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40 ベストク公爵の宝物 4
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王妃ミュリョンから言われた言葉がエルモンドの頭から離れない。そしてあんなに短時間での謁見だったにも関わらず、エルモンドは内面を見抜かれていた様な不思議な感覚に襲われた。
王妃ミュリョンは親戚もいないこの国にたった一人で輿入れしてきた。自分の立場や役目の責任の重圧は、エルモンドが幼い頃から受けてきたものよりももっと重かったのかもしれない。それなのに影ではどうかわからないが、目の前の王妃ミュリョンは自分を自制し、笑顔を絶やさず、更には敵対するかもしれないであろう派閥の次期頭となるエルモンドに対しても惜しみない信頼を注いでくれた。
ホロリ……気が付けば自然と涙がエルモンドの頬を伝う。一番近しい親族ですら、エルモンドの苦しみには手を差し伸べてはくれなかった…それなのに、あの一瞬でエルモンドの心の全てが変わってしまったかの様だった。
「貴方はきっと良い家長になるでしょう。大切な者を守る為には周りに流されてはいけませんよ?」
王妃ミュリョンはそっとエルモンドの涙をハンカチで拭ってくれた。
「…お寂しくは、ないのですか……?お一人で…」
エルモンド自身もいつもどこか一人だと感じていたのだ。今、満足感を得て初めて一人で耐えることが寂しかったと気がついた。王妃ミュリョンも、一人だ…
「一人…?私は結婚してましてよ?男女の愛とはもしかしたら違うのかもしれませんが、国王の事を心から敬愛しております。それに…今は、何者にも代えられない大切な存在がありますし。ベストク公爵嫡男エルモンド、貴方にもいつか自分よりも大切な者と出逢えればいいですわね?」
優しく涙を拭かれながら、エルモンドは思うのだ…
(それは、貴方だ…)
優しい薄紫の暖かい瞳を覗き込みながら、何度も、何度も…………
それから間も無くしてまたしてもイリュアナ国は国を上げての祝賀ムードとなる。王妃ミュリョンが第一子である王子ルシュルトを無事に出産したためだ。
国民に劣らず、ベストク公爵門下の家々は狂喜乱舞した。これでシェリンを正妃とし、イリュアナ国においてベストク帝国の血を引く王族が誕生するのだから。まだ見ぬ未来を夢物語の様に語り続ける一族の集まりからエルモンドはシェリンを抱き上げ抜け出すのだ。
………愛情深い貴方は、きっと良い家長になる。大切な者を護る為に周りに流されてはいけません。
貴方にも自分よりも大切な者と出逢えればいいですわね………
今も目を閉じれば、あの夜の光景が目の前に広がる。薄い金に輝く髪と薄紫の優しく暖かい瞳がじっとこちらを見つめている様な心地良い感覚に陥る。
「……王子、か……」
あの方の子供であれば、王子であれ、王女であれ美しい子が産まれるだろう。それが将来自分か、妹かの伴侶になってもならなくてもお互いを尊敬できる伴侶と巡り合って欲しいと切に願う。
ただ、少しだけ……産まれたのが男児であった事に残念だと思う自分の心にエルモンドは驚いてもいた。
王妃ミュリョンは親戚もいないこの国にたった一人で輿入れしてきた。自分の立場や役目の責任の重圧は、エルモンドが幼い頃から受けてきたものよりももっと重かったのかもしれない。それなのに影ではどうかわからないが、目の前の王妃ミュリョンは自分を自制し、笑顔を絶やさず、更には敵対するかもしれないであろう派閥の次期頭となるエルモンドに対しても惜しみない信頼を注いでくれた。
ホロリ……気が付けば自然と涙がエルモンドの頬を伝う。一番近しい親族ですら、エルモンドの苦しみには手を差し伸べてはくれなかった…それなのに、あの一瞬でエルモンドの心の全てが変わってしまったかの様だった。
「貴方はきっと良い家長になるでしょう。大切な者を守る為には周りに流されてはいけませんよ?」
王妃ミュリョンはそっとエルモンドの涙をハンカチで拭ってくれた。
「…お寂しくは、ないのですか……?お一人で…」
エルモンド自身もいつもどこか一人だと感じていたのだ。今、満足感を得て初めて一人で耐えることが寂しかったと気がついた。王妃ミュリョンも、一人だ…
「一人…?私は結婚してましてよ?男女の愛とはもしかしたら違うのかもしれませんが、国王の事を心から敬愛しております。それに…今は、何者にも代えられない大切な存在がありますし。ベストク公爵嫡男エルモンド、貴方にもいつか自分よりも大切な者と出逢えればいいですわね?」
優しく涙を拭かれながら、エルモンドは思うのだ…
(それは、貴方だ…)
優しい薄紫の暖かい瞳を覗き込みながら、何度も、何度も…………
それから間も無くしてまたしてもイリュアナ国は国を上げての祝賀ムードとなる。王妃ミュリョンが第一子である王子ルシュルトを無事に出産したためだ。
国民に劣らず、ベストク公爵門下の家々は狂喜乱舞した。これでシェリンを正妃とし、イリュアナ国においてベストク帝国の血を引く王族が誕生するのだから。まだ見ぬ未来を夢物語の様に語り続ける一族の集まりからエルモンドはシェリンを抱き上げ抜け出すのだ。
………愛情深い貴方は、きっと良い家長になる。大切な者を護る為に周りに流されてはいけません。
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今も目を閉じれば、あの夜の光景が目の前に広がる。薄い金に輝く髪と薄紫の優しく暖かい瞳がじっとこちらを見つめている様な心地良い感覚に陥る。
「……王子、か……」
あの方の子供であれば、王子であれ、王女であれ美しい子が産まれるだろう。それが将来自分か、妹かの伴侶になってもならなくてもお互いを尊敬できる伴侶と巡り合って欲しいと切に願う。
ただ、少しだけ……産まれたのが男児であった事に残念だと思う自分の心にエルモンドは驚いてもいた。
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