上 下
85 / 109
公主の求めた者

23 地魔力 8

しおりを挟む
 長年バルビスの動物や環境については研究もされて来た。人々の暮らしを良くする事はもちろんの事、嫁いでくる供物姫の延命のためにもバルビス側はバルビス側での考えの元にだ。

「残念ながら…絶滅している、と結論付けても仕方がない状況は続いておりますね。」

 公主邸に上がってくる各地の資料にも公主トライトスはもちろんの事、その補佐間であるクルースも目を通している。またクルースは自分の妻であるマーシルからも話を聞いていれば、自然とその様な結論に出てもおかしくはない。

「そう結論付けたいところですが、今回は目撃情報がございます…!」

「まさか!?だってホートネル兄様!あの近辺はこれからの時期立ち入りが厳しく制限される程厳しい場所ですよ?私達もこの目で見て来て足跡一つとして見つからなかったのに…!?誰からの情報です?」

 狩猟関係はマーシルがまとめ役として動いているのにも拘らず自分の所にはその様な報告が上がってきていない。意図的に下々の者がそうしているのだとしたらこれは些か問題ではなかろうか。整ったマーシルの眉間の皺が徐々に深いものへと変わっていく。

「落ち着きなさい。少なくとも、マーシルの手におえる所からの情報でない事は確かです。」

「兄様!?」

 馬鹿にされた様なホートネルの物言いにマーシルは一層気分を害した様だ。

「待つんだマーシル…!」

 普段は何者にも動じず飄々と事をなすクルースがホートネルとマーシルの間に入る。クルースは自分の妻を後ろから優しく抱いてやり、食ってかかりそうなマーシルを止めているのだ。

「だって、クルース!」

「すまない、マーシル。まだ事の真相を全ては話せないのですよ。しかし、この情報は確かなものです。」

 何せ、バルビス公妃殿下であるシャイリーが実際に目にして来た事なのだから。シャイリーが白狐を見た所がナーラスでなければ、きっとこの世ではない何処かの話になる。雪の大地と共にこの極寒の地で生きて来た白狐達はこの数年確かに1匹も生きた個体の目撃情報は上がって来ていないのだから。













しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん
恋愛
 こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。 *らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。

王子殿下の慕う人

夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。 しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──? 「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」 好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。 ※小説家になろうでも投稿してます

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

婚約破棄から始まる破滅

四季
恋愛
フェミーアの王女ミルネアには婚約者がいた。 その婚約者は、隣国の王子であった。 二人は徐々に親しくなり、すべてが順調に進んでいるかのように思われていたのだが……。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

処理中です...