上 下
11 / 46

11

しおりを挟む
「宝利君は…まだなんだね…?」

「あ……?」


(まだこの話題引っ張る?それに、なんで山手の方が照れ臭そうに俯いて、噛み締める様に言ってる訳?)


 くっそ~!と、ワナワナと羞恥に震えてくる。

「あ~山手君、それ以上はやめたげて。流石にオーバーキルだわ。」

 フルフル震えている俺の横から蒼梧が助け舟を出す。


(元はと言えばお前が原因だろが!)


 思いっきり蒼梧の鼻を摘んでやる。

「いててててて、ごみん、楓ストップ!」

「ほら蒼梧!無駄口叩いている暇があるならキリキリレポート進めろよな!」

「わはった、わはった!」

「そっか…ごめんね、宝利君。」
 
 又もや照れ臭そうに山手は謝ってくる。


(非常に、居た堪れない……)


「もういいから!ほら!昔の祭具について調べるんだろ?どんどん出して!」

「あ……うちにも刀があったんだ。」

 ふと、思い出した様に山手は言う。

「刀?」

「そう。死んだ祖父、あ、ここは元々祖父の家なんだけど、骨董とかの趣味があったみたいで。小さい頃見せてもらった事があってね。」

「へぇ~~~真剣?」

「ん~どうだろ?騙されてなければ?」

「骨董を趣味にしてたんなら、目利きだったんじゃないの?」

「さぁ?それがどんなに価値がある物かは僕にはちょっと分からないなぁ。」

 なるほど、興味無い者にとってはそんなものだろう。

「今もあるの?」

 蒼梧が食いついて来た。

「ん?お前、真剣好きだった?」

「ん~ん。男だったら見てみたいじゃん?」

「そ?」

 そんなものだろうか…?

「二階の納戸かな?もう随分昔の話だから……」

「納屋まであるんだ。」

「お宝発見あるかもね~」

「ふふ…一般家庭に?」

「そういうのって由緒ある所より掘り出されたりするんじゃないの?」

「どうかな?」

 なんて和気藹々、色んな事を話しながらレポートもある程度までまとめ上げた。

「ふ~~~~~…」

 パタン……畳の感触と匂いが心地良い。

「お疲れ様。みんなジュースで良い?」

「あ、買って来たの開けちゃお。」

 お菓子を食べながらやりきった達成感をしばし味わう。

「ほら、これ……」

 しばらく席を外していた山手が何か手に持って帰ってきた。

「何~?山手君トイレだった……?」

「……!」
 
 山手が持っていたのは一本の長い棒…?

「あ、これあったから。」

 ニコリとしながら山手が差し出した物は一本の日本刀だ…

 ゾクリ……一瞬胃の底から嫌な吐き気と寒気が走る…


(夢で、見たから…?)


 夢の中の映像は一部ぼやけてて人物以外ははっきりとしていない事が多い。だから、日本刀があったとしてもどんな色で柄だったかは覚えていない。のに、あんな夢ばかり見るから拒絶反応みたいなものが出てしまってる。

「ふ~~ん?これ、名前ついてる?」

 蒼梧が山手から日本刀を受け取って繁々と見回してて…

「さあ…?本当に知らないんだ…祖父のだからね。桐矢君、扱いに慣れてる?」

「あ、うち神社じゃん?こう言うの時々見るんだよね…」


(妖刀…紫………)


「そうなんだ?宝利君も触る?」

「………あ……」

「どうかした?」

「ん~~~~~…」

 
 何と言ったら良いのか…変な夢を見るから、刀には近寄りたく無いって?蒼梧にも夢の内容は話していないから、いきなりそんな事を話し出してもおかしなことになるしなぁ……


「あ、もしかして、刀恐怖症?」

「ふぇ…?」
 

(何?そんなのあるの?)


「あ、だからか?」

 蒼梧も何か思い当たる事がある様な口ぶりだ。

「え?そうなのか?」

「何?自分でも分かってなかった?」

 山手はそっと蒼梧から日本刀を受け取ると、ここから見えない位置に置いてくれる。

「う~~~~ん…どうだろう…?日本刀が怖いかなんて考えた事なかったしな~」

「じゃあ、見てみる?」

「う……」

 その一瞬で身体が固まるのがわかる。

「あ、ごめんごめん…!別に嫌がらせをしようとしてるんじゃ無いよ?もう仕舞ってくるから…!」

 山手はそのまま日本刀を持って奥へと消えた。

「ふ~~ん。だから楓いっつもいなくなってたの?」

「何が?」

「うちでさ、紫を何度も出す機会あったでしょ?」

「おま、名前言っていいのかよ?」

 蒼梧が妖刀の名前を口にした途端に、俺の方が小声でそう訴える。

「聞こえてても何のことか分からないでしょ?だから良いよ。それより……楓。」

「何?」

「顔色悪い…やっぱ、無理そう?」

 蒼梧が言う無理そう、とは刀の事を受け入れられるかどうかだろうか?

「や、別に俺が無理でも良いんじゃねえ?神社の後継ぐのお前だし。」

「まぁね。もう、帰るか?」

「どうしたんだよ?急に…」

「急も何もないでしょ?もうほとんどレポート終わったし…そんな顔で帰ったらみそえが怒るな~。」

「大丈夫じゃね?」

「多分怒る…物凄く…」

「そんなひどい顔してる?」

「真っ青………」

「そんなに…?」


(怖かったのか、俺………)


「宝利君?大丈夫…?ごめんね、余計な事したみたいで……」

 物凄く申し訳なさそうな山手の顔。俺よりもずっと、泣きそうな顔に見える。

「あ~~大丈夫、大丈夫!レポートも大筋完成だし?不安要素は無くなったよね。」

「そう?なら、良かったんだけど…あ、帰るなら送っていく?それともタクシー呼ぶ?」

「あ~~山手君、いい、いい。俺いるしね~もし無理そうなら迎え呼ぶから。ほら、楓行くぞ?」

「あ、うん…」


 そんなに酷い顔をしてたんだろうか…蒼梧に促されるまま山手の家を後にする事になった。






しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

完結・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に味見されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

龍の逆鱗は最愛の為にある

由佐さつき
BL
転生と聞くと奇跡のようなイメージを浮かべるかもしれないが、この世界では当たり前のように行われていた。 地球から異世界へ、異世界から地球へ。望んだものが自由に転生の出来る世界で、永藤逸瑠は生きている。生きて、転生を望んで、そうして今は、元の世界で死んだ人間として生きていた。 公にされていない事実として、転生に失敗する場合もある。もしも失敗してしまった場合、元の生活に戻ることは出来ない。戸籍を消されてしまった者たちは、脱落者として息を潜めて生活することを余儀なくされた。 そんな中、逸瑠は一人の転生者と知り合う。水が溶けたような水色とも、陽かりを浴びて輝く銀色ともとれる長髪。凪いだ水面を連想させる瞳には様々な色が滲んでいて、その人とは呼べない美しさに誰もが息を飲んでしまう。 龍の国から転生してきたアイラ・セグウィーン。彼は転生に関する研究に協力するという名目で、逸瑠の暮らす寮にたびたび足を運ぶようになった。少しずつ話すうちにアイラがいかに優しく、穏やかな気性を持っているのかを知る。 逸瑠は純粋に懐いてくるアイラに、転生したいと思ったきっかけを話す。きっと気持ち悪がられると思っていた逸瑠の話に、アイラは自分もそうだと同意を示してくれた。 否定されないことが嬉しくて、逸瑠はアイラを信用するようになる。ころころと変わる表情に可愛いという感想を抱くようになるが、仲睦まじく育んでいた関係も、アイラのたった一言で崩壊を迎えてしまった。

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

【完結】遍く、歪んだ花たちに。

古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。 和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。 「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」 No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(10/21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。 ※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。 無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して―― 最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。 死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。 生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。 ※軽い性的表現あり 短編から長編に変更しています

処理中です...