6 / 74
6 お祝いの準備 2
しおりを挟む
「ねぇ…お婆様。お祝いは何がいいかしら?」
モル爺に促されて屋敷に入ったサラータはモルトの妻カレンの大歓迎を受ける。サラータは居を移してしまったルシーと同様この夫婦にとっては孫も同然の子供だったからだ。いつ訪問しても、カレンはサラータをお茶の席に呼んでは長々と話し相手をしてくれた。今日も早速、サラータが持ってきてくれた蜂蜜をたっぷりと垂らした紅茶をカレンはサラータの前に出してくれる。
「そうねぇ…私達も暫くあの子には会っていないから…好みがわからないわねぇ?」
「そうなの!昔なら、何も悩むことなく似合いの物を送る事ができたわ。」
「ふふふ…あの子はきっと物には拘らないと思うのよ?貴方からの贈り物ですもの。どんな物でも嬉しそうに受け取ると思うわ。」
「本当?そう思ってくださる?」
「ええ。素敵な物が見つかるといいわね?」
サラータの家は中規模の商家である。きっと欲しい物があるのならば、手を尽くせばどんな物でも手に入れる事は可能だろう。ただ、相手のルシーが何を求めているのかが分かればなのだが…
「大丈夫よ、サラ。あの子は貴方が大好きだったんだもの。どんな物でも喜んで受け取るわ。もしかしたら家宝にするかもしれなくてよ?」
「……お婆様、それは言い過ぎだわ…」
それでもサラータは嬉しい。暫く会えなかった友人の家族にもルシーはサラータが大好き、などと言われれば悪い気どころか飛び跳ねたい位に嬉しいものだ。照れてしまったサラータをニッコリと優しく微笑みながら見つめてくるカレンの表情はどことなくルシーに似ているところがある。
(ルシーはこんな感じのお婆さんになるのかしら?お婆さんになる前に会えるなんて本当に嬉しい事だわ。)
まだ成長後のルシーを見ていないサラータは今のルシーをあれこれ想像しながらこのお茶の一時を楽しんだ。
ルシーに似合いそうな物…喜んでもらえそうな物……優しいルシーの顔を思い出しながらサラータは商会の倉庫で贈り物の選別を始めた。奇しくも実家は商家だ。取り扱う商品の豊富さには自他国に対しても自信があるほど。
選ぶものは山の様にあった。だから毎日、毎日毎日、時には商会の使用人やマーニを巻き込んでは一日中、品物の置いてある倉庫や、パンフレットと睨めっこをした。カレンの顔を思い出しては成長したルシーの今の姿を想像して、あれこれ商品を組み替えては考えていくのはとてもとても楽しい時だった。
「まぁ!こんなに?」
気がつけば、山の様に……と言う表現が丁度良い程、商会の倉庫の一画を陣取ってルシー宛のお祝いの品物の山が出来上がっている。それを見た母は勿論呆れ顔だ。
「そうなの!あれもこれも似合いそうだと思ったら…どれも切り捨てられなくて!ねぇ!見てお母様、この外国の布!なんて滑らかなんでしょうね!素敵なナイトドレスが作れると思わない?」
母の呆れ顔とは別に、サラータはホクホク顔で次々に商品の説明をしていく。
「もぅ、貴方ったら…こんなに高価なものばかり良く集めてきたわね?さすがは商人の娘なのかしら?目の付け所は十分ね…けれど……」
お祝いの品を一つ一つ手に取りながら母はサラータの側まで来ると、深くため息をついた…
「貴方は家を破産させたいの?」
「え?」
素晴らしい品物の数々は外国から輸入してきた価値の高い物も多分に含まれており、まさか、これ全てを贈り物のにすると言ったならば流石のカクル商会と言えども家業が傾きそうな勢いである。
「珍しい布類にそれに合わせた宝飾品数点、では駄目なの?」
母は流石だ。どれも選びきれないでいるサラータに最もな解決案を与えてくれたのだから。
モル爺に促されて屋敷に入ったサラータはモルトの妻カレンの大歓迎を受ける。サラータは居を移してしまったルシーと同様この夫婦にとっては孫も同然の子供だったからだ。いつ訪問しても、カレンはサラータをお茶の席に呼んでは長々と話し相手をしてくれた。今日も早速、サラータが持ってきてくれた蜂蜜をたっぷりと垂らした紅茶をカレンはサラータの前に出してくれる。
「そうねぇ…私達も暫くあの子には会っていないから…好みがわからないわねぇ?」
「そうなの!昔なら、何も悩むことなく似合いの物を送る事ができたわ。」
「ふふふ…あの子はきっと物には拘らないと思うのよ?貴方からの贈り物ですもの。どんな物でも嬉しそうに受け取ると思うわ。」
「本当?そう思ってくださる?」
「ええ。素敵な物が見つかるといいわね?」
サラータの家は中規模の商家である。きっと欲しい物があるのならば、手を尽くせばどんな物でも手に入れる事は可能だろう。ただ、相手のルシーが何を求めているのかが分かればなのだが…
「大丈夫よ、サラ。あの子は貴方が大好きだったんだもの。どんな物でも喜んで受け取るわ。もしかしたら家宝にするかもしれなくてよ?」
「……お婆様、それは言い過ぎだわ…」
それでもサラータは嬉しい。暫く会えなかった友人の家族にもルシーはサラータが大好き、などと言われれば悪い気どころか飛び跳ねたい位に嬉しいものだ。照れてしまったサラータをニッコリと優しく微笑みながら見つめてくるカレンの表情はどことなくルシーに似ているところがある。
(ルシーはこんな感じのお婆さんになるのかしら?お婆さんになる前に会えるなんて本当に嬉しい事だわ。)
まだ成長後のルシーを見ていないサラータは今のルシーをあれこれ想像しながらこのお茶の一時を楽しんだ。
ルシーに似合いそうな物…喜んでもらえそうな物……優しいルシーの顔を思い出しながらサラータは商会の倉庫で贈り物の選別を始めた。奇しくも実家は商家だ。取り扱う商品の豊富さには自他国に対しても自信があるほど。
選ぶものは山の様にあった。だから毎日、毎日毎日、時には商会の使用人やマーニを巻き込んでは一日中、品物の置いてある倉庫や、パンフレットと睨めっこをした。カレンの顔を思い出しては成長したルシーの今の姿を想像して、あれこれ商品を組み替えては考えていくのはとてもとても楽しい時だった。
「まぁ!こんなに?」
気がつけば、山の様に……と言う表現が丁度良い程、商会の倉庫の一画を陣取ってルシー宛のお祝いの品物の山が出来上がっている。それを見た母は勿論呆れ顔だ。
「そうなの!あれもこれも似合いそうだと思ったら…どれも切り捨てられなくて!ねぇ!見てお母様、この外国の布!なんて滑らかなんでしょうね!素敵なナイトドレスが作れると思わない?」
母の呆れ顔とは別に、サラータはホクホク顔で次々に商品の説明をしていく。
「もぅ、貴方ったら…こんなに高価なものばかり良く集めてきたわね?さすがは商人の娘なのかしら?目の付け所は十分ね…けれど……」
お祝いの品を一つ一つ手に取りながら母はサラータの側まで来ると、深くため息をついた…
「貴方は家を破産させたいの?」
「え?」
素晴らしい品物の数々は外国から輸入してきた価値の高い物も多分に含まれており、まさか、これ全てを贈り物のにすると言ったならば流石のカクル商会と言えども家業が傾きそうな勢いである。
「珍しい布類にそれに合わせた宝飾品数点、では駄目なの?」
母は流石だ。どれも選びきれないでいるサラータに最もな解決案を与えてくれたのだから。
1
お気に入りに追加
158
あなたにおすすめの小説
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
【完結】優しくて大好きな夫が私に隠していたこと
暁
恋愛
陽も沈み始めた森の中。
獲物を追っていた寡黙な猟師ローランドは、奥地で偶然見つけた泉で“とんでもない者”と遭遇してしまう。
それは、裸で水浴びをする綺麗な女性だった。
何とかしてその女性を“お嫁さんにしたい”と思い立った彼は、ある行動に出るのだが――。
※
・当方気を付けておりますが、誤字脱字を発見されましたらご遠慮なくご指摘願います。
・★が付く話には性的表現がございます。ご了承下さい。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる