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5、結婚相手はどんな方に? 1
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「フフフフ……」
ウリートが席に着き和やかな茶会が始まると、すぐにとても楽しくて仕方がないと言うようなレジーネ・エリッジがコロコロと笑い出す。
「あの…?」
ウリートはキョトンと首をかしげてしまう。今までウリートが会ったことがある女性は母と周囲にいる侍女達、そして時々遊びにくる叔母だけである。だから女性の性格の特性やらは何もわからずにここにいる。勿論の事、男兄弟でこの様な態度に出る者もおらず一体どうしたのかと疑問でしかなかった。
「ご、ごめんなさいね、ウリート様。私、楽しくて!だってあのアクロース家の幻とも言われていた方が目の前に…それもこんなに素敵な方だなんて思いもしませんでしたから。今日、来てよかったですわ!」
「ま、幻?……素敵……?」
そういえば先程メリール未亡人が幻とか何とか仰っていたような?
女性に面と向かって素敵と言われ慣れてないのも相まってウリートは面食らってしまった。
「そう!そうですわよね?幻の様なお噂は飛び交っていましたもの!」
「ええ!私もですわ!物語にもなりそうな……」
一度堰を切ってしまえば女性のお喋りは止まらない。ウリートは今日身をもってそれを知ることになる。
「ちょ、ちょっとお待ちください…!あの、私は別に幻の様なものではなく…」
どうやら余りにも社交界に出てこないアクロース家の次男に関する噂話は多岐にわたっているようだ。普通に重病説が何年も根を張っているかと思えば、もうウリートは既に亡くなっていて気落ちした両親も社交を控えているだとか、余りにも美しく生まれついてしまったせいで両親が心配しすぎると言う過保護を発症しほぼ軟禁状態なのではないか、だからきっとその内彼を助ける王子様が現れるんじゃ無いかとか…現実的なものとしたら病気の後にひどい後遺症が残ってしまいただ外に出るに出られないだけなんじゃ無いかとか…
もう好き放題に話題は流れている様であった。両親や兄は全く社交をして来なかった訳では無いから親しい間柄の者は現状を知っているはずなのだが、この様な噂話はそれでもなくならないらしい。
「そんな事に…なっていたのですね…?」
ここであっているのは重病説の後に過保護を発症してなかなか家から出してもらえなかった…ただこれだけなのだが…
「だからそんな幻の様な方とご一緒できて嬉しいのですわ。どの様なご心境の変化がありましたの?」
言葉使いは丁寧だが遠慮無いレジーネの言葉はこの会場にいる全ての者達が聞きたかっただろう事だった。
「…それなのですが…」
おっとりとしたウリートは少し俯き加減に言葉を紡ぐ。何も恥ずかしいことを言おうとしているわけでは無い。妙齢の子息子女ならば考えて当然の事柄だ。流石に花の様な令嬢達を前にこれを言うのは些か羞恥心が掻き立てられるのだが…
「結婚相手にどなたか良い相手が居ないかと思いまして……」
少しだけ小さくなっていく声でそれでもウリートは淀みなく言い切った。
少し俯き加減で頬を赤らめつつも、それでも胸を張り必死の去勢を張って矜持を保つ。そんな意地らしい姿がその場にいたご令嬢達の目にどの様に映ったかなんてウリートには考えもつかない。
「結婚…のお相手ですって?」
強気の質問も臆する事なく言い切るレジーネも一瞬言葉に詰まった様だ。
「侯爵家の、子息様が?」
「まぁ…!」
「お見かけによらずに積極的ですのね?」
侯爵家ともなれば大貴族になる。家と家の繋がりを大切にする貴族家ならではこそ、小さい頃から既に婚約者が決まっている事が通例でこそある。なのでウリートの様に適齢期になっても婚約者がいない事や、自ら婚約者を見つける為に社交に繰り出す大貴族は珍しいのだ。
「はい……お恥ずかしい限りなのですが……」
ウリートは最早薄らを通り越して真っ赤になり涙ぐんでいたりする。
「…レジーネ様…これは…」
ウリートの恥じらう様に感動したのかユーリ・ファームがほぅ…とため息を吐けば、
「えぇ…ユーリ様…私も今感じましたわ。」
大きく頷くスザンナ・イリットはギュッと両手を握りしめている。
「落ち着きなさいなお二人とも…コホン………良く、分かりましたわ…ウリート様、良い伴侶との出会いをお求めになっておられるのですね?」
「はい…本当に恥ずかしいのですが……」
恥を忍んで…実家にはもう迷惑をかけたくは無いのだから。
「…分かりました、ウリート様。幸いにもここは貴婦人の社交場ですものね。ありとあらゆる伝手ができましょう。宜しいわ!私達もご協力を惜しみませんことよ?ね、皆様?」
「ええ!勿論ですわ!分かっておりますもの!」
「レジーネ様!ウリート様にピッタリのお方を見つけて差し上げましょう?」
「ええ、ではまず品定めをしなくてはいけませんわね?」
ウリートが席に着き和やかな茶会が始まると、すぐにとても楽しくて仕方がないと言うようなレジーネ・エリッジがコロコロと笑い出す。
「あの…?」
ウリートはキョトンと首をかしげてしまう。今までウリートが会ったことがある女性は母と周囲にいる侍女達、そして時々遊びにくる叔母だけである。だから女性の性格の特性やらは何もわからずにここにいる。勿論の事、男兄弟でこの様な態度に出る者もおらず一体どうしたのかと疑問でしかなかった。
「ご、ごめんなさいね、ウリート様。私、楽しくて!だってあのアクロース家の幻とも言われていた方が目の前に…それもこんなに素敵な方だなんて思いもしませんでしたから。今日、来てよかったですわ!」
「ま、幻?……素敵……?」
そういえば先程メリール未亡人が幻とか何とか仰っていたような?
女性に面と向かって素敵と言われ慣れてないのも相まってウリートは面食らってしまった。
「そう!そうですわよね?幻の様なお噂は飛び交っていましたもの!」
「ええ!私もですわ!物語にもなりそうな……」
一度堰を切ってしまえば女性のお喋りは止まらない。ウリートは今日身をもってそれを知ることになる。
「ちょ、ちょっとお待ちください…!あの、私は別に幻の様なものではなく…」
どうやら余りにも社交界に出てこないアクロース家の次男に関する噂話は多岐にわたっているようだ。普通に重病説が何年も根を張っているかと思えば、もうウリートは既に亡くなっていて気落ちした両親も社交を控えているだとか、余りにも美しく生まれついてしまったせいで両親が心配しすぎると言う過保護を発症しほぼ軟禁状態なのではないか、だからきっとその内彼を助ける王子様が現れるんじゃ無いかとか…現実的なものとしたら病気の後にひどい後遺症が残ってしまいただ外に出るに出られないだけなんじゃ無いかとか…
もう好き放題に話題は流れている様であった。両親や兄は全く社交をして来なかった訳では無いから親しい間柄の者は現状を知っているはずなのだが、この様な噂話はそれでもなくならないらしい。
「そんな事に…なっていたのですね…?」
ここであっているのは重病説の後に過保護を発症してなかなか家から出してもらえなかった…ただこれだけなのだが…
「だからそんな幻の様な方とご一緒できて嬉しいのですわ。どの様なご心境の変化がありましたの?」
言葉使いは丁寧だが遠慮無いレジーネの言葉はこの会場にいる全ての者達が聞きたかっただろう事だった。
「…それなのですが…」
おっとりとしたウリートは少し俯き加減に言葉を紡ぐ。何も恥ずかしいことを言おうとしているわけでは無い。妙齢の子息子女ならば考えて当然の事柄だ。流石に花の様な令嬢達を前にこれを言うのは些か羞恥心が掻き立てられるのだが…
「結婚相手にどなたか良い相手が居ないかと思いまして……」
少しだけ小さくなっていく声でそれでもウリートは淀みなく言い切った。
少し俯き加減で頬を赤らめつつも、それでも胸を張り必死の去勢を張って矜持を保つ。そんな意地らしい姿がその場にいたご令嬢達の目にどの様に映ったかなんてウリートには考えもつかない。
「結婚…のお相手ですって?」
強気の質問も臆する事なく言い切るレジーネも一瞬言葉に詰まった様だ。
「侯爵家の、子息様が?」
「まぁ…!」
「お見かけによらずに積極的ですのね?」
侯爵家ともなれば大貴族になる。家と家の繋がりを大切にする貴族家ならではこそ、小さい頃から既に婚約者が決まっている事が通例でこそある。なのでウリートの様に適齢期になっても婚約者がいない事や、自ら婚約者を見つける為に社交に繰り出す大貴族は珍しいのだ。
「はい……お恥ずかしい限りなのですが……」
ウリートは最早薄らを通り越して真っ赤になり涙ぐんでいたりする。
「…レジーネ様…これは…」
ウリートの恥じらう様に感動したのかユーリ・ファームがほぅ…とため息を吐けば、
「えぇ…ユーリ様…私も今感じましたわ。」
大きく頷くスザンナ・イリットはギュッと両手を握りしめている。
「落ち着きなさいなお二人とも…コホン………良く、分かりましたわ…ウリート様、良い伴侶との出会いをお求めになっておられるのですね?」
「はい…本当に恥ずかしいのですが……」
恥を忍んで…実家にはもう迷惑をかけたくは無いのだから。
「…分かりました、ウリート様。幸いにもここは貴婦人の社交場ですものね。ありとあらゆる伝手ができましょう。宜しいわ!私達もご協力を惜しみませんことよ?ね、皆様?」
「ええ!勿論ですわ!分かっておりますもの!」
「レジーネ様!ウリート様にピッタリのお方を見つけて差し上げましょう?」
「ええ、ではまず品定めをしなくてはいけませんわね?」
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