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32 作戦

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 本能が求めるままに交じり合ったαとΩ…結果、羽織は翌日ベッドの住人となり緊急避妊薬を飲む羽目になった。

 例えΩがαを嫌い離れようとしても、同じ様に惹かれ合うαの心を押し留めることは出来ない。そしてαが本気になったらΩでは太刀打ち出来ない。結果としてお互いに離れる事は不可能、とわかり切った結末を迎えることになる。

「はお…大丈夫?」

 翌日羽織の部屋からいつまでたっても出てこない二人を心配して食事を持って来てくれた松花が見たものは、既に気を失っている羽織の中で未だに動き続けていた光生の姿…他人のそんな所なんて見た事もない松花は勿論固まる。けれど誰がいようが誰に見られていようが、羽織だけを見続ける事を辞めない光生に、αとしての性の物凄い征服欲を垣間見た気がした。
 なんで鍵が開いてるの?とか気を失っている人間に対しこれは酷いのでは?とか普通だったら思うかもしれない事が松花の心の中には浮かんでこない。ただ力任せに蹂躙し凌辱している様にしか見えないのに、これがもの凄く綺麗で有るべき形にまで見えてしまったのは松花がΩで、部屋の中にはαの濃厚すぎる香りが満ちていたからだろうか?

 ふと、もしかしたら自分にも心惹かれるαとこんな未来もあったかも、と考えてしまうくらいには松花は二人が羨ましいと感じた…



「……ちゃん?……花ちゃん……松花ちゃん!」

「…っは…な、何?」

 ボゥ~としていた松花に羽織が何度も声をかけてたみたいだ。

「ご、ごめん…!はお、なんだった?」

 昨日の影響で立つ事もできない羽織は休み、そして朝から様子のおかしかった松花も羽織に付いて休みを取った。

「う、うん。あのさ……」
 
 松花を呼んでは見たものの、羽織の方も歯切れが悪い。

「あ、朝の事ならごめんね?鍵がかがってるだろうと思って、一様ドアノブを回して見たら開いちゃって~」

 えへへ~と言うノリで話してはいるが、光生に揺すられながら目が覚めてみたら松花と目があったという羽織は事実上動けず、隠れる事も逃げる事も出来なかった………そんな惨状……

「い、いや、いやいや!もう!もう、良いから!その話出さないで!!」

 ボンッ!!音が聞こえたならきっと羽織からはこんな音がする。一気に真っ赤になった顔を必死で布団に隠してしまった。

「うん。本当にごめんね?覗く気なんてこれっぽっちもなかったの…光なんて憎たらしい程普通だし、嫌になっちゃう…!」

 フッと溜息を吐く松花。

「松花ちゃんはさ、どうしたの…?」

 朝から見てはいけない物を見てしまったとしても何やら浮き沈みが激しい様で…少し、心配しているんだ。

「……ん?少しね……少し、羨ましいなって……」

 好きな人と番になって、あそこ迄求められるのって……凄く、羨ましい…

「私もΩなんだなってしみじみ思っただけだから、はおはこれ以上気にしなくて良いよ?」

「松花ちゃん…」

 松花ちゃんの気持ちを考えると、ジワリと涙が出そうになる。少し僕が体力的に弱ってるからかも知れないけど……

「あ、それと、ちゃんと成功したでしょう?」

「え?何が?」

「ふふっ仲直り!番はこうでなくちゃね?」

「あ!光君が部屋に居たのって?」

「今気がついたの?はお、鈍感すぎるよ?」

 羽織が部屋に帰る前に忍び込んで仕舞えば良い…松花が朝、光生の耳にそっと呟いた事をちゃんと光生は実行した結果が今朝になる。

「な、な、な……松花ちゃん~~~!!」

 羽織は真っ赤になりながら、怒ってるような困ってるような恥ずかしがってるようなよく分からない表情をしている。

「番はね、離しちゃいけないのよ…今朝の二人を見て、すっごく実感した…離せば良いってもんじゃ無いってこれで証明できたでしょ?だから、もう部屋に鍵は必要ないわ、ね?はお!」

 朝までの痴態で今回は強制避妊薬まで医師に処方されている。家の者達には何があったのか一目瞭然。松花は羽織が鍵をつけても逃げ回っても追っているのがαなら、それは無意味だ、と言う事を証明したかった様で……

「恥ずかしすぎる………」

「でもご両親の側でこんな気持ちになるよりは良いんじゃない?」

 それは、そうだ。当初は両親を呼んで光生との交わりを少なくする様に防波堤になってもらおうとしていたのだから。

「うん…それは、感謝してる……」

「それと…?」

「う……こ、光君に、部屋に行く様に言ってくれて……」

「ンフフ~!」

「松花ちゃん…ありがとうね…」

 松花ちゃんも少しスッキリしたみたい。朝は元気ない顔だったけど、いつもの松花ちゃんで安心した。

 元気になったついでに、僕やまりちゃんの不安気な顔を全て無視して松花ちゃんは僕達に小さな機械を常に持ち歩かせる様になったんだ…
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