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公主の求めた者

2 シャイリーの行方 2

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 バルビス公国は氷に閉ざされた地だ。
今時分は雪に覆われ山も川も道も真っ白になり、一面に銀世界を作る。

 だからきっと、ここはバルビス公国に違いないだろう……

 バルビス公妃シャイリーは自分が今、周囲一面の銀世界の中にいる事に気が付いた。先程までは懐かしい故郷であるアールスト王国にいて、確かに兄王の第3側妃ルシュルーのその後を神官ホートネルから聞いていたはず。

(ここは?)

 辺り一面、地面の高低差があれど一面の雪景色の中で、一体自分は何をしているんだろう。

(私、1人できたのかしら?)

 シャイリーが移動できる範囲は決まっていた。公主トライトスの狐の毛皮に付き従ってトライトスと行動を共にする時か、バルビス公国の神殿内に自分が望み移動した時だけだ。

 それなのに、今は…?

(殿下…?やっぱり居られないわ。)

 いくら辺りを見回しても、この白銀の世界に人っ子一人として目に入ってこないばかりか足跡さえもない。どうやら人里離れた山奥と言う所であろうか?

(来た事はありませんわよね?)

 トライトスと共に外に出た時にもいくつかの森を超え谷を降り山に登っていったものだったが、どうやら見覚えのない所である事は分かった。

 こんな事になってもまだ幸いと思えることがある。シャイリーは寒さをまったく感じないのだ。どこに捨て置かれようとも、どんなに1人になろうとも身体的苦痛はまったくないのだから。

(やっぱり…動けませんわ……)

 少し辺りを探索しようと思ったシャイリーは早々に諦める事になる。身体と言っても無いのだが、その場から移動はできないのだから。

(どうしましょうか?)

 なんでここに移動したのか分からないし、いつまで居なければならないのかも分からない。そして神殿に移動しようにもそれも今は叶わない…

(ずっと…1人だったら…?)

 辺りに巡るはただ吹いていく風の音と時折木の枝から落ちるであろう雪の音…この寒さでは鳥の囀りさえ聞こえてこない。
 こんな静かな所で、たった1人で…そう考えるともう死ぬ恐怖は無いのだが、たった1人で無限とも思える時間を過ごしていかなければならないだろう恐怖には駆られてしまう。

(嫌だ…どうしましょう……)

「……キュ……ゥ…」

(……!?)

「……ゥキュウ……」

(きゅ、きゅう?)

 シャイリーの足元から聞こえてくる物音は、ここに来てから初めて聞く自然以外からの音、動物か何かの声の様であった。



 






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