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24 ルシーのお仕事 1
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侍女の朝は早い。夜勤のない日も早出に遅出と勤務時間に差をつけて一日中城の中で働き続けている。
ルシーの朝も早かった。親代わりの老子爵のお陰で非常に朝が強くなったのは感謝しかない。日の出る前から目が覚めて必要な支度を手早く済ませることもできる様になった。
ある時は屋敷にいる時に、ある時は城内に入ってから準備をする。勿論、周囲の者達は非常に厳選された信頼のおける者達で固めているし、それぞれの持つ技術や腕前は相当な者達だ。
「あら、ルシー?また、少し、逞しくなりまして?」
「う………そう……?」
「えぇ……!こぅ、絞め心地にかなりの手応えが出て来てますもの!!うぬ!!」
「くぅ……!!」
女性の身体を美しく見せるためのコルセット……淑女を逃さないための拘束道具なのではないかと本気で思う……が、慣れてしまえば動けないことも無いから不思議なのだが。
「ハダートン卿…!そこで見ておられるなら!お手伝い下さいませ!!」
普段なら行儀の行き届いた城の侍女達がこの時ばかりは憤怒の鬼の様になるから恐ろしい……
「…いえ、それは私の仕事では無いので…」
「なんと…!情けない事を言いますのね!こんなに毎日一緒に居りますのだから!やり方なんて等に覚えておいででしょう……!?そうすればもっとお早くお支度が済みます!…ぐっ!」
「いや…私は…護衛としてここにいるのであって……そんなにお身体に触れるのはどうかと………」
屈強な騎士がモジモジする様子など可愛く思えなければそっと目を逸らすしかない。が、必死の侍女らにはそんなものも目には入っていない様だ。
(では、私達ならばいいと言うのですか!?)
と声を大にして聞きたいところではあるが、それより今は締め上げだ!
「も…う…良いのではないか…?」
半ばルシーはグッタリとしてしまっている。
「…!…身体が、成長しているのですもの!元のサイズを保ちたいのならば、まだまだ!!」
若干、ハダートン卿がオロオロとし出したところで、その作業は終了を迎えたようだ。
「ふぅ~~~こんなところでしょうか?」
「…………ぁぁ………」
「お声が出ませんか?もう少し緩めます?」
きっちり、しっかり締め上げた身体を心配して声をかけるのだが、ルシーはフルフルと首を振る。
「いや、これで良い……すまなかった…」
「いえ、これが私共の仕事ですから、さ、お早くこちらを…」
侍女が差し出した侍女のお仕着せをルシーは素早く纏う。顔を柔らかく見せる化粧を施し、髪をセットすればルシーの侍女姿が出来上がった。
イリュアナ国城内に留まるのは夜勤の侍女達。多くの者は城の敷地内の宿舎から、または城の近隣に構えている自宅から通ってくる者達だ。朝も早い時間から城門に集まってくる侍女達は列をなす。
ルシーは自宅、カザラント子爵家から通い組となっている。当然城門から中へ入るわけだが、普段であれどもルシーの姿はここでは見ることはなかった。
「異常は?」
「ありません!」
屈強な騎士が守る墓所…城の北側にある王族専用の古い地下墓地だ。辺鄙な場所であっても騎士達の警備は怠られていない場所の一つである。
人影が全くないにも関わらず、この場所も三交代で厳重に警備兵が警備にあたる。ここを行き交うのは時折騎士を連れ立った侍女と交代の騎士位だろう。
「こちらが今日のスケジュールになります。」
暗い墓所から続く石造りの通路の前を歩く侍女に付き従いつつ、カザラント子爵キュリオは小さな紙をその侍女に手渡す。
「…………」
「午後からはもう一度私も登城致しますし、ハダートン卿も既に上に待機しておられます。」
手元の灯りを頼りにザッとメモに目を通しつつ、足元のはっきりしないであろう通路を足速に歩く。
「ご苦労。あれの周りは?」
「はい。お変わりなくお過ごしだという事です。」
「そうか…」
「今から行かれますので?」
「そうだな…」
侍女は読み終わったメモを壁にかかった松明で跡形もなく焼き落とした。
「呼ばれているからな?」
ニコリ、と嬉しそうに笑うその笑みはどう見ても柔らかい印象の優しそうな侍女だ。
「御意……」
従う騎士はそれ以上の言葉をつむがず、ただ長く上に伸びた螺旋階段を黙々と登っていった。
ルシーの朝も早かった。親代わりの老子爵のお陰で非常に朝が強くなったのは感謝しかない。日の出る前から目が覚めて必要な支度を手早く済ませることもできる様になった。
ある時は屋敷にいる時に、ある時は城内に入ってから準備をする。勿論、周囲の者達は非常に厳選された信頼のおける者達で固めているし、それぞれの持つ技術や腕前は相当な者達だ。
「あら、ルシー?また、少し、逞しくなりまして?」
「う………そう……?」
「えぇ……!こぅ、絞め心地にかなりの手応えが出て来てますもの!!うぬ!!」
「くぅ……!!」
女性の身体を美しく見せるためのコルセット……淑女を逃さないための拘束道具なのではないかと本気で思う……が、慣れてしまえば動けないことも無いから不思議なのだが。
「ハダートン卿…!そこで見ておられるなら!お手伝い下さいませ!!」
普段なら行儀の行き届いた城の侍女達がこの時ばかりは憤怒の鬼の様になるから恐ろしい……
「…いえ、それは私の仕事では無いので…」
「なんと…!情けない事を言いますのね!こんなに毎日一緒に居りますのだから!やり方なんて等に覚えておいででしょう……!?そうすればもっとお早くお支度が済みます!…ぐっ!」
「いや…私は…護衛としてここにいるのであって……そんなにお身体に触れるのはどうかと………」
屈強な騎士がモジモジする様子など可愛く思えなければそっと目を逸らすしかない。が、必死の侍女らにはそんなものも目には入っていない様だ。
(では、私達ならばいいと言うのですか!?)
と声を大にして聞きたいところではあるが、それより今は締め上げだ!
「も…う…良いのではないか…?」
半ばルシーはグッタリとしてしまっている。
「…!…身体が、成長しているのですもの!元のサイズを保ちたいのならば、まだまだ!!」
若干、ハダートン卿がオロオロとし出したところで、その作業は終了を迎えたようだ。
「ふぅ~~~こんなところでしょうか?」
「…………ぁぁ………」
「お声が出ませんか?もう少し緩めます?」
きっちり、しっかり締め上げた身体を心配して声をかけるのだが、ルシーはフルフルと首を振る。
「いや、これで良い……すまなかった…」
「いえ、これが私共の仕事ですから、さ、お早くこちらを…」
侍女が差し出した侍女のお仕着せをルシーは素早く纏う。顔を柔らかく見せる化粧を施し、髪をセットすればルシーの侍女姿が出来上がった。
イリュアナ国城内に留まるのは夜勤の侍女達。多くの者は城の敷地内の宿舎から、または城の近隣に構えている自宅から通ってくる者達だ。朝も早い時間から城門に集まってくる侍女達は列をなす。
ルシーは自宅、カザラント子爵家から通い組となっている。当然城門から中へ入るわけだが、普段であれどもルシーの姿はここでは見ることはなかった。
「異常は?」
「ありません!」
屈強な騎士が守る墓所…城の北側にある王族専用の古い地下墓地だ。辺鄙な場所であっても騎士達の警備は怠られていない場所の一つである。
人影が全くないにも関わらず、この場所も三交代で厳重に警備兵が警備にあたる。ここを行き交うのは時折騎士を連れ立った侍女と交代の騎士位だろう。
「こちらが今日のスケジュールになります。」
暗い墓所から続く石造りの通路の前を歩く侍女に付き従いつつ、カザラント子爵キュリオは小さな紙をその侍女に手渡す。
「…………」
「午後からはもう一度私も登城致しますし、ハダートン卿も既に上に待機しておられます。」
手元の灯りを頼りにザッとメモに目を通しつつ、足元のはっきりしないであろう通路を足速に歩く。
「ご苦労。あれの周りは?」
「はい。お変わりなくお過ごしだという事です。」
「そうか…」
「今から行かれますので?」
「そうだな…」
侍女は読み終わったメモを壁にかかった松明で跡形もなく焼き落とした。
「呼ばれているからな?」
ニコリ、と嬉しそうに笑うその笑みはどう見ても柔らかい印象の優しそうな侍女だ。
「御意……」
従う騎士はそれ以上の言葉をつむがず、ただ長く上に伸びた螺旋階段を黙々と登っていった。
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