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17 ルシーの婚約者 3
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「うわ………」
思わず、出かかった声をサラータは急いで飲み込んだ。なんというか、色彩から香りから、人々の立ち居振る舞いまで、王宮と言う所は別世界に違いない。
お茶会当日朝も早くから全身を磨かれたサラータは、昨日ルシーと決めたドレスに身を通す。自分用に作ってもらったようにピッタリと身体に馴染むドレスはその布地の質も極上で華やかさの割に軽くて柔らかく、身体への負担が最小限の見た目に反したゆとりある作りだ。着終わった瞬間に、サラータの気持ちはワクワクしてきて自制するのが大変そうだった。
カザラント子爵キュリオは騎士の正装だと言うのだが、サラータには他と何が違うのかすらよく分からない…ただ、黒髪を整え、制服に身を包むその姿は女性の目を引くだろうな、と言うことだけはよく分かった。そのキュリオは昨日同様ルシーの手を引きエスコートをしている。ルシーのドレス姿といい、その二人の姿がまるで絵の中の騎士と姫君の様でサラータはしばし呆然としてしまうのだ。
そんな二人に付いて行くように招待状を見せれば、あっさりと王宮に入れたはいいものの、サラータは自分がどうにも場違いな所にいる様で落ち着きはしない。とにかく、ボロが出ないように極力大人しくしていようと心に決めた。
「サラ、こっちへ…」
キュリオは流石は子爵だけあり、王宮に集まる紳士淑女と何なく挨拶を交わして行く。ルシーもその隣でニコニコと笑みを絶えず称えて、お人形の様な華やかさを保っていた。そんな二人を見つめ続けていたサラータにルシーは声をかけた。
「え、あ、はい!」
二人に付かず離れずの距離で歩いていたサラータはルシーに呼ばれてその隣に立った。
「こちらはハダートン卿です。」
「え?」
「マーテル・ハダートン侯爵です。レディ、お名前を伺っても?」
ルシーが紹介してくれているのは、これまた体格も身長も立派な騎士だろう。キュリオとは種類が違うが騎士隊の正装と思われる制服を着ている。ハダートン卿は紹介に預かると、ゆっくりと騎士の礼をとった。金の髪が礼と共にキラキラと日に輝く。明るい茶の瞳はじっと問いかける様にサラータを見つめる。
「はい、私はサラータ・カクルと申します。カクル商会の娘でして、本日はお招きに預かり王城へと参りました。」
「あぁ、貴方が…?」
「…?」
ハダートン卿は何度か肯くとそっとルシーへと耳打ちをする。
「ごめんね?サラータ…直ぐに挨拶に行かなければならなくなったわ。少し、厄介な相手だから少し時間がかかるかも…キュリオを残して行くので、大丈夫ね?」
「え?ルシー…!行ってしまうの?」
「フフ…ごめんなさい。私の主人に当たる人もここに来ているのですって…結婚のこともあるし、お祝いを言いたいとの事だから断るわけにはいかなくなっちゃったの。」
本当に申し訳なさそうなルシーの表情からはこの呼出は予定にはなかったのだろう。侍女としての仕事のあれこれも知らないサラータには何も言う権利もない。
「分かったわ。お仕事ですものね?大丈夫。子爵様に付いて回るから安心してね?」
ここにはもうサラータにとってカザラント子爵しか知り合いがいない。今日の集まりは若者中心というのでサラータの両親はカザラント子爵邸に留まっているはずだからだ。
「大丈夫ですよ。サラータ嬢。挨拶すべき人物は私が教えましょう。まずは美味しいケーキでも如何かな?」
ルシーの手を取って腰に腕を回しながら、サラータ達の側を離れて行くルシーとハダートン卿を見送って、サラータはキュリオのお誘いに乗ることにした。
思わず、出かかった声をサラータは急いで飲み込んだ。なんというか、色彩から香りから、人々の立ち居振る舞いまで、王宮と言う所は別世界に違いない。
お茶会当日朝も早くから全身を磨かれたサラータは、昨日ルシーと決めたドレスに身を通す。自分用に作ってもらったようにピッタリと身体に馴染むドレスはその布地の質も極上で華やかさの割に軽くて柔らかく、身体への負担が最小限の見た目に反したゆとりある作りだ。着終わった瞬間に、サラータの気持ちはワクワクしてきて自制するのが大変そうだった。
カザラント子爵キュリオは騎士の正装だと言うのだが、サラータには他と何が違うのかすらよく分からない…ただ、黒髪を整え、制服に身を包むその姿は女性の目を引くだろうな、と言うことだけはよく分かった。そのキュリオは昨日同様ルシーの手を引きエスコートをしている。ルシーのドレス姿といい、その二人の姿がまるで絵の中の騎士と姫君の様でサラータはしばし呆然としてしまうのだ。
そんな二人に付いて行くように招待状を見せれば、あっさりと王宮に入れたはいいものの、サラータは自分がどうにも場違いな所にいる様で落ち着きはしない。とにかく、ボロが出ないように極力大人しくしていようと心に決めた。
「サラ、こっちへ…」
キュリオは流石は子爵だけあり、王宮に集まる紳士淑女と何なく挨拶を交わして行く。ルシーもその隣でニコニコと笑みを絶えず称えて、お人形の様な華やかさを保っていた。そんな二人を見つめ続けていたサラータにルシーは声をかけた。
「え、あ、はい!」
二人に付かず離れずの距離で歩いていたサラータはルシーに呼ばれてその隣に立った。
「こちらはハダートン卿です。」
「え?」
「マーテル・ハダートン侯爵です。レディ、お名前を伺っても?」
ルシーが紹介してくれているのは、これまた体格も身長も立派な騎士だろう。キュリオとは種類が違うが騎士隊の正装と思われる制服を着ている。ハダートン卿は紹介に預かると、ゆっくりと騎士の礼をとった。金の髪が礼と共にキラキラと日に輝く。明るい茶の瞳はじっと問いかける様にサラータを見つめる。
「はい、私はサラータ・カクルと申します。カクル商会の娘でして、本日はお招きに預かり王城へと参りました。」
「あぁ、貴方が…?」
「…?」
ハダートン卿は何度か肯くとそっとルシーへと耳打ちをする。
「ごめんね?サラータ…直ぐに挨拶に行かなければならなくなったわ。少し、厄介な相手だから少し時間がかかるかも…キュリオを残して行くので、大丈夫ね?」
「え?ルシー…!行ってしまうの?」
「フフ…ごめんなさい。私の主人に当たる人もここに来ているのですって…結婚のこともあるし、お祝いを言いたいとの事だから断るわけにはいかなくなっちゃったの。」
本当に申し訳なさそうなルシーの表情からはこの呼出は予定にはなかったのだろう。侍女としての仕事のあれこれも知らないサラータには何も言う権利もない。
「分かったわ。お仕事ですものね?大丈夫。子爵様に付いて回るから安心してね?」
ここにはもうサラータにとってカザラント子爵しか知り合いがいない。今日の集まりは若者中心というのでサラータの両親はカザラント子爵邸に留まっているはずだからだ。
「大丈夫ですよ。サラータ嬢。挨拶すべき人物は私が教えましょう。まずは美味しいケーキでも如何かな?」
ルシーの手を取って腰に腕を回しながら、サラータ達の側を離れて行くルシーとハダートン卿を見送って、サラータはキュリオのお誘いに乗ることにした。
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