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9、王妃とは 1
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「目が覚めました?」
外の明るさか…薄らと瞼を焼く日の光に顔を顰めた所で、遠慮のない声が掛けられた。
「目…ここ…」
目を開けて周りを見回せば、どうやらここは室内の様で…
「起きれますか?」
先程の声の主…?遠慮もお伺いを立てる様な声質ではなくて、まるでそう、友人や同僚に掛ける様な声掛けだった。
「え、ええ…」
ここがどこだか分からないけれど、起きれるかと聞かれたのだから身体を起こしてみる。幸にして痛むところはない様だ。
「……………」
帝国から着て来たドレスを着ていない…代わりに物凄く身動きの良い、それでも質が良いとは分かる夜着らしき物が着せられていた。
「大丈夫そうですね?では朝食を召し上がれます?」
声を掛けた主はどうやら侍女、らしき者は、無駄がない作りの室内に備えられた大きめの寝具---それも床に直に敷いてある---からゆっくりと抜け出てきたフリージアを横目で見つつ、床の上に敷かれた豪奢な敷物の上に朝食だろう物を次々と手際よく並べていく。
もう寒くはない。室内だからなのだろうが、非常に過ごしやすい気温であった。
「さ、こちらに…」
一通り並べ終わったのだろう。食事が整えられた敷物の上にクッション類も並べてあるのだが、侍女はフリージアをそこに座る様に誘導した。
座り心地は悪くはない。が、全ての事に慣れてはおらずフリージアはただ呆然と膳を見回した。
「ここは、どこです?」
またここからか…そんな感想が自分の心の底から漏れてきた。
「赤の城です。」
「赤の…?ゲルテンの城ですか?」
ぶっきらぼうな物言いの侍女はフリージアに飲み物を注ぎ手渡しながら答えてくる。
「そうです。この赤の城はゲルテンの象徴とも言うべき王と王妃の住まいです。」
王妃…恐れを知らない侍女が謙らない視線をフリージアに向ける。王妃、それはフリージアの事だ。ゲルテンの象徴とも言える王の城に居て、貴方にその自覚があるのか、と問われている様な気持ちにさせる視線だった。
「私は、いつここに来たのでしょう?」
昨夜、ゲルテンの王が天幕から出してくれたのは覚えているが、記憶はそこまでなのだ。
「昨夜ですわ。王が御運びになられました。」
「国王が?自ら?」
これにはフリージアがびっくりした。抱き抱えられた所までは覚えているのだが、その後は従者に任せるでも何とでもなるはずだ。なのに……?
「左様です。さ、料理が冷えない内にお召し上がりください。味付けなどで食べられない物がありましたらお知らせ下さい。」
そう言うとその侍女は、何かありましたらベルを鳴らす様に言い置いて部屋を出て行ってしまった。
あの侍女は一体何者で、なんと呼べば良いのか、王の城と言ってもその王はどこに居るのか、ここに連れて来られたのは良いが、フリージアは何をして良くて何をしては駄目なのか、全てについて分からないまま、一人黙々と食事をするのだった。
「おいし………」
味付けに慣れては居ないが温かい食事という物はいい物だと思う。知らぬ所に連れて来られて緊張してしまっていた身体からふっと力が抜けた様であった。
「マルクス……?」
ふと、この部屋にいない者の顔が思い出される。
「マルクス?」
天幕にいた時には一緒に居たのだからきっとここにもいるだろうと室内を見渡しても、名前を呼んでも姿形も返事も無い。
「どこです!?」
やっと力が抜けた身体にまた緊張が走る。彼は去勢者だ。そんな者達をゲルテンでは奴隷や家畜の様に扱うと聞く。
「誰か!」
フリージアは迷わずベルを高らかに鳴り響かせた。
「食事、終わりましたか?」
先程の侍女が顔を出す。
「マルクスはどこです!?」
問われた食事の件など何も口には出していないフリージアは自分の言いたい事のみを相手に伝えた。何という不作法かと自分自身に嫌悪が襲う。
「…誰ですか?マルクスって?」
小首を傾げて聞き返す侍女にフリージアは被せ気味に話し続けていく。
「私と一緒にきた神官です!私と一緒に帝国から来た者は彼だけでした!」
知らないはずはないだろう。あの天幕にいた者達ならばマルクスのことも見ているのだから。
まさか………
ゾクリ…とフリージアの背に怖気が走る。
いえ、まさか…
否定しても否定しても、嫌な考えが何度も浮かんできてしまう。
「マルクスを、どこへやったの!」
「どうした?騒がしいぞ?」
「!?」
少しダルそうな低い声…侍女が入って来た入り口からのっそりと巨体を表したのは昨夜フリージアを天幕から抱いてここまで運んだというゲルテンの王……
バッとフリージアは後ろを向いた。寝起きでまだ整えてさえいなかった金の髪が、柔らかに宙を切る。
なんて………なんて事……ゲルテンの慣習なんて知らないわ…!
眠そうに入ってきたゲルテンの王は立派な体躯を惜しげもなく曝け出し、上半身は一糸も纏わぬ姿であった。
淫らな……………!
外の明るさか…薄らと瞼を焼く日の光に顔を顰めた所で、遠慮のない声が掛けられた。
「目…ここ…」
目を開けて周りを見回せば、どうやらここは室内の様で…
「起きれますか?」
先程の声の主…?遠慮もお伺いを立てる様な声質ではなくて、まるでそう、友人や同僚に掛ける様な声掛けだった。
「え、ええ…」
ここがどこだか分からないけれど、起きれるかと聞かれたのだから身体を起こしてみる。幸にして痛むところはない様だ。
「……………」
帝国から着て来たドレスを着ていない…代わりに物凄く身動きの良い、それでも質が良いとは分かる夜着らしき物が着せられていた。
「大丈夫そうですね?では朝食を召し上がれます?」
声を掛けた主はどうやら侍女、らしき者は、無駄がない作りの室内に備えられた大きめの寝具---それも床に直に敷いてある---からゆっくりと抜け出てきたフリージアを横目で見つつ、床の上に敷かれた豪奢な敷物の上に朝食だろう物を次々と手際よく並べていく。
もう寒くはない。室内だからなのだろうが、非常に過ごしやすい気温であった。
「さ、こちらに…」
一通り並べ終わったのだろう。食事が整えられた敷物の上にクッション類も並べてあるのだが、侍女はフリージアをそこに座る様に誘導した。
座り心地は悪くはない。が、全ての事に慣れてはおらずフリージアはただ呆然と膳を見回した。
「ここは、どこです?」
またここからか…そんな感想が自分の心の底から漏れてきた。
「赤の城です。」
「赤の…?ゲルテンの城ですか?」
ぶっきらぼうな物言いの侍女はフリージアに飲み物を注ぎ手渡しながら答えてくる。
「そうです。この赤の城はゲルテンの象徴とも言うべき王と王妃の住まいです。」
王妃…恐れを知らない侍女が謙らない視線をフリージアに向ける。王妃、それはフリージアの事だ。ゲルテンの象徴とも言える王の城に居て、貴方にその自覚があるのか、と問われている様な気持ちにさせる視線だった。
「私は、いつここに来たのでしょう?」
昨夜、ゲルテンの王が天幕から出してくれたのは覚えているが、記憶はそこまでなのだ。
「昨夜ですわ。王が御運びになられました。」
「国王が?自ら?」
これにはフリージアがびっくりした。抱き抱えられた所までは覚えているのだが、その後は従者に任せるでも何とでもなるはずだ。なのに……?
「左様です。さ、料理が冷えない内にお召し上がりください。味付けなどで食べられない物がありましたらお知らせ下さい。」
そう言うとその侍女は、何かありましたらベルを鳴らす様に言い置いて部屋を出て行ってしまった。
あの侍女は一体何者で、なんと呼べば良いのか、王の城と言ってもその王はどこに居るのか、ここに連れて来られたのは良いが、フリージアは何をして良くて何をしては駄目なのか、全てについて分からないまま、一人黙々と食事をするのだった。
「おいし………」
味付けに慣れては居ないが温かい食事という物はいい物だと思う。知らぬ所に連れて来られて緊張してしまっていた身体からふっと力が抜けた様であった。
「マルクス……?」
ふと、この部屋にいない者の顔が思い出される。
「マルクス?」
天幕にいた時には一緒に居たのだからきっとここにもいるだろうと室内を見渡しても、名前を呼んでも姿形も返事も無い。
「どこです!?」
やっと力が抜けた身体にまた緊張が走る。彼は去勢者だ。そんな者達をゲルテンでは奴隷や家畜の様に扱うと聞く。
「誰か!」
フリージアは迷わずベルを高らかに鳴り響かせた。
「食事、終わりましたか?」
先程の侍女が顔を出す。
「マルクスはどこです!?」
問われた食事の件など何も口には出していないフリージアは自分の言いたい事のみを相手に伝えた。何という不作法かと自分自身に嫌悪が襲う。
「…誰ですか?マルクスって?」
小首を傾げて聞き返す侍女にフリージアは被せ気味に話し続けていく。
「私と一緒にきた神官です!私と一緒に帝国から来た者は彼だけでした!」
知らないはずはないだろう。あの天幕にいた者達ならばマルクスのことも見ているのだから。
まさか………
ゾクリ…とフリージアの背に怖気が走る。
いえ、まさか…
否定しても否定しても、嫌な考えが何度も浮かんできてしまう。
「マルクスを、どこへやったの!」
「どうした?騒がしいぞ?」
「!?」
少しダルそうな低い声…侍女が入って来た入り口からのっそりと巨体を表したのは昨夜フリージアを天幕から抱いてここまで運んだというゲルテンの王……
バッとフリージアは後ろを向いた。寝起きでまだ整えてさえいなかった金の髪が、柔らかに宙を切る。
なんて………なんて事……ゲルテンの慣習なんて知らないわ…!
眠そうに入ってきたゲルテンの王は立派な体躯を惜しげもなく曝け出し、上半身は一糸も纏わぬ姿であった。
淫らな……………!
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