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公主の求めた者

29 地魔力 15

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「殿下!?」

 形ばかりの伺いを立て、慌てて補佐官クルースが騎士を引き連れて寝室へと雪崩れ込んで来た。

「何がありました?」

 寝室からの物音を聞きつけた巡回中の侍女が急いで当直の騎士を呼びに走って来たのだ。普段であれば公主トライトスの部屋に通じる通路には騎士2名が見張として立っているはずなのに、騎士達は揃いも揃って眠りこけてしまっているのだからクルースは焦りに焦った様子。

「ネズミが1匹入りこんだだけだ…」

 ネズミが入ったにしては明るくなった室内は、机の上のものが薙ぎ散らかされていて荒れているでは無いか。

「もしや、刺客では!?」

「……その方が良かったな。そうすれば切って終わりだった…」

「殿下!侵入者はどこです!?」

「……終わった事だ。今夜はもうこ無いだろう。クルース、人払いを…」

 クルースと2人きりになったところで、トライトスはビシュー家の次女サーリーが侵入して来た事を告げる。

「…はぁ…それで?事なきをえたのですか?」

「あぁ…」

「強硬手段ですか。いけませんね。マーシルが言うようにナーラスへの出発を早めた方が良さそうです。早急に隊を組みましょう。殿下、どちらへ?」

「目が覚めた、歩いてくる。」

 刺客かもしれない騒ぎの後だ。落ち着いて就寝しようにも難しいのかもしれない。

「お気を付けて下さいませ。眠りこけているもの達には後から灸を据えておきますので、廊下に居る者をお連れください。」

「いい。敷地内だ。」

 何かまだ言いたそうなクルースを残し、トライトスは1人外へと歩いて行く。護衛の騎士もその後を追うが、霊廟に共には入っては来ない。

(何も、無かったのですね…)

 クルースへの話から令嬢サーリーの暴走とわかったが、それでもシャイリーの心はスッキリとはしないのだ。

 ……誰をも、求めてはいない……

 愛されていないと分かってはいても本人の口から誰も要らないと聞く事はやはり少なからずショックなものがある。

(誰も、と言う事は…他のご令嬢をこれからも娶る事はないと言う事……)

 バルビス公主としてはそれで良いものなのか…独身主義だとの噂さえ聞いた事はなかったし、一国の当主がそれでは示しがつかないと思うのだが。兄弟達の子供がいればそれで済むとトライトスは考えているのかも知れない。

















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