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38 喜び
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絶対に、離さない…絶対に、離れない…
何があっても、誰に何をされようとも…自分達がどんな事になろうとも…!自分のこの手で、自分の全てで守り切って見せる………
光生がその話を聞いた時、自然に心から溢れてきた思い……いつ思い出しても鮮やかに蘇るほどその想いは鮮明で、深く、深く光生の心の奥に根付いている。
「……あの、光君……?」
目の前の羽織の顔は上気してほんのりと頬が赤く染まっている。恥ずかしそうに潤んだ瞳も全て包み込んで閉じ込めてしまいたいくらいに、愛しくて愛しくて…
羽織の頬を両手で包んだまま、ジッと動かず瞳を見つめ返すだけになった光生に、羽織はおずおずと声をかける。
どうしたんだろう?動かなくなってしまった…もしかしたら嬉しくなかった事なのかと、ふと思ってしまったりして…見上げる羽織の瞳には不安の色が宿る…
「羽織……」
光生の優しい声が響く…低く、優しい羽織が大好きな声…この優しい声色は決して嫌がっている様なものには聞こえなかった。
キュウウウウッと苦しくも、痛くもない様に、でもしっかりと羽織は光生に抱きしめられてしまった。
「…ありがとう…羽織。愛してるよ…」
うぇ?と変な声が上がりそうになるのを羽織は必死に飲み込んだ。好きだと言われたことは何度もあって、抑制剤を飲んでいる時でも光生に求められることの多かった羽織だから、愛されている実感はあったけど、直接口に出されて言われるのは初めてで……嬉しさよりもまずは驚きが先に来て、その後ジワジワと浸透していく様に喜びが身体中に広がっていく…上気した頬は既に真っ赤できっと湯たんぽみたいにポカポカと熱を帯びているのに違いない…
「……うん…」
僕も、と言いたかった…けれど上手く声が喉から出てくれなくて、それしか言えなかった。目の奥から溢れる様に涙が出てくる。声は首を絞められてるみたいに出てこなかった…
「はお…羽織…」
優しく呼ばれるのがすごく好きで…この声だけで全て持っていかれてしまう様に思う。
チュッチュッチュと頭や頬にキスを落としては、撫で撫でと頭や腰を撫でてくれる。
「おじいちゃん先生のところで?」
「うん…早めに大きい病院で見てもらいなさいって…」
おじいちゃん先生とは天翔の家から徒歩圏内にある診療所を開いている先生のことで、ここに来た時から羽織達Ωの妻はいつも診察してもらっていて、抑制剤などの内服も処方してくれている医院だ。
「うん。俺も一緒に行く…」
「ん。ありがと…」
「他の奴らにも言わなきゃな…」
「うん…」
松花ちゃんにまりちゃん…二人ともなんて言うだろう…ふふ、喜んでくれるといいなぁ…
その後、光生と羽織がリビングに行って話をし出すと、二人の反応は物凄かった…
「きゃあぁあぁぁぁぁあ!!」
「うそ!?ほんと!?本当に!?光!騙してないよね?」
二人とも飛びつかんばかりにぴょんぴょん跳ね回って喜んでくれる…それに乗じてさっきは優しく抱き締めてくれたのに興奮してしまったのか光生は羽織をギュウゥゥって抱きしめてきて…いてて……側にいたまりちゃんと松花ちゃんに救出された。
「ふぅ……うん…早めに大きな病院に行きなさいって、おじいちゃん先生に言われたよ。」
「待って!はお!座って!疲れちゃいけないんでしょ?」
「あ!!待って、ブランケット持ってくる!!冷やしちゃダメなのよ!」
まるで二人とも自分のことの様にそれ以上に羽織を気遣い壊れものの様に扱ってくるから笑ってしまいそうになる。
これはここにいるΩ妻みんなに起こりうること。普段から実は各自で色々調べて勉強をしていたみたいなんだ。
何をしていいとか、あれはダメ、とかまるでまりや松花の二人が羽織の親みたいに忙しなくお世話しだす。
「まりちゃん、松花ちゃん、僕病人じゃないし大丈夫だよ?そんなに体調も悪くないんだ。」
「「だめよ!!」」
二人共、ハモったよ……?
「油断大敵!気を付けるに越したことはないのよ?」
「そうよ、ただでさえΩは弱いところあるんだから気を付けすぎて丁度いいのよ!」
これからは家事は私たちが率先してやりますからね!と羽織の前で宣言してしまう始末……
「ありがと……二人共…ありがとう…」
なんだか胸が詰まってしまって、涙声になってしまう……
「良いの…はお君…おめでとう…ね?良かったね?大事にしようね?」
「うん、本当…びっくりしたけど、こんなに嬉しいもんなのね?はお!頑張るよ!」
まだ、何を頑張って良いものか、よく分からないが、みんなにお祝いされてこんなにも嬉しいものだとは松花が言うように知らなかったことだ。
「あ、学校どうする?」
「そうだね?もう直ぐ卒業だけど…」
みんな高等科三年、Ωの妻達は卒業と同時に家庭に入るものが多く天翔家も例外なくその様になる。光生は大学部まで進学するので学生結婚となるが、資産家の家庭では問題なく妻子を養えるのでこれも珍しくはない。
「まだ最後まで行きたいな…光君いい?」
「良いよ。羽織の好きにして…けど、俺の側を離れないこと、後無理は絶対にするなよ?」
お許しが出た!フワッと嬉しそうに微笑む羽織に光生もつられて笑顔になる。
「いいなぁはお君…幸せそう…」
「ふっ何を言うの、まりや私だってそのうち授かるよ?今からもっと勉強しとかないと!」
「うん。その時は僕がちゃんとお世話するからね?」
「よろしく~~!」
こんな和やかな幸せな時間はあっという間に過ぎて行く……光生が母屋にも知らせに行こうと言うまでは……
何があっても、誰に何をされようとも…自分達がどんな事になろうとも…!自分のこの手で、自分の全てで守り切って見せる………
光生がその話を聞いた時、自然に心から溢れてきた思い……いつ思い出しても鮮やかに蘇るほどその想いは鮮明で、深く、深く光生の心の奥に根付いている。
「……あの、光君……?」
目の前の羽織の顔は上気してほんのりと頬が赤く染まっている。恥ずかしそうに潤んだ瞳も全て包み込んで閉じ込めてしまいたいくらいに、愛しくて愛しくて…
羽織の頬を両手で包んだまま、ジッと動かず瞳を見つめ返すだけになった光生に、羽織はおずおずと声をかける。
どうしたんだろう?動かなくなってしまった…もしかしたら嬉しくなかった事なのかと、ふと思ってしまったりして…見上げる羽織の瞳には不安の色が宿る…
「羽織……」
光生の優しい声が響く…低く、優しい羽織が大好きな声…この優しい声色は決して嫌がっている様なものには聞こえなかった。
キュウウウウッと苦しくも、痛くもない様に、でもしっかりと羽織は光生に抱きしめられてしまった。
「…ありがとう…羽織。愛してるよ…」
うぇ?と変な声が上がりそうになるのを羽織は必死に飲み込んだ。好きだと言われたことは何度もあって、抑制剤を飲んでいる時でも光生に求められることの多かった羽織だから、愛されている実感はあったけど、直接口に出されて言われるのは初めてで……嬉しさよりもまずは驚きが先に来て、その後ジワジワと浸透していく様に喜びが身体中に広がっていく…上気した頬は既に真っ赤できっと湯たんぽみたいにポカポカと熱を帯びているのに違いない…
「……うん…」
僕も、と言いたかった…けれど上手く声が喉から出てくれなくて、それしか言えなかった。目の奥から溢れる様に涙が出てくる。声は首を絞められてるみたいに出てこなかった…
「はお…羽織…」
優しく呼ばれるのがすごく好きで…この声だけで全て持っていかれてしまう様に思う。
チュッチュッチュと頭や頬にキスを落としては、撫で撫でと頭や腰を撫でてくれる。
「おじいちゃん先生のところで?」
「うん…早めに大きい病院で見てもらいなさいって…」
おじいちゃん先生とは天翔の家から徒歩圏内にある診療所を開いている先生のことで、ここに来た時から羽織達Ωの妻はいつも診察してもらっていて、抑制剤などの内服も処方してくれている医院だ。
「うん。俺も一緒に行く…」
「ん。ありがと…」
「他の奴らにも言わなきゃな…」
「うん…」
松花ちゃんにまりちゃん…二人ともなんて言うだろう…ふふ、喜んでくれるといいなぁ…
その後、光生と羽織がリビングに行って話をし出すと、二人の反応は物凄かった…
「きゃあぁあぁぁぁぁあ!!」
「うそ!?ほんと!?本当に!?光!騙してないよね?」
二人とも飛びつかんばかりにぴょんぴょん跳ね回って喜んでくれる…それに乗じてさっきは優しく抱き締めてくれたのに興奮してしまったのか光生は羽織をギュウゥゥって抱きしめてきて…いてて……側にいたまりちゃんと松花ちゃんに救出された。
「ふぅ……うん…早めに大きな病院に行きなさいって、おじいちゃん先生に言われたよ。」
「待って!はお!座って!疲れちゃいけないんでしょ?」
「あ!!待って、ブランケット持ってくる!!冷やしちゃダメなのよ!」
まるで二人とも自分のことの様にそれ以上に羽織を気遣い壊れものの様に扱ってくるから笑ってしまいそうになる。
これはここにいるΩ妻みんなに起こりうること。普段から実は各自で色々調べて勉強をしていたみたいなんだ。
何をしていいとか、あれはダメ、とかまるでまりや松花の二人が羽織の親みたいに忙しなくお世話しだす。
「まりちゃん、松花ちゃん、僕病人じゃないし大丈夫だよ?そんなに体調も悪くないんだ。」
「「だめよ!!」」
二人共、ハモったよ……?
「油断大敵!気を付けるに越したことはないのよ?」
「そうよ、ただでさえΩは弱いところあるんだから気を付けすぎて丁度いいのよ!」
これからは家事は私たちが率先してやりますからね!と羽織の前で宣言してしまう始末……
「ありがと……二人共…ありがとう…」
なんだか胸が詰まってしまって、涙声になってしまう……
「良いの…はお君…おめでとう…ね?良かったね?大事にしようね?」
「うん、本当…びっくりしたけど、こんなに嬉しいもんなのね?はお!頑張るよ!」
まだ、何を頑張って良いものか、よく分からないが、みんなにお祝いされてこんなにも嬉しいものだとは松花が言うように知らなかったことだ。
「あ、学校どうする?」
「そうだね?もう直ぐ卒業だけど…」
みんな高等科三年、Ωの妻達は卒業と同時に家庭に入るものが多く天翔家も例外なくその様になる。光生は大学部まで進学するので学生結婚となるが、資産家の家庭では問題なく妻子を養えるのでこれも珍しくはない。
「まだ最後まで行きたいな…光君いい?」
「良いよ。羽織の好きにして…けど、俺の側を離れないこと、後無理は絶対にするなよ?」
お許しが出た!フワッと嬉しそうに微笑む羽織に光生もつられて笑顔になる。
「いいなぁはお君…幸せそう…」
「ふっ何を言うの、まりや私だってそのうち授かるよ?今からもっと勉強しとかないと!」
「うん。その時は僕がちゃんとお世話するからね?」
「よろしく~~!」
こんな和やかな幸せな時間はあっという間に過ぎて行く……光生が母屋にも知らせに行こうと言うまでは……
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