしたら、と売られたいのか?と聞いたそうな。
「売られた先で何をされるのか知っているのか?」
こんな所まで、ノコノコとやって来てしまうとは…捕まえてくださいと言っている様なものと同じじゃ無いか。どうやって入った?
「繁殖用でしょ?」
「…………は?」
「え?違う?売られた先で交尾してるよね?人間はこんなに数がいるのはああ言う所で繁殖してるからでしょ?」
然も当然、とばかりにリレランの口から物凄い事が飛び出している。
「見た……のか?」
もしかして、リレランもそんな所に行ったのか?多分まだ男と言うより、少年の域だと思っていたのだが……………多分、売られているどの商品よりもリレランより美しい者は居ないだろうと確信もあるのだが……
レギル王子は自分が思ってもいなかったほどのショックを受けている自分にびっくりしている。
「見た?見なくても気配で感じるし…違うのか?」
なんとも分からん!と眉をしかめてリレランはパチンと指を鳴らす。
パラパラ…途端にレギル王子を拘束していた縄が解けて落ちた。
「つぅ……」
長時間の拘束のためにレギル王子の身体のあちこちが痛む。
「なんで縛られるままに?王子だったら解けるでしょ?」
「レギル………レギルだよ。リレラン…」
痛む手足を摩りながら、未だに名前さえ呼ばないリレランにレギルは根気よく名前を伝える。
「……ふ…何でレギルは縄を解かない?」
しょうがないと言う体でやっとリレランはレギル王子の名前を呼ぶ…
フワァ…名前を呼ばれるだけでこんなに嬉しい事があるなんて……意図せず、レギル王子の顔から笑みが溢れでてくる……
「まさか、人間って雄でも子を産むの?だからレギルは売られようとしてる?」
は……?嬉しい反面、リレランの突拍子無い思考についていけない。
「待てラン。何で私が売られたいと思っていると思うんだ?」
「だってされるがままに縛られたままだし……」
リレランにはどうしても不思議でならないらしい。本当だったらとっとと拘束を解いて牢の外にでもいるもんだとでも思ったのだろう。
「ここに、魔力封じが使われているらしい。だから魔力は使えなかっただけだ。」
レギル王子の魔力自体は大きくは無いからアイテムの力を凌駕して打ち破るのには無理があった。
「じゃあ、助けを呼ばなかったのは売られて、繁殖したいからでは無いんだな?」
だから、どうしてそうなるのかリレランの頭の中がレギル王子にとっては不思議なのだが、リレランが言うには気配を追ってみたらレギル王子は捕まったまま出てこようともしないし、自ら出ようともしていない様子が不思議だったし、嫌だった…
マリーがレギル王子を生かしているのに、人の手で勝手に連れて行かれ誰か分からない者たちのところへ放り込まれようとしている。それも行こうとしている先は交尾ばかりをしている繁殖場だ。
リレランは、レギル王子はレギル王子の人生をしっかりと全うすればいいと思っていた。だから、側から離れて干渉しない様にレギル王子からは目を離そうとしていたのに、またもやレギル王子自らリレランの目の前に飛び込んできたと思ったら、あっという間に攫われて行く先が繁殖場とは、なかなかにこれは腹の中が落ち着かない……だから、リレランはここまで来た。レギル王子が何のつもりか知りたかったから…
「ラン……誤解しているみたいなのだが……私は売られたいわけでは無い…ここは、私の魔力では破れないと思って大人しくしていただけだ。そして、売られるのは非常に不本意だが、行く先は繁殖場ではないんだ……」
人身売買の行き着く所、大抵がその様な行為をするところだとはレギル王子も理解はしている。
が、自分にそんな需要があるとは思ってもみなかったが……
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