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公主の求めた者

18 地魔力 3

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「妃殿下…!?」

 トライトスの元に帰れたのならばもしや、と神殿内に移動できたバルビス公妃シャイリーは職務中の神官ホートネルの目に留まる事ができた。

(ホートネル様。お久しぶりにございます。やっと帰ってこれましたわ。)

 シャイリーにとっては本当に久しぶりで帰って来たくても帰ってこられなかった所の一つ。

「…帰ってこられた、とは?」

 流石に有能な神官長だ。シャイリーの言葉に不可解な物を感じたのだろう。本来のシャイリーならばトライトスの毛皮の側か神殿にいるか、このどちらかを自分で選べて自由に行き来する事ができるはずだから。今まで神殿に姿を見せなかったのは、ずっと夫であるバルビス公主トライトスの元にいたものとばかり思っていたのだ。

(あ!そうなのです。アールストにいたと思ったのですが、突然雪山に飛ばされてしまって。)

「雪山…ですか?」

 それはまたかなりの距離を飛んだものだ。

(そうなのです。山の深い所で、多分バルビス公国のどちらかだとは思うのですが…)

「それでしたら、今までずっとそちらにいらしたのですか?」

 アールスト王国からの帰国直前からずっととなるとかれこれ数週間は経つ。バルビス公国はどこもすっかりと雪に埋もれ、見渡す限り緑の木々さえも見る事はできない完全に雪に閉ざされた地となった。

「どこぞに、お一人で?」

 それは心細くはなかったであろうか。シャイリーは今は衣食住に困らないとは言っても国外どころか城外にほとんど出たこともないような姫君だったのだから。

(フフ…それが、聞いてくださいます?ホートネル様!)

 思いがけずに明るい声がシャイリーから帰ってくる。

「何をでございましょう?」

(野狐ですの!)

「狐、ですか?」

(ええ!今まで私、狐の親子の所に居たのですわ!)

「殿下の毛皮ではなく?」
 
(そう思われるでしょう?そうではないのです。ちゃんと生きている野生の狐の親子の元ですわ!皆んな元気でとても綺麗な白狐でしたの!)

 目を瞑れば先程までいた狐達の元気な姿が瞼に鮮やかに浮かんでくる。どの子狐達も病気も怪我もせずに生命力に溢れて元気一杯だった。









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