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6 お祝いの準備 2

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「ねぇ…お婆様。お祝いは何がいいかしら?」

 モル爺に促されて屋敷に入ったサラータはモルトの妻カレンの大歓迎を受ける。サラータは居を移してしまったルシーと同様この夫婦にとっては孫も同然の子供だったからだ。いつ訪問しても、カレンはサラータをお茶の席に呼んでは長々と話し相手をしてくれた。今日も早速、サラータが持ってきてくれた蜂蜜をたっぷりと垂らした紅茶をカレンはサラータの前に出してくれる。

「そうねぇ…私達も暫くあの子には会っていないから…好みがわからないわねぇ?」

「そうなの!昔なら、何も悩むことなく似合いの物を送る事ができたわ。」

「ふふふ…あの子はきっと物には拘らないと思うのよ?貴方からの贈り物ですもの。どんな物でも嬉しそうに受け取ると思うわ。」

「本当?そう思ってくださる?」

「ええ。素敵な物が見つかるといいわね?」

 サラータの家は中規模の商家である。きっと欲しい物があるのならば、手を尽くせばどんな物でも手に入れる事は可能だろう。ただ、相手のルシーが何を求めているのかが分かればなのだが…

「大丈夫よ、サラ。あの子は貴方が大好きだったんだもの。どんな物でも喜んで受け取るわ。もしかしたら家宝にするかもしれなくてよ?」

「……お婆様、それは言い過ぎだわ…」

 それでもサラータは嬉しい。暫く会えなかった友人の家族にもルシーはサラータが大好き、などと言われれば悪い気どころか飛び跳ねたい位に嬉しいものだ。照れてしまったサラータをニッコリと優しく微笑みながら見つめてくるカレンの表情はどことなくルシーに似ているところがある。

(ルシーはこんな感じのお婆さんになるのかしら?お婆さんになる前に会えるなんて本当に嬉しい事だわ。)

 まだ成長後のルシーを見ていないサラータは今のルシーをあれこれ想像しながらこのお茶の一時を楽しんだ。







 ルシーに似合いそうな物…喜んでもらえそうな物……優しいルシーの顔を思い出しながらサラータは商会の倉庫で贈り物の選別を始めた。奇しくも実家は商家だ。取り扱う商品の豊富さには自他国に対しても自信があるほど。
 選ぶものは山の様にあった。だから毎日、毎日毎日、時には商会の使用人やマーニを巻き込んでは一日中、品物の置いてある倉庫や、パンフレットと睨めっこをした。カレンの顔を思い出しては成長したルシーの今の姿を想像して、あれこれ商品を組み替えては考えていくのはとてもとても楽しい時だった。






「まぁ!こんなに?」

 気がつけば、山の様に……と言う表現が丁度良い程、商会の倉庫の一画を陣取ってルシー宛のお祝いの品物の山が出来上がっている。それを見た母は勿論呆れ顔だ。

「そうなの!あれもこれも似合いそうだと思ったら…どれも切り捨てられなくて!ねぇ!見てお母様、この外国の布!なんて滑らかなんでしょうね!素敵なナイトドレスが作れると思わない?」

 母の呆れ顔とは別に、サラータはホクホク顔で次々に商品の説明をしていく。

「もぅ、貴方ったら…こんなに高価なものばかり良く集めてきたわね?さすがは商人の娘なのかしら?目の付け所は十分ね…けれど……」

 お祝いの品を一つ一つ手に取りながら母はサラータの側まで来ると、深くため息をついた…

「貴方は家を破産させたいの?」

「え?」

 素晴らしい品物の数々は外国から輸入してきた価値の高い物も多分に含まれており、まさか、これ全てを贈り物のにすると言ったならば流石のカクル商会と言えども家業が傾きそうな勢いである。

「珍しい布類にそれに合わせた宝飾品数点、では駄目なの?」

 母は流石だ。どれも選びきれないでいるサラータに最もな解決案を与えてくれたのだから。







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