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淋しい婚姻の果てに
4 一人きりの夜 4
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妃シャイリーが夜寝る前になるとお国の衣類を寝台の中に入れて眠られているという事が妃付きの侍女ばかりではなく屋敷中の侍女達の間でも共通の情報として知れ渡る様になった。
嫁いで来た数日で既に里が恋しい様なお心の弱い方、妃殿下はバルビス公国きっての公邸に務める侍女達の献身的な世話を受けていながら、塞ぎ込んで部屋から出てこないでいる。それはきっと供物姫だから、自分を可哀想と憐れんでおられるのでは?本当はバルビス公国になど来たくなかったのだろう。今まで優しくしっかりとした態度はただのアールスト国の姫という矜持の為だけに他ならないのだ。きっと妃殿下はバルビス公国を恨んでおられることだろう……
親しい侍女も友人も1人もいないこの屋敷の中で、日に日にシャイリーに対する使用人の評価は下がる。妃専用の自室から一歩も出る事なく過ごして居れば、側にいる者以外に真相を知る事はできないのだから致し方ないのだが、それでも心を開いて接してくれている様には見えないシャイリーの態度に思うところがあったのか、ローニーを初め妃殿下付きと言う侍女達でさえも邸の中の噂を否定しなかったのである。
いくらなんでもぎごちない態度と言うものは隠し通せるわけではなく、時折にではあるが侍女の対応がぞんざいに感じる様にもなった。
今夜も強い眠気に襲われて寝入ったのはいいが、シャイリーはいつもの様に寒さで目が覚める。何故だか今日は耳が冴えている様で、シンとした室内なのに何やら音が聞こえる気がするのだ。相変わらずの寒さにカチカチと歯を鳴らしつつコートを着込む為にシャイリーは起き上がる。
……ホゥ………ホゥ……
確かに室内にも聞こえて来るのは窓の外からの声だった。
(何かの動物?)
今宵は月明かりが普段よりも明るく、窓に入って来る月明かりもいつもと比べるとはっきりとした違いがあった。
(見えるかも…)
なぜそんな風に思ったのか自分でもわからないが、今日の様に月も明るいのならば、外で鳴いている物の正体を掴むことができるかもしれない。
当初の目的の一つだった、雪原に住む動物をこの目で見たい。
フラフラとふらつく足取りでシャイリーは窓辺へと立つ。今夜の月明かりはとても明るく邸正面に植えてある樹木の枝が風に揺られているのが良く見える。
……ホゥ………
風の音と共に微かに聞こえて来る鳴き声の様な音をシャイリーはもっと聴きたくなった。目の前の窓を開け、目を凝らしながら周囲の木々を見渡して行く。夜風は切り付けるような冷たさを運んで来た。
(見えない…わ…)
この時分に活動しているのだから夜行性の動物だろうと必死に目を凝らして見ているのだが…
(見つけないと…)
見なければ、折角バルビス国にまで来たのだから。何か一つでも何かを掴んで行きたい。
容赦なく冷気はシャイリーの体温を奪い体力を消耗していくのだが、それでもシャイリーは窓を閉めず、外をうかがっているのだ。かじかんだ手の感覚はもうすでにない。慣れないこの地に輿入れして来たシャイリーの為に1人でも本当に心を開いた者がいたのなら、きっと今頃は暖炉の火も消えていなかっただろうに…
嫁いで来た数日で既に里が恋しい様なお心の弱い方、妃殿下はバルビス公国きっての公邸に務める侍女達の献身的な世話を受けていながら、塞ぎ込んで部屋から出てこないでいる。それはきっと供物姫だから、自分を可哀想と憐れんでおられるのでは?本当はバルビス公国になど来たくなかったのだろう。今まで優しくしっかりとした態度はただのアールスト国の姫という矜持の為だけに他ならないのだ。きっと妃殿下はバルビス公国を恨んでおられることだろう……
親しい侍女も友人も1人もいないこの屋敷の中で、日に日にシャイリーに対する使用人の評価は下がる。妃専用の自室から一歩も出る事なく過ごして居れば、側にいる者以外に真相を知る事はできないのだから致し方ないのだが、それでも心を開いて接してくれている様には見えないシャイリーの態度に思うところがあったのか、ローニーを初め妃殿下付きと言う侍女達でさえも邸の中の噂を否定しなかったのである。
いくらなんでもぎごちない態度と言うものは隠し通せるわけではなく、時折にではあるが侍女の対応がぞんざいに感じる様にもなった。
今夜も強い眠気に襲われて寝入ったのはいいが、シャイリーはいつもの様に寒さで目が覚める。何故だか今日は耳が冴えている様で、シンとした室内なのに何やら音が聞こえる気がするのだ。相変わらずの寒さにカチカチと歯を鳴らしつつコートを着込む為にシャイリーは起き上がる。
……ホゥ………ホゥ……
確かに室内にも聞こえて来るのは窓の外からの声だった。
(何かの動物?)
今宵は月明かりが普段よりも明るく、窓に入って来る月明かりもいつもと比べるとはっきりとした違いがあった。
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フラフラとふらつく足取りでシャイリーは窓辺へと立つ。今夜の月明かりはとても明るく邸正面に植えてある樹木の枝が風に揺られているのが良く見える。
……ホゥ………
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(見えない…わ…)
この時分に活動しているのだから夜行性の動物だろうと必死に目を凝らして見ているのだが…
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容赦なく冷気はシャイリーの体温を奪い体力を消耗していくのだが、それでもシャイリーは窓を閉めず、外をうかがっているのだ。かじかんだ手の感覚はもうすでにない。慣れないこの地に輿入れして来たシャイリーの為に1人でも本当に心を開いた者がいたのなら、きっと今頃は暖炉の火も消えていなかっただろうに…
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