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揺蕩い行く公主の妻
22 アールスト国王の思い 2
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「…ここは………」
懐かしい空気が自分を包んでいる事に、半ば夢現の状態のままで誰にとも言えない問いを漏らした。
「気がついたか…!ルシュ!」
「……兄上………?」
晩餐会で見たルシュルー妃の姿からは天と地ほどの差がありそうな弱々しい姿で横たわるルシュルー妃の、ぼんやりとした漆黒の瞳には実兄バルビス公主トライトスの姿が映る。
「そうだ。わかるな?」
先程の晩餐会で見た時よりもさらに楽な衣類を身につけたトライトスが心配そうに表情を歪めながらルシュルーを見下ろしていた。
「私……どうして…?」
あの晩餐会では弱りきった自分の身体が最後まで持つなんて考えてもいなかったのだ。勝手な様だが、自分の言いたい事が言えればそれで良かった。
そこで命を落としても、それが役目だと……
「ホートネルがいて幸いした。其方の身体もある程度回復に向かえる様に手を下したのだ。」
「……まさか!?」
先程からの懐かしい空気の類は…
「…そう。この居室にはホートネルの魔法をかけてある。」
それも、ちょっとやそっとでは崩れない様な強力なものを。
「そんな事をされたら!ホートネル兄上が…!」
魔法の存在事態を隠してきたというのに…!
「大丈夫だ。其方は知らないかもしれないが、アールスト王家は王のみこの事をご存じだからな。」
「そんな…外に出してはいけないのでは?」
「その通り…だが、これだけ密接に王家の姫達が関わる家系なのだ。水面下ではこんなことなどよくある事。」
「……国王陛下が、この事を知っている事実もまた、外に漏れてはいけないのですね…?」
「あぁ。その通り…」
一瞬起き上がりそうな程驚いていたルシュルーは、トライトスの手でまた寝台へと戻されてしまう。
「其方があそこに出てこなければ、面会時にでも内密に事を行うつもりであった。」
ルシュルーの体調の悪さはトライトスも熟知していたから。里帰りの話を持ち出された時にはルシュルーに魔法をかけた上で、何と言ってシャイリーの里帰りを回避しようかとそればかりに頭を巡らせたものだ。
「……兄上…私ばかりが、助かろうなどとは思いませんのよ?」
青い顔のルシュルーに浮かぶ寂しそうな儚い笑顔。どうして自分が命をかけてまで晩餐の場に出ようと思ったか…嫁いだ後から音沙汰もなくなったシャイリーの運命をルシュルーは察していたからに他ならなかった。
懐かしい空気が自分を包んでいる事に、半ば夢現の状態のままで誰にとも言えない問いを漏らした。
「気がついたか…!ルシュ!」
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「そうだ。わかるな?」
先程の晩餐会で見た時よりもさらに楽な衣類を身につけたトライトスが心配そうに表情を歪めながらルシュルーを見下ろしていた。
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あの晩餐会では弱りきった自分の身体が最後まで持つなんて考えてもいなかったのだ。勝手な様だが、自分の言いたい事が言えればそれで良かった。
そこで命を落としても、それが役目だと……
「ホートネルがいて幸いした。其方の身体もある程度回復に向かえる様に手を下したのだ。」
「……まさか!?」
先程からの懐かしい空気の類は…
「…そう。この居室にはホートネルの魔法をかけてある。」
それも、ちょっとやそっとでは崩れない様な強力なものを。
「そんな事をされたら!ホートネル兄上が…!」
魔法の存在事態を隠してきたというのに…!
「大丈夫だ。其方は知らないかもしれないが、アールスト王家は王のみこの事をご存じだからな。」
「そんな…外に出してはいけないのでは?」
「その通り…だが、これだけ密接に王家の姫達が関わる家系なのだ。水面下ではこんなことなどよくある事。」
「……国王陛下が、この事を知っている事実もまた、外に漏れてはいけないのですね…?」
「あぁ。その通り…」
一瞬起き上がりそうな程驚いていたルシュルーは、トライトスの手でまた寝台へと戻されてしまう。
「其方があそこに出てこなければ、面会時にでも内密に事を行うつもりであった。」
ルシュルーの体調の悪さはトライトスも熟知していたから。里帰りの話を持ち出された時にはルシュルーに魔法をかけた上で、何と言ってシャイリーの里帰りを回避しようかとそればかりに頭を巡らせたものだ。
「……兄上…私ばかりが、助かろうなどとは思いませんのよ?」
青い顔のルシュルーに浮かぶ寂しそうな儚い笑顔。どうして自分が命をかけてまで晩餐の場に出ようと思ったか…嫁いだ後から音沙汰もなくなったシャイリーの運命をルシュルーは察していたからに他ならなかった。
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