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「だから、帰れなくなるって……」

 爽やかな朝日の中目覚めてみれば、ここはまだ山手家だ……


(今日で外泊3日目だぞ?)


 あ~~ぁ、と布団に顔を突っ伏してため息を吐く。


(本当、このまま刀貴の嫁にでもなっちまう気がする…)

 
 少し恐ろしい夢みたいな事を考えながらも現実を生きる身としては身支度をして学校に行くべきだ。


「楓矢このまま嫁に来い…」


 刀貴もまたそんな事を…


「あのな…」

「楓矢を養っていけるくらいの甲斐性くらいあるつもりだ。」

「あのな、刀貴現実を見ようぜ?男同士な訳よ?俺が嫁って難しいだろ?それより、今の生活をしなきゃだろ?」

「くくく、現実主義だな、楓矢。」

「何言ってんだよ?お互い学生の身分でさ?」

「俺は学生って訳じゃないんだけどな?」

「あ……」


 そうだ。一人で生きて来た年数を考えたら刀貴が学生な訳はない。


「そのまま身一つで来るといい。」

「………」


(朝からニコニコと機嫌いいな…)


 何をいってるんだかって言いたいが、実際のところ、この山手家にはなんでも揃ってるって言うか…いや、揃えられてる?なんでか俺のサイズの下着類もあるし、私服の類や制服のシャツもあるし、生活必需品は全て揃ってる…………身一つでこのままここに引っ越して来ても問題なくね?位には揃えられてて……


(ちょっと、引くレベルじゃなかろうか?)


 思いが通じ合ったんだから、一緒にいる時間があるってのは大いに嬉しい。嬉しいんだけれども、でもやっぱりまだ高校で学生だ。親の脛かじってる身としてはそのままおんぶに抱っこで刀貴の家に居を移して生活するなんて、刀貴がいいと言っても納得できそうもない。


(だって、刀貴は俺の親でも保護者でもないし……)


 強いて言えば、恋人、パートナー?だったら養ってもらうなんてなんか、違うし。


「なんて顔?」

「…変な事言うからだろ?」

「変かな?」

「変だろ?刀貴が俺を養うのかよ?親でもないのに?」


 それに、もう親の庇護下にある子供というわけではない。もし……もし、二人で暮らすにしても、色々と二人で決めるべきではなかろうか?一方的なこんな状態はきっと居心地が悪くなると思う。


「ごめんよ?楓矢を子供扱いしたわけじゃない。ま、子供にこんな事出来ないし?」


 チュッと軽いキスをして、刀貴は優しく頭を撫でてくる。

 
「そうか、時代は動くものだ…楓矢は守ってやらなければいけない女じゃない……だからこそ、こうして一緒にいられる。」


 頭を撫でながら刀貴はしんみりとそんな事を言う。刀貴はどれだけ待ったのか、覚えて無いなんて言ってたけど、一人じゃ孤独で、きっと寂しかったはずだ…


「そうそう!だからちゃんと話し合おうぜ。刀貴はなんだか一人で突っ走ってるみたいですけど?」

「仕方がない、許せ。してやりたいと思った事、一気にしようとしてるのかもな…」

で生きて行くんだろう!?じゃ、楽しく過ごす為にメリハリはつけようぜ?」


 刀貴の言葉にじんわりと頬が熱くなるのと少しだけ目が潤んだ事は気づかれない様に無視だ、無視…!勢い良く言い放って、おぼつかない足に力をこめて立ち上がり、バスルームを先に使わせてもらおう。

 足腰立たなくなるまであんな事をしていた俺でも、今までは真面目にちゃんと学校に通っていたんだ。神社に嫁に行かなくていいから、将来サラリーマンにでもなるんだろうけど、人生設計は自分で立てる物だから、学校には行くだろ。

「まだ早い。ゆっくり入っておいで。朝食準備するから。」


 一人暮らしが長いせいか、刀貴はなんでも一人でこなす。庭の手入れは他の人がやってるみたいだけどな…ま、家事ある程度なら俺もできるけど。そう言うんじゃなくて…


(俺、刀貴に何できる?)


 熱いシャワーを浴びて身綺麗にして、制服をきて部屋に戻れば、布団は上げてあるし、食卓は用意されてるし至れり尽くせり。


(してやりたい事って言ってたよな?)

 
 刀貴がきっとゆうらにしてやりたかった事…だ。ゆうらは……?
 







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