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46 ルシーの結婚式 1
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ハダートン卿が幼い頃からお仕えしてきた主人の結婚が決まった。正確にはまだだが、もう動かしようもない所まで準備は整えられ、策も張ってある。
……報われませんわね……
侍女にいくらこう言われようともハダートン卿の心は不思議と動かず、万事滞りなく進められる様にと今は積極的に問題解決に励んでいる。ハダートン卿が愛の形というものを、自分の手の中に囲い込む事だけが全てではないと知っている年長者だからだったかも知れないが、不思議と彼の心の内は凪いだ湖の様に落ち着いていた…
「さ、お嬢様!こちらとこちらのドレスのデザインでしたらどちらがお好きですか?」
舞踏会翌日、十分に朝寝坊させてもらい、食事と身支度を済ませたサラータの元に分厚い冊子を数冊抱えて持ってきた侍女レイユに唐突に問われた。
「ただお休みしているだけでは、飽きてしまわれますでしょ?暇潰しを兼ねてご覧くださいませ。」
レイユが開いて見せてくれた冊子はドレスカタログの様なものだろう。新旧取り合わせて揃ったデザインの物が、色彩豊かなデザイン画として描かれている。これでもか、と装飾を施されたものから、一切装飾のない極シンプルなものまで多種多様だ。
サラータは商人の娘。ドレスの生地ならば腐るほど見てきたものだ。勿論、この様なドレスのカタログも毎年確認してもいる。それでもここに描かれているものは、一般的な流行を追ったドレスというよりかは長年伝えられてきた伝統のデザインの物が多い様だ。歴史があり格式高い。そしてお値段の方もかなりのものとサラータは確信した。これは、一般人が見てもいいものだろうか?
「どれも素晴らしい品ですわ……」
「そうでございましょう?どれが気に入りまして?」
「……まさか、何かまだ、あるとか、ですか?」
お茶会に始まり、城への逗留、王からの夜会の招待である。イリュアナ国王都へは悪魔でもルシーの結婚式に出席する為に来たのに、大きく目的を外れている事が起こっていて些かサラータも警戒気味だ。
「まさか、お嬢様はご商家のお産まれですよね?では、色々な物を見定めるのも良いかと思ったのです。」
ニッコリと笑う侍女レイユはとても人懐こい笑顔になる。綺麗な黒髪をしっかりとアップに纏めていつも動きやすそうだ。
「……そう…?本当に…?」
「左様ですとも!お嬢様のお心が休まれる様でしたらこれ以上の事はありませんわ。それに、結婚式がお近いのでしょう?」
そう、ルシーの結婚式だ。必要な物は全てトラトから持ってきているが、それは全てカザラント子爵邸に置いてある。
「そうそう!そうなの…!ここに居るのは仕方ないとしても、全てカザラント子爵様の所に置かせてもらっているのです。子爵邸に戻るか、ここに持ってきてもらうことは出来ます?」
最終的な支度の確認もしたいし、何よりカザラント子爵家に居るだろう両親やカザラント老夫妻ともスケジュールの確認もしたいのだ。
「まぁ!それはご心配には及びませんわ。」
「あら、持ってきてもらえるの?」
正装になるのだから化粧品から装飾品までかなりの数になるのだが…
「ふふ、ルシー様からご提案がございまして。」
「ルシーから?」
「左様です。」
ルシーは結婚式着前であるにも関わらず仕事もしているらしい。王様の侍女という事で易々と休みなどもらえないのかもしれないのだが…自分の結婚式の直前で仕事に準備にと多忙だろうにそれに加えてサラータの事にも心砕いてくれている。
「悪いわ…忙しくさせて身体を壊してしまったら……」
「ま、ルシー様はそんなに柔じゃございませんわ!それに、本人が喜んでしている事なのですから、大丈夫です。」
王城で今まで共に働いてきただろう侍女レイユのお墨付きだ。この辺はしばらく離れていたサラータよりも詳しいのだろう。
「そ…う?何かしら?」
「はい!こちらですわ!」
……報われませんわね……
侍女にいくらこう言われようともハダートン卿の心は不思議と動かず、万事滞りなく進められる様にと今は積極的に問題解決に励んでいる。ハダートン卿が愛の形というものを、自分の手の中に囲い込む事だけが全てではないと知っている年長者だからだったかも知れないが、不思議と彼の心の内は凪いだ湖の様に落ち着いていた…
「さ、お嬢様!こちらとこちらのドレスのデザインでしたらどちらがお好きですか?」
舞踏会翌日、十分に朝寝坊させてもらい、食事と身支度を済ませたサラータの元に分厚い冊子を数冊抱えて持ってきた侍女レイユに唐突に問われた。
「ただお休みしているだけでは、飽きてしまわれますでしょ?暇潰しを兼ねてご覧くださいませ。」
レイユが開いて見せてくれた冊子はドレスカタログの様なものだろう。新旧取り合わせて揃ったデザインの物が、色彩豊かなデザイン画として描かれている。これでもか、と装飾を施されたものから、一切装飾のない極シンプルなものまで多種多様だ。
サラータは商人の娘。ドレスの生地ならば腐るほど見てきたものだ。勿論、この様なドレスのカタログも毎年確認してもいる。それでもここに描かれているものは、一般的な流行を追ったドレスというよりかは長年伝えられてきた伝統のデザインの物が多い様だ。歴史があり格式高い。そしてお値段の方もかなりのものとサラータは確信した。これは、一般人が見てもいいものだろうか?
「どれも素晴らしい品ですわ……」
「そうでございましょう?どれが気に入りまして?」
「……まさか、何かまだ、あるとか、ですか?」
お茶会に始まり、城への逗留、王からの夜会の招待である。イリュアナ国王都へは悪魔でもルシーの結婚式に出席する為に来たのに、大きく目的を外れている事が起こっていて些かサラータも警戒気味だ。
「まさか、お嬢様はご商家のお産まれですよね?では、色々な物を見定めるのも良いかと思ったのです。」
ニッコリと笑う侍女レイユはとても人懐こい笑顔になる。綺麗な黒髪をしっかりとアップに纏めていつも動きやすそうだ。
「……そう…?本当に…?」
「左様ですとも!お嬢様のお心が休まれる様でしたらこれ以上の事はありませんわ。それに、結婚式がお近いのでしょう?」
そう、ルシーの結婚式だ。必要な物は全てトラトから持ってきているが、それは全てカザラント子爵邸に置いてある。
「そうそう!そうなの…!ここに居るのは仕方ないとしても、全てカザラント子爵様の所に置かせてもらっているのです。子爵邸に戻るか、ここに持ってきてもらうことは出来ます?」
最終的な支度の確認もしたいし、何よりカザラント子爵家に居るだろう両親やカザラント老夫妻ともスケジュールの確認もしたいのだ。
「まぁ!それはご心配には及びませんわ。」
「あら、持ってきてもらえるの?」
正装になるのだから化粧品から装飾品までかなりの数になるのだが…
「ふふ、ルシー様からご提案がございまして。」
「ルシーから?」
「左様です。」
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「悪いわ…忙しくさせて身体を壊してしまったら……」
「ま、ルシー様はそんなに柔じゃございませんわ!それに、本人が喜んでしている事なのですから、大丈夫です。」
王城で今まで共に働いてきただろう侍女レイユのお墨付きだ。この辺はしばらく離れていたサラータよりも詳しいのだろう。
「そ…う?何かしら?」
「はい!こちらですわ!」
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